2024年11月16日
労務・人事ニュース
2024年度冬季電力需給対策 10%以上の広域予備率を確保し、安定供給を実現するための具体策を発表
2024年度冬季の電力需給対策を取りまとめました(経産省)
2024年度冬季の電力需給対策が発表され、国内のエネルギー供給における最新の見通しと具体策が提示されました。近年、異常気象の増加や地政学的リスクの影響によりエネルギー安定供給の確保が難しい状況が続いており、今冬も需給調整には十分な対策が求められています。特に今年は、昨年の猛暑に引き続き、冬季の厳しい寒さが予測される中での供給体制の整備が重要視されており、エネルギー供給の安全性を高めるための各種の取り組みが行われる予定です。
今年度の冬季電力需給の見通しでは、全エリアにおいて最低でも10%の予備率を確保しており、予測される厳寒期であっても広域的な電力供給の安定性が見込まれています。したがって、現段階では昨年度のような事前の節電要請は見送られる方針です。しかしながら、今後も異常気象や地政学的緊張、さらには化石燃料の国際的な調達問題がリスク要因となり得るため、国内の電力需給は引き続き「予断を許さない状況」にあるといえます。これに対処するため、発電事業者への保安管理の徹底と計画外停止の未然防止が今後も求められます。
特に、供給サイドでは既存の火力発電所が老朽化していることや、これらの発電所が地震や津波などの自然災害に対して脆弱な地域に集中している点が課題として指摘されています。たとえば、火力発電所の多くが東京湾や太平洋沿岸地域に位置しており、これらの地域が自然災害に見舞われた際には広域的な電力供給に支障が出る可能性が高くなります。そのため、今冬の供給力対策には、発電所の老朽化した設備に対する計画外停止の未然防止が重要であり、同時に異常事態が発生した際には随意契約による追加の供給力確保が検討されています。
一方で、安定的な供給力を確保するためには、再生可能エネルギーの最大活用とともに、安全性を確保した上での原子力発電所の再稼働も推進されています。現在、東北地方の女川原発2号機や中国地方の島根原発2号機が再稼働に向けた準備を進めており、特に女川原発は10月下旬に原子炉の起動が予定されています。これらの原発の再稼働は、長期的な供給力確保と電力の安定供給に貢献することが期待されており、各地域での理解を得ながら進められています。
また、燃料供給の安定性確保も対策の一環として強化されています。大手電力会社において液化天然ガス(LNG)の在庫を安定的に確保する体制が整備されており、2024年10月時点では国内のLNG在庫が212万トンと過去5年間の平均水準を維持しています。これにより、燃料不足による需給ひっ迫を回避できる見込みが立っています。
需給バランスの維持に関しては、電力広域的運営推進機関が主導してkW・kWhのモニタリングを継続的に実施しています。週単位での予備率モニタリングや、2か月先を見通した供給力の余力管理を行うことで、需要と供給のバランスを的確に判断し、供給の不足リスクが高まる際には機動的に追加の供給対策を講じる体制が整っています。これにより、事前の需給ひっ迫予測に基づいた対策が可能となり、電力需給の安定を支えています。
さらに、エネルギーの効率的な利用も今冬の安定供給に向けた重要な取り組みの一つです。家庭や企業に対して省エネ行動を推進するため、効果的な省エネ行動をまとめた省エネメニューの普及やディマンドレスポンス(DR)の更なる普及が進められています。工場やオフィスのDR普及や家庭用蓄電池の導入支援によって、企業や家庭でのエネルギー利用の効率化が図られ、電力需給がひっ迫した際の対応力を高めるとともに、エネルギーコストの抑制も期待されています。また、産業界や自治体とも連携し、需給ひっ迫時における省エネ体制の構築が進められています。
構造的な対策としては、長期的に見据えた連系線の増強や容量市場の運用によって、安定した供給力が確保できるような体制も整備されています。加えて、予備電源制度の導入や、揚水発電の維持・強化が行われ、災害発生時におけるバックアップ電源としての活用も進められています。再生可能エネルギーの活用とともに、分散型電源の導入も進展しており、特に蓄電池の普及による家庭や地域社会でのエネルギー自給体制が強化されています。
2024年度冬季の電力需給対策は、今後の電力安定供給に向けた総合的な取り組みが詰まっています。今回の対策は、単に冬季の需給バランスを維持するだけでなく、長期的なエネルギー政策の一環として、企業や家庭がエネルギーを効率的に利用する社会への移行を支えるものであり、今後の気候変動リスクや地政学的リスクにも耐えうる強固なエネルギー基盤を築くものといえるでしょう。
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