2025年3月4日
労務・人事ニュース
2025年2月 業況DI▲20.5に悪化!物価高・円安・人手不足の影響で中小企業の経営環境が厳しさ増す
2025年2月 業況DIは、コスト増が続く中、天候不順で全業種悪化。先行きは、改善示すも不変的な見方多く、力強さ欠く(LOBO調査)
2025年2月のLOBO調査によると、中小企業の業況DIは▲20.5と、前月比で5.1ポイント悪化しました。これは、長引く物価高や円安基調、燃油価格の上昇、人手不足の深刻化などの課題に加え、2度にわたる大寒波が影響した結果と考えられます。特に小売業やサービス業では、年始需要の一服に加えて、急激な気温低下による客足の減少と電気代などのコスト増が響きました。卸売業でも飲食料品や日用品の引き合い減少が見られ、業況が悪化しました。製造業では機械器具関係全般が低調で、建設業も公共工事の一服と降雪による工事停滞が業況を押し下げる要因となりました。全業種で業況DIが1.0ポイント以上悪化したのは、2024年6月以来8か月ぶりとなります。
中小企業の経営環境は厳しさを増しており、消費マインドの低迷が続いていることに加え、輸入コストの上昇やエネルギー価格の高騰が経営を圧迫しています。加えて、労働力不足の問題も深刻化しており、「年収の壁」による就業調整が企業の人手不足に拍車をかけていることが指摘されています。調査によると、4社に1社以上が「就業調整による人手不足に直面している」と回答しており、特に小売業やサービス業などの労働集約型産業で影響が大きくなっています。パート・アルバイト従業員の就業時間を抑える動きが広がる中、企業は追加の人材確保に苦慮しており、既存従業員の業務負担が増加している現状が明らかになりました。
就業調整が発生する背景には、税制や社会保険制度の「年収の壁」の存在があります。103万円の壁(所得税課税基準)を意識して就業調整を行う人が最も多く、次いで106万円の壁(社会保険の適用基準)や130万円の壁(配偶者の扶養から外れる基準)が大きな要因となっています。特に106万円の壁については、手取り額が減少するため、働きたくても働けない状況が生まれています。この影響を受け、企業の中にはパート従業員の賃上げを行っても、就業時間が減少してしまうケースがあることが指摘されました。また、人手不足解消に向けて社会保険の加入を前提とした長時間労働の選択肢を提供する動きも出てきています。
就業調整による人手不足に対する対応策としては、「パート・アルバイト従業員の追加雇用」が46.2%と最も多く、次いで「既存の社員の業務量増加」が32.9%となりました。しかし、求人を出しても人が集まらず、対応が困難な状況にある企業も少なくありません。また、ITを活用して労働生産性を向上させる動きも19.6%の企業で見られました。一方で、「特に対応していない」企業も20.8%あり、人手不足の深刻さを物語っています。人手不足解消と社会保険料負担に関する考え方としては、「人手不足解消になっても社会保険料負担は増やせない」と回答した企業が36.1%、「人手不足解消につながれば社会保険料の負担増はやむを得ない」と回答した企業が53.7%となりました。コスト増が続く中で、社会保険料の負担増を受け入れながらも人材確保を優先する企業も多く、難しい選択を迫られています。
業種別に見ると、建設業では資材価格やエネルギー価格の高止まりが続く中、住宅関連を中心とした民間工事の低迷や公共工事の減少が影響し、業況が悪化しました。技術者などの専門人材の不足も引き続き課題となっており、人手不足が事業の足かせとなっています。製造業では、寒波の影響で物流が滞り、原材料価格の高騰によるコスト増が経営を圧迫しました。卸売業では、輸送コストの増加や仕入価格の上昇が影響し、特に食料品・飲料関係の売上が減少しました。小売業では、急激な気温低下により春物衣料などの売上が伸び悩み、消費者の購買意欲が低迷していることが指摘されました。サービス業では、インバウンド需要が一定の水準で推移しているものの、年始の特需が落ち着いたことで業況が悪化しました。
地域別では、東北や北陸信越地域では記録的な大雪が影響し、飲食店や宿泊業の売上が悪化しました。関東や東海地域では、消費者の買い控えが続き、専門小売店や飲食店の業況が悪化しました。九州や中国地方でも、急激な気温低下により来店客数が減少し、エネルギーコストの増加が経営を圧迫しました。全国的に見ても、中小企業の景況感は依然として厳しく、先行きについても改善を示す一方で、長期的な課題が山積している状況に変わりはありません。
今後の展望として、実質賃金がプラス基調で推移する中で、新年度関連の需要増に期待が寄せられています。しかし、消費マインドの低迷やコスト増、人手不足といった構造的な課題が根強く残っており、中小企業の景気回復には時間がかかる可能性が高いと見られます。さらに、世界情勢の不安定要因や円安の影響も懸念されており、慎重な経営判断が求められる局面が続くでしょう。
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