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2025年5月6日

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2025年6月1日施行、小型旅客船への無線設備義務化で安全管理体制の強化が加速

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「船舶安全法第三十二条ノ二の船舶の範囲を定める政令の一部を改正する政令」を閣議決定 ~旅客定員を有する船舶に無線電信等の設置を義務付け~(国交省)

2025年4月25日、政府は「船舶安全法第三十二条ノ二の船舶の範囲を定める政令の一部を改正する政令」を閣議決定しました。この改正により、旅客定員を有する船舶に対して、無線電信等の通信設備の設置が義務付けられることになります。これまで、無線設備の設置が猶予されていた小型の旅客船などに対しても、今後は確実な通信手段の確保が法的に求められるようになります。今回の政令は2025年5月1日に公布され、6月1日から施行される予定です。

この改正の背景には、海上における通信手段の重要性が改めて認識されるようになったことがあります。特に1991年(平成3年)には、原則すべての船舶に対して無線通信設備の設置が義務付けられたものの、当時の周波数帯の配分状況や技術的制約を考慮し、特定の小型船舶についてはその義務を猶予する措置が取られていました。たとえば、長さ12メートル未満の沿海区域を航行する旅客船以外の船舶については、この設置義務の適用が見送られていました。

しかしながら、近年の急速な通信技術の進化により、状況は大きく変わりました。特に衛星通信の発達と、それに付随する端末機器の普及により、船舶と陸上との間で安定的かつ即時の通信が可能となってきています。こうした技術的進展により、従来の無線設備に加え、衛星電話や陸上の公衆通信網と接続できる通信機器が現実的な選択肢として広まりつつあります。これにより、従来は設備設置が困難とされていた船舶にも通信手段の整備が可能となり、法令の改正が現実的なタイミングで行われたことがわかります。

また、実際の海難事故の教訓も、今回の改正を後押しする形となりました。とりわけ2022年4月に発生した知床遊覧船の事故は、通信設備の不備が救助活動に深刻な影響を与えた事例として社会に大きな衝撃を与えました。この事故を受けて設置された知床遊覧船事故対策検討委員会では、小型旅客船に対する通信手段の義務化が強く求められ、安全確保の観点から制度整備の必要性が明確に示されました。

今回の政令改正によって、新たに無線電信等の設置義務の対象となるのは、旅客定員を有するすべての船舶です。具体的には、海上タクシーや遊覧船など、小規模ながら旅客を輸送する役割を担う船舶に対しても、陸上との確実な連絡手段を持つことが法令で明文化されることになります。こうした措置により、万が一の事態に際して迅速な救助活動が可能となり、乗客の生命・安全の確保に資する大きな一歩となります。

このように、今回の法改正は、単なる技術対応にとどまらず、実際の事故を契機として議論を深め、制度設計がなされた点において高い社会的意義を持ちます。企業の採用担当者や安全管理に関わる責任者にとっても、このような安全基準の法整備は無視できない要素となり得ます。特に観光業や海運業など、旅客輸送を担う企業においては、通信設備の設置と運用が新たなコンプライアンス要件として浮上しており、設備投資や運用マニュアルの見直し、さらに技術系人材の育成や配置といった取り組みが急務となります。

さらに、安全性の強化をアピールポイントとして活用することは、求職者に対する企業の信頼性や将来性の訴求にもつながります。特に若年層や転職希望者の間では、企業のリスク管理能力や社会的責任への姿勢が重視される傾向にあり、こうした制度変化を積極的に取り入れる姿勢が人材確保においても有利に働くでしょう。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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