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2024年11月15日

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2025年導入完了予定!電子カルテで救急・災害時にも迅速対応が可能に

第111回社会保障審議会医療部会 資料 資料3-1 電子カルテ情報共有サービスについて(厚労省)

日本の医療システムがデジタル化に向かい、大きな転換期を迎えています。医政局による新たな取り組み「電子カルテ情報共有サービス」は、全国医療情報プラットフォームを通じて、医療機関間や自治体、保険者、介護施設などが患者の医療データを効率よく共有できるように設計されています。これにより、診療や救急対応の場面での円滑な情報提供が可能となり、医療サービスの質向上や効率化が期待されています。

電子カルテ情報共有サービスは、患者情報の管理や診療時の迅速な情報共有を目的としており、特に救急や災害発生時の迅速な対応に寄与するシステムです。従来のシステムでは医療機関ごとに分散して管理されていたカルテ情報を統合し、必要なデータを速やかにアクセスできる環境を整えることで、医師や看護師が患者の詳細な病歴や検査結果を確認しやすくなります。具体的には、電子カルテに登録された情報が、事前の同意に基づき、全国の医療機関や患者本人が確認可能となり、医療機関間の連携が強化される予定です。

このシステムは、2024年度末に完全な運用を目指し、現在は千葉県、茨城県、静岡県などの地域でモデル事業が進行中です。これらのモデル事業では、千葉大学医学部附属病院や藤田医科大学病院などが中心となり、地域内の病院や診療所と協力して、システムの検証や運用を行っています。運用開始に向けて、システム構築の開発や医療機関向けの周知活動、ベンダー向けのテストなどが計画されており、2025年には全国規模で本格的な導入が予定されています。

このシステムの導入により期待される効果は多岐にわたります。まず、患者側のメリットとして、通院や検査の際に異なる医療機関間でカルテ情報が共有されるため、診察や処置の精度向上が見込まれます。たとえば、救急搬送中においても患者のアレルギー情報や検査結果が参照可能となるため、迅速かつ適切な医療を受けることが可能です。また、通院の待ち時間短縮や紙文書の持参不要などの利便性も向上し、日常的な診療がスムーズになるとされています。

一方で、医療機関側にとっては、診療情報提供書や健診結果報告書の電子化により、事務作業の効率化が進むことが期待されています。従来、医療機関間での情報共有には紙媒体が主に用いられていたため、患者情報の取り扱いや誤入力などの課題がありました。しかし、電子カルテ情報共有サービスでは、オンラインでデータを即時共有できるため、業務効率が向上するとともに、職員の負担も軽減される見込みです。さらに、このシステムを利用した情報の二次利用が進むことで、公衆衛生の向上や医薬品の研究開発にも寄与すると期待されています。

サービスの基盤となる情報の構成は、3つの文書と6つの情報で構成されています。3つの文書には、診療情報提供書、退院時サマリー、健診結果報告書が含まれ、6つの情報には、傷病名、薬剤アレルギー、その他アレルギー、感染症情報、検査情報、処方情報が含まれます。これらの情報を標準化し、全国の医療機関が利用できるようにすることで、患者に対する医療の質の均一化と、医療従事者間の意思疎通が改善されることが狙いです。

また、電子カルテ情報共有サービスは、その法的枠組みも構築されており、個人情報保護法の適用範囲を考慮しつつ、医療機関から支払基金へのデータ提供を可能とする制度が整備されました。これにより、患者の同意取得手続きを簡略化しつつ、第三者へのデータ提供を適切に制限することで、個人情報保護を確保しています。また、将来の感染症危機に備え、厚生労働省が必要に応じてデータ提供を求めることができる体制も検討されており、健康危機管理にも対応できるよう配慮されています。

導入に伴う費用負担に関しては、国からの補助制度も整備されています。システム開発費用は国が全額補助し、医療機関のシステム改修費用も、病床数に応じた上限額内で半額が補助される仕組みです。これにより、全国の医療機関が無理なくシステムを導入できる環境が整えられ、特に中小規模の医療機関にとっては財政的な負担を軽減できます。

さらに、2023年度中には、全国の医療機関で電子カルテを導入し、2024年度末には全国的なデータ共有体制を整える目標が掲げられています。これにより、健康保険証との統合が進むマイナンバーカードの利用も促進され、患者が自分の医療情報をスムーズに確認できる仕組みが整います。電子カルテ情報の標準化も進められており、患者データがFHIR形式で管理されることで、さまざまなデバイスやシステムでのデータ連携が可能になります。

今後の課題としては、システムの円滑な運用のためのサポート体制の確立や、利用者が増えるに伴うサイバーセキュリティの強化が求められます。特に医療情報はセンシティブなデータを含むため、外部からの不正アクセスを防ぐ高度なセキュリティ対策が必要です。また、電子カルテの普及に伴い、医療従事者への操作研修やシステム活用方法の周知も重要な要素となります。

日本の医療システムが大きく変わる中で、この電子カルテ情報共有サービスは、医療DX(デジタルトランスフォーメーション)を進める要となるプロジェクトです。地域医療の一層の連携強化や診療の質の向上に寄与するだけでなく、将来的には医療費の効率的な管理や、病気の早期発見、予防医療の推進にまで影響を与えると考えられます。患者と医療従事者双方にメリットをもたらすこのシステムの整備は、日本の医療の未来に向けた重要な一歩と言えるでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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