2024年9月14日
労務・人事ニュース
2024年日本経済、実質GDPが年率3.1%増加し回復基調に移行、民間消費支出と企業設備投資が牽引
月例経済報告(令和6年8月)主要経済指標(内閣府)
2024年の日本経済は、多岐にわたる指標から総合的に見て、回復基調にあると評価されています。特に注目すべきは、実質国内総生産(GDP)の動向であり、2024年4月から6月の四半期においては、前期比で0.8%の成長を見せ、年率換算で3.1%の増加となりました。この成長は、主に民間の消費支出や企業の設備投資が寄与しており、経済の底堅さを示す重要な指標となっています。
民間最終消費支出に関しては、2.2%の増加が見られ、これがGDPの成長に大きく貢献しています。個人消費の動向は、日本経済にとって最も重要な要素の一つであり、消費者信頼感の回復が経済全体を押し上げる要因となっています。世帯消費動向指数(CTIミクロ)では、2024年において名目で3.9%、実質で0.1%の増加が報告されており、特に百貨店やスーパーマーケットの売上が顕著に伸びています。百貨店の売上は前年比で14.2%の増加を記録し、スーパーマーケットも1.2%の増加を見せています。これらのデータは、消費者の購買意欲が高まっていることを示しており、個人消費の持続的な拡大が期待されています。
一方で、住宅建設は全体として横ばいの状況が続いています。2024年には新設住宅着工戸数が前年比で微減しているものの、分譲マンションの建設は活発であり、前年比で24.3%増加しました。特に首都圏のマンション販売が好調であり、これは都心部での住宅需要が依然として高いことを示唆しています。ただし、持ち家や貸家の着工は減少傾向にあり、今後の市場動向に注意が必要です。持ち家着工は11.8%減少し、貸家の着工も5.0%の減少を見せており、住宅市場においては地域や物件タイプによる格差が拡大していることが分かります。
輸出入に関しては、2024年の輸出はおおむね横ばいで推移しており、輸入も同様に横ばい状態が続いています。しかし、貿易・サービス収支は依然として赤字が続いており、特に2024年6月には貿易収支が4,406億円の赤字を記録しました。エネルギー価格の高騰や円安が輸入コストを押し上げ、これが貿易赤字を拡大させる要因となっています。また、輸出に関しても、一般機械や電気機器の輸出が伸び悩んでおり、これが全体の輸出額の横ばいに繋がっています。特に、2024年6月のデータでは、一般機械の輸出が前月比で3.1%増加したものの、電気機器の輸出は1.4%減少しており、産業別に見るとその動向は一様ではありません。
公共投資は2024年に入っても堅調に推移しており、特に地方自治体や国による公共事業が積極的に進められています。2024年1月から3月の四半期では、公共工事請負額が前年同期比で8.2%増加し、これが経済成長を下支えする重要な要素となっています。地方の普通建設事業費も増加傾向にあり、地方経済の活性化に寄与しています。さらに、2024年の公共工事受注額は大手50社を中心に前年同期比で7.2%増加し、特にインフラ整備や防災対策に関連するプロジェクトが多く進められています。
企業の設備投資も2024年に入って持ち直しの動きが見られます。2023年から2024年にかけての実績では、製造業が5.2%、非製造業が3.2%の増加を記録し、これにより製造業と非製造業の合計で19.7兆円、35.9兆円の投資が行われました。特に製造業においては、輸出向けの生産能力増強や新技術の導入が進められており、これが長期的な経済成長の基盤を強化しています。一方、非製造業ではサービス業を中心に投資が進められており、観光業や物流業などが主な投資先となっています。これらの投資は、日本経済の競争力を高め、国際市場での地位を強化するための重要な取り組みといえます。
さらに、2024年の企業の採用活動も活発化しており、特に製造業や非製造業での人材確保が重要な課題となっています。労働市場の逼迫が続く中で、企業は高度なスキルを持つ人材の獲得を急いでおり、これが賃金上昇の要因ともなっています。特にIT分野やデジタル技術を活用した新興産業においては、技術者や専門職の需要が急増しており、これに対応するための教育訓練やリスキリングの取り組みが重要視されています。
総じて、2024年の日本経済は持ち直しの兆しを見せているものの、依然として課題も多く残されています。特に貿易赤字の拡大や住宅市場の地域格差、労働市場の逼迫といった問題が経済全体の成長を阻害するリスクとして存在しています。これに対して、政府や企業は積極的な政策対応や戦略的投資を進めることが求められており、今後の日本経済の持続的成長に向けた取り組みが期待されます。
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