労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 2030年までに次世代船舶受注で世界トップへ!日本の海事産業、33名の専門家が描く変革ロードマップ

2024年7月25日

労務・人事ニュース

2030年までに次世代船舶受注で世界トップへ!日本の海事産業、33名の専門家が描く変革ロードマップ

2030年における次世代船舶受注量の世界トップシェアを目指します ~「船舶産業の変革実現のための検討会」報告書のとりまとめ~(国交省)

日本の海事産業が大きな転換期を迎えています。国土交通省海事局は、2030年までに次世代船舶の受注量で世界トップシェアを目指す新たな目標を掲げました。この野心的な目標は、「船舶産業の変革実現のための検討会」の報告書で明らかにされました。

海運業界は今、大きな変化の波に直面しています。カーボンニュートラル船や自動運航船といった次世代船舶への移行が進む一方で、中国や韓国との激しい国際競争にさらされています。さらに、日本国内では人口減少に伴う人材確保の課題も浮上しています。

こうした状況を踏まえ、国土交通省海事局は2023年5月に「船舶産業の変革実現のための検討会」を立ち上げました。この検討会では、造船会社や舶用機器メーカー、有識者らが集まり、2030年に向けた船舶産業のあるべき姿や目標、そしてそれらを実現するための具体的な取り組みについて議論を重ねてきました。

検討会の報告書では、2030年までに日本の海事産業が次世代船舶の受注量で世界トップシェアを獲得することを目標として掲げています。次世代船舶には、アンモニアや水素、メタノールを燃料とする船舶、液化CO2運搬船、液化水素運搬船、そして自動運航船などが含まれます。

この目標を達成するために、報告書では三つの重要な変革の方向性を示しています。まず一つ目は、技術開発や標準化、設備増強を通じて、競争力のある次世代船舶を供給できる産業への変革です。二つ目は、デジタル技術を最大限に活用し、多様化する顧客ニーズに対応しつつ、生産性を抜本的に高める産業への変革です。そして三つ目は、待遇改善や業界の魅力向上により、十分な人材を確保できる産業への変革です。

具体的な取り組みとしては、次世代船舶に関するコア技術や周辺機器の開発、ゼロエミッション船の建造に必要な設備投資、船舶関連機器のサプライチェーン強化、次世代燃料に対応した機器の標準化などが挙げられています。また、デジタル技術の活用面では、AI、VR、AR、協働ロボットなどを商談から設計、建造のプロセスに取り入れることで、生産性の向上を図ることが提案されています。

人材確保の面では、他産業に劣らない待遇の確保や労働環境の改善、魅力的な広報活動の展開、専門研修の実施、外国人材の育成支援などが盛り込まれています。さらに、公正な国際競争環境を整備するため、戦略的な国際基準の策定にも取り組むとしています。

この報告書に基づき、今後は産学官が連携して具体的な取り組みを進めていくことになります。国土交通省は、これらの施策を通じて船舶産業の変革を実現し、引き続き船舶の安定供給によって国民生活や経済安全保障を支えていく考えです。

日本の船舶産業は、技術力と品質の高さで世界的に評価されてきました。しかし、近年の国際競争の激化や環境規制の強化、デジタル化の進展など、業界を取り巻く環境は大きく変化しています。今回の新たな目標設定と変革への取り組みは、こうした変化に対応し、日本の船舶産業が世界市場でリーダーシップを発揮し続けるための重要な一歩となります。

業界関係者や専門家からは、この野心的な目標に対して期待と課題の両方の声が上がっています。技術開発や設備投資には多額の資金が必要となるため、政府の支援策や民間企業の投資意欲が鍵を握ると指摘する声もあります。また、人材確保については、造船業の魅力をいかに若い世代に伝えるかが重要な課題となっています。

一方で、環境に配慮した次世代船舶の需要は今後さらに高まると予想されており、日本がこの分野でリーダーシップを取ることができれば、大きな経済効果も期待できます。また、自動運航技術の発展は、海上輸送の安全性向上にもつながる可能性があります。

国土交通省は、この報告書の内容を踏まえ、今後具体的な施策を展開していく方針です。業界団体や関連企業とも緊密に連携しながら、目標達成に向けたロードマップの詳細を固めていくことになります。また、進捗状況を定期的に確認し、必要に応じて施策の見直しも行う予定です。

この取り組みが成功すれば、日本の船舶産業は単に船を造るだけでなく、船のライフサイクル全体に関わる総合的なサービスを提供する産業へと進化する可能性があります。それは、より高い付加価値を生み出し、持続可能な成長を実現する道筋となるでしょう。

船舶産業の変革は、日本の製造業全体にとっても重要な意味を持ちます。環境技術やデジタル技術を活用した生産性向上の取り組みは、他の製造業にも応用できる可能性があるからです。その意味で、今回の目標設定と変革への挑戦は、日本の製造業全体の未来を左右する重要な試金石となるかもしれません。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ