2025年2月5日
労務・人事ニュース
2024年10月の鉄道輸送統計発表!旅客数20億人突破も2019年比で依然5%減少
鉄道輸送統計月報(概要)(令和6年(2024年)10月分)(国交省)
2024年10月の鉄道輸送統計によると、日本の鉄道網は引き続き堅調に運行されているが、旅客輸送と貨物輸送の両面で、コロナ禍以前と比べて微妙な変化が見られる。特に旅客輸送量は前年同月比で増加傾向にあるものの、2019年比では依然として回復途上にあることがデータからも明らかになった。一方、貨物輸送に関しては、2023年からの増加傾向が継続しており、コロナ前の水準を超える動きも見られる。この動向は企業の物流戦略や消費行動の変化を反映しており、鉄道輸送の役割が再評価されていることを示唆している。
2024年10月の鉄道旅客輸送量は、合計で20億2223万人となり、前年同月比で3.8%の増加を記録した。しかし、2019年同月比では5.0%減少しており、コロナ禍以前の水準にはまだ回復していない。旅客輸送のうち、JR旅客会社が輸送した人数は7547万7600人で、前年同月比3.2%増だったが、2019年同月比では6.8%の減少となった。特に新幹線に関しては前年同月比で10.1%増と大きく伸びており、2019年比でも6.0%増加した点は注目すべきだ。これは観光需要やビジネス需要の回復による影響が考えられる。一方で、JR以外の民鉄各社の旅客数は1億2674万5700人となり、前年同月比4.2%増、2019年比では3.9%減と、やや慎重な回復傾向が続いている。
旅客輸送においてもう一つの重要な指標である「旅客人キロ」では、総合計が374億人キロとなり、前年同月比3.9%の増加となったが、2019年比では4.6%減少した。旅客人キロとは、鉄道を利用した旅客が移動した距離を反映した指標であり、遠距離移動の回復度合いを測るのに適している。新幹線の旅客人キロは1103億8803万キロとなり、前年同月比で7.4%増、2019年比では2.9%増と、他の鉄道と比べても回復のスピードが速いことがわかる。これに対し、民鉄の旅客人キロは1293億9221万キロで、前年同月比3.4%増ではあるものの、2019年比では5.2%減少しており、都市部での通勤需要が完全には戻っていないことを示唆している。
一方、鉄道貨物輸送に関しては、旅客輸送とは異なる動きを見せている。2024年10月の鉄道貨物輸送量は353万トンとなり、前年同月比で9.2%の増加を記録し、2019年比でも10.0%増加した。貨物トンキロ(貨物輸送の距離を反映する指標)は17億トンキロとなり、前年同月比4.7%増、2019年比では14.2%増加している。特にコンテナ輸送は195万1915トンで、前年同月比8.4%増、2019年比では10.5%増と、鉄道貨物の中でも成長が著しい分野となっている。また、車扱貨物は157万9809トンで、前年同月比10.1%増、2019年比で9.3%増とこちらも好調な伸びを示している。
この貨物輸送の増加は、国内の物流需要の変化に関連している。近年の物流業界では、環境負荷を抑えるために鉄道輸送を活用する動きが強まっている。トラックドライバー不足の影響や、カーボンニュートラルの推進により、鉄道貨物の利用が増加傾向にあることは明らかだ。企業の物流戦略の見直しが進んでおり、特に長距離輸送において鉄道が重要な役割を果たしている。
2024年10月のデータを振り返ると、旅客輸送と貨物輸送の回復傾向には明確な違いがある。旅客輸送は徐々に回復しつつあるものの、2019年の水準にはまだ達していない。しかし、新幹線をはじめとした長距離移動の回復が進んでおり、今後の動向が注目される。一方、貨物輸送は成長を続けており、特にコンテナ輸送の増加が際立っている。物流の需要が鉄道にシフトしつつあることで、鉄道貨物が今後さらに重要な役割を担う可能性が高い。
今後の鉄道業界における課題としては、旅客輸送の完全回復に向けた需要喚起策や、新たな旅行スタイルへの対応が挙げられる。ビジネス需要は一定の回復を見せているが、リモートワークの普及により、出張需要が以前の水準に戻るかどうかは不透明だ。一方、貨物輸送に関しては、インフラの強化や効率化が求められる。特に、輸送スピードの向上や運行スケジュールの最適化など、さらなる利便性向上が期待される。
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