2024年12月8日
労務・人事ニュース
2024年度調査 アジア市場で厳しさ増す競争環境、インドで8割が事業拡大を計画
ジェトロ 2024年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)(JETRO)
2024年11月26日に発表された日本貿易振興機構(ジェトロ)の「2024年度 海外進出日系企業実態調査(全世界編)」では、景況感の改善や地域別の競争環境に関する最新動向が明らかになりました。この調査は、8月から9月にかけてオンラインで実施され、世界83カ国・地域に進出する日系企業1万8,186社を対象とし、7,410社からの有効回答を得ました。有効回答率は40.7%で、国際ビジネス環境の変化が企業活動に与える影響を広範囲にわたり分析する日本唯一の調査となっています。
調査結果によると、2024年の営業利益について「黒字」を見込む企業の割合が65.9%に達し、前年よりも2.5ポイント増加しました。一方で「赤字」の割合は17.0%と1.3ポイント減少し、2019年以降で最も低い水準となりました。特にインドやブラジル、メキシコ、ベトナムなどのグローバルサウス地域では、旺盛な内需が企業の業績改善を大きく後押ししました。一方、日本企業の集積地として知られる中国やタイ、ドイツ、オランダでは、業績悪化を見込む企業の割合が依然として高く、特に自動車関連産業では2025年も改善が難しいとの見通しが示されています。
また、企業の今後の事業展開方針については、慎重な姿勢が見られます。「事業拡大」を見込む企業の割合は全体で45.2%にとどまり、コロナ禍以前の水準に戻っていません。特に需要の不振が続く中国では、事業拡大を予定している企業がわずか21.7%で、過去最低を更新しました。欧州でも事業拡大を計画する企業の割合が46.2%と、過去10年間で2番目に低い水準にとどまっています。しかし、南西アジアや中東、アフリカでは事業拡大意向が大幅に増加しており、インドを中心にUAEや南アフリカ共和国などでの事業拡大が顕著です。これらの地域では、現地市場の成長が企業にとっての魅力となり、特にインドでは80%以上の企業が事業拡大を計画しています。
競争環境については、新興市場での競争の多様化が進んでいます。インドやメキシコでは、日系企業の市場シェアが相対的に向上している一方で、欧米企業がM&Aや現地企業との提携を通じて攻勢を強めています。さらに、タイやベトナムでは米中対立の影響で中国企業の進出が加速し、地場企業の市場シェアが拡大しています。特に中国市場ではコスト競争力を武器に地場企業が圧倒的な存在感を示しており、この傾向は国外市場にも波及しています。
さらに、業種別の業績では、医療機器や食品・農水産加工品が好調で、事業拡大の意向を持つ企業が多い一方、自動車関連産業は厳しい状況に直面しています。自動車関連では、特にタイやインドネシアなどの二輪車市場で価格競争が激化し、市場飽和の兆候も見られます。
この調査結果は、進出企業が新興国市場での成長機会を活用しつつ、競争環境の変化に柔軟に対応する必要があることを示唆しています。また、従来からの主要市場での事業縮小や撤退を慎重に進めつつ、グローバルサウスの成長を取り込む戦略が求められています。
⇒ 詳しくは独立行政法人日本貿易振興機構のWEBサイトへ