2024年12月8日
労務・人事ニュース
2024年8月の鉄道旅客数19億人超、コロナ前比で11%減少
鉄道輸送統計月報(概要)(令和6年(2024年)8月分)(国交省)
2024年11月28日に発表された「鉄道輸送統計月報(2024年8月分)」は、日本国内における鉄道の旅客輸送と貨物輸送に関する詳細なデータを提供しています。この報告書では、2024年8月の鉄道利用状況について、前年および2019年同月との比較を通じて、現在の輸送動向が詳しく示されています。このデータは、鉄道事業者や関連企業、政策立案者にとって、輸送の現状や将来の方針を検討するうえで非常に重要な基礎資料となっています。
まず、旅客輸送についての概要を見てみましょう。2024年8月の鉄道旅客輸送量の総合計は延べ19億1307万人でした。この数字は、前年同月比で2.5%増加しており、鉄道輸送が新型コロナウイルス感染症の影響から回復基調にあることを示しています。しかし、2019年同月と比較すると11.3%の減少となっており、完全な回復にはまだ時間がかかることが明らかです。一方、旅客が移動した距離を表す「旅客人キロ」の総合計は334億人キロでした。前年同月比では0.6%の微増にとどまり、2019年比では13.2%減少しています。これにより、人々の移動距離はまだ制限されている可能性が示唆されます。
旅客輸送をさらに詳細に分析すると、JR旅客会社と民鉄(JR以外)では利用動向にいくらかの違いが見られます。JR旅客会社全体では延べ7億2071万7千人が利用し、このうち新幹線の利用者数は約3034万7千人でした。新幹線利用者数の前年同月比はわずか0.3%の増加で、2019年比では11.1%の減少が見られます。一方、JR以外の民鉄の利用者は延べ11億9235万2千人で、前年同月比では2.9%増加していますが、2019年比では10.2%の減少が記録されています。これらのデータから、全国的に人々が公共交通機関を徐々に利用し始めている一方で、特定の路線や地域ではまだ需要が完全には戻っていないことが推測されます。
次に、貨物輸送の状況について詳しく見ていきましょう。2024年8月の鉄道貨物輸送量の総合計は288万トンで、前年同月比では3.8%減少しました。さらに、2019年同月比では16.0%の大幅な減少となっています。貨物の輸送距離を考慮した「貨物トンキロ」の総合計は12億トンキロで、前年同月比11.0%減、2019年同月比21.9%減とさらに厳しい数字が示されています。このように、貨物輸送は旅客輸送に比べて回復の遅れが目立っています。特に、鉄道貨物輸送の主力となるコンテナ輸送では、数量が約136万5千トンで前年同月比10.9%減、2019年同月比では23.7%の減少が記録されています。
貨物輸送のもう一つの主要な形態である「車扱」(貨車単位での輸送)は比較的安定しており、数量は約151万3千トンで前年同月比3.6%の増加を見せています。しかし、2019年と比較すると7.7%減少しており、こちらもまだ完全な回復には至っていません。このようなデータから、貨物輸送が新型コロナウイルス感染症の影響を受けた産業活動や物流需要の変化に依存していることが明確になっています。
これらのデータを総合的に見ると、鉄道輸送全体は徐々に回復しつつあるものの、コロナ以前の水準にはまだ遠いことが分かります。特に貨物輸送は、旅客輸送以上に厳しい状況にあり、物流の再編や輸送方法の多様化が今後の課題となる可能性があります。これに対し、鉄道事業者は、新しい需要に応じた柔軟なサービスの提供や効率的な輸送システムの構築を進める必要があるでしょう。また、旅客輸送においても、新幹線をはじめとする長距離輸送の利用促進や、地方路線の利便性向上に向けた取り組みが求められます。
これらの状況を踏まえ、鉄道事業者や政策立案者は、今回の統計データを活用して、今後の施策やサービス改善の方針を慎重に検討することが求められます。日本の鉄道輸送が経済活動や地域社会の活性化に寄与し続けるためには、持続可能な成長を目指した包括的な取り組みが必要です。この月報は、そのための重要な基礎資料として活用されることでしょう。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ