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2025年3月14日

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2025年、日本で働く外国人は何人?アジア主要国からの労働者数と今後の増加予測

所内研究報告「アジア諸国からの労働力送出し圧力に関する総合的研究(第四次)報告書」を掲載しました。(社人研)

近年、日本における労働力不足が深刻化する中で、アジア諸国からの労働者受け入れが加速している。特に、ベトナム、フィリピン、インドネシア、ミャンマー、ネパール、インドといった国々が、日本への労働力送出しにおいて主要な役割を担っている。これらの国々は、それぞれの経済発展や人口動態の変化に応じて、異なる形での海外労働力移動を進めている。

アジア諸国の労働力送出しの背景には、国内の労働市場の未成熟、人口増加圧力、そして経済発展に伴う産業構造の転換がある。例えば、経済発展が進んでいる国では、高度なスキルを持つ労働者が増加し、より専門的な職種での海外就労が求められる。一方、発展途上の国では、主に低・中スキルの労働者が建設業や製造業、介護などの分野で海外就労を果たしている。

各国の政府は、自国の労働力を海外へ送ることで外貨獲得を狙う一方で、労働者の権利保護や適正な雇用環境の確保にも取り組んでいる。たとえば、ベトナムでは、新たな労働者海外派遣法の改正により、労働者の保護強化が進められている。また、フィリピンでは移住労働者省(DMW)が設置され、労働者の権利を守るための体制が強化されている。インドネシアでは、政府が国家的なスキル開発機関を通じて、より高度な技能を持つ労働者の育成を進めており、日本を含む先進国への送り出しを強化している。

コロナ禍を経て、各国の労働力送出し政策にも変化が見られる。例えば、ミャンマーでは、クーデターによる政情不安が続く中で、多くの労働者が海外での就労を希望する傾向が強まっている。ネパールでは、国外への労働者送出しに関する政府の規制が見直され、特定技能試験の停止などが影響を与えている。一方で、日本側の受け入れ環境も変化しており、特定技能制度の拡充に伴い、より多くの外国人労働者が日本で働く道が開かれている。

調査結果によると、日本はアジア諸国の中でも特に労働力の送出し先として人気が高い。これは、日本が比較的高い賃金水準を提供し、生活の安全性が確保されていることに加え、技能実習制度や特定技能制度といった受け入れ枠組みが整備されているためである。しかしながら、日本への労働力送出しには課題も多い。例えば、仲介業者の介在により、高額な手数料が発生するケースがあり、労働者にとって大きな負担となる。また、日本語の壁や文化の違いにより、職場での適応が難しい場合もある。

本研究では、各国の移民政策を分析し、特に「ビジネスと人権」に関する指導原則に基づいた政策の実施状況を調査した。その結果、国ごとに政策の違いが大きいことが明らかとなった。例えば、フィリピンは、移住労働者の権利保護に関する厳格な規制を持ち、政府が積極的に介入しているのに対し、ネパールではまだ十分な労働者保護の枠組みが整備されていない。

さらに、アジア諸国の労働市場の変化と共に、日本への送出しの動向も変わっている。例えば、ベトナムやフィリピンでは、これまでの技能実習生の送出しに加えて、特定技能制度を活用した労働者が増加している。また、インドでは、政府主導のスキル開発プログラムを通じて、ITや介護といった分野での高度人材の送り出しが強化されている。

本研究の結果から、日本が今後、アジア諸国からの労働者受け入れを円滑に進めるためには、以下の点が重要であることが分かった。第一に、労働者の受け入れ環境の改善が求められる。具体的には、適正な雇用契約の確保、労働者への適切なサポート体制の整備、日本語教育の強化などが必要である。第二に、受け入れ企業と送り出し国の政府間の協力を強化し、不適切な仲介業者の排除や労働条件の透明化を進めることが重要である。第三に、技能実習制度や特定技能制度の運用を見直し、より労働者にとって魅力的な仕組みへと改善することが必要である。

今後、日本がアジア諸国からの労働力受け入れを持続可能な形で進めるためには、単なる人手不足の解消にとどまらず、受け入れた労働者が日本で安心して働き、長期的に活躍できる環境を整備することが求められる。そうした取り組みを進めることで、日本とアジア諸国の間で相互に利益のある関係が構築されることが期待される。

⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ