2025年3月1日
労務・人事ニュース
2024年10~12月期の名目GDP成長率5.1%、企業の賃金戦略にも影響
四半期別GDP速報(2024年10-12月期・1次速報)(内閣府)
2024年10月から12月期における日本の国内総生産(GDP)速報値が発表され、経済の動向が明らかになった。実質GDP成長率は前期比0.7%、年率換算で2.8%となり、名目GDPの成長率は前期比1.3%、年率換算で5.1%と堅調な伸びを示した。この四半期の成長の内訳を詳しく見ると、国内需要は前期比マイナス0.1%とやや低調だったものの、財貨・サービスの純輸出が0.7%のプラス寄与となり、全体の成長をけん引した。
民間需要の動向を見ると、個人消費は前期比0.1%の増加にとどまった。これは7~9月期の0.7%増と比べると鈍化しており、消費者の慎重な姿勢がうかがえる。名目値では0.3%の成長で、インフレの影響を考慮すると実質的な消費の伸びは限定的だった。一方で、民間企業の設備投資は前期比0.5%増と回復傾向を示し、7~9月期のマイナス0.1%からの改善が見られた。これに対し、民間住宅投資は前期比0.1%の伸びにとどまり、住宅市場の回復は依然として不透明な状況が続いている。
公的需要に関しては、政府最終消費支出が前期比0.3%増加し、名目では0.9%の成長となった。これは公共サービスや医療・福祉分野の支出が増加したことが要因と考えられる。しかし、公的固定資本形成は前期比0.3%のマイナス成長となり、公共投資の減少が続いている。これにより、政府支出の成長への寄与度は限定的となった。
輸出と輸入の動向を見ると、財貨・サービスの輸出は実質1.1%の増加となり、7~9月期の1.5%増からはやや減速したものの、引き続き堅調な推移を見せた。名目値では2.1%の成長を記録しており、海外需要の回復が日本経済を支える要因の一つとなっている。一方、輸入は前期比マイナス2.1%と大きく減少し、貿易収支の改善につながった。名目輸入も1.8%のマイナスとなり、円安の影響による輸入コストの上昇が需要の減少を招いた可能性がある。
この四半期のデフレーターの動向を見ると、GDPデフレーターは前年同期比2.8%の上昇となり、7~9月期の2.4%から加速した。これは国内の物価上昇圧力が続いていることを示しており、特に輸出デフレーターが3.0%のプラスとなったことから、海外市場における価格上昇が寄与していると考えられる。国内需要デフレーターも2.3%の伸びを記録し、物価上昇の影響が国内消費にも波及していることが分かる。
2024年通年の成長率を振り返ると、実質GDP成長率は0.1%とわずかな伸びにとどまり、名目GDP成長率は2.9%となった。これにより、日本経済は名目ベースでは一定の成長を維持しているものの、実質的な成長はほぼ横ばいに近い状態であることが浮き彫りになった。成長の内訳を見ると、実質GDPの成長に対する内需の寄与度は0.2%、外需の寄与度はマイナス0.1%となった。名目ベースでは内需が2.5%、外需が0.4%の寄与度を示しており、内需が引き続き経済の主要な成長エンジンとなっている。
雇用者報酬の動向を見ると、2024年通年では実質1.4%、名目4.1%の伸びを記録した。特に名目の伸びが顕著であり、これはインフレ率の上昇に伴う給与水準の引き上げが影響している可能性がある。四半期ベースで見ると、10~12月期の実質雇用者報酬は前期比1.5%増、名目では1.7%増となり、労働者の所得は着実に増加している。しかし、インフレの影響を考慮すると、実質的な購買力の伸びは限定的であり、消費の回復にはまだ時間がかかる可能性がある。
総合的に見ると、2024年10~12月期の日本経済は、輸出の回復や設備投資の増加によって成長を維持したものの、個人消費の伸びが鈍化し、公共投資も減少したことで、力強い成長には至らなかった。特に、輸入の減少による純輸出の寄与度の高さが目立つ結果となっており、国内の需要の低迷が懸念される。今後の経済成長には、消費の持続的な回復や企業の設備投資の拡大が鍵となるだろう。
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