2024年9月28日
労務・人事ニュース
2040年までに生産年齢人口1,200万人減少へ、高齢化社会の新たな労働力確保策を発表
新たな「高齢社会対策大綱」(令和6年9月13日閣議決定)の決定について(内閣府)
令和6年9月13日に閣議決定された「高齢社会対策大綱」では、日本が直面している急速な高齢化問題に対応するための具体的な施策が提案されています。日本は、世界でも類を見ないスピードで高齢化が進行しており、2023年の高齢化率は29.1%に達し、2070年には38.7%にまで上昇すると予測されています。この高齢化に伴い、生産年齢人口の減少や経済規模の縮小、一人暮らしの高齢者の増加など、多くの社会的な課題が顕在化している状況です。
大綱の目的は、すべての世代が年齢に関わらず活躍し続けられる経済社会を構築し、多世代が安心して共存できる社会を作り上げることです。特に高齢者に関する施策は、単に高齢者を支援するだけでなく、高齢化社会において持続可能な社会を実現するために不可欠な取り組みと位置づけられています。例えば、2040年までに生産年齢人口が約1,200万人減少するとされ、社会の担い手の不足が予想されています。
その中で、特に注目すべきは、高齢者の活躍を促進するための環境整備です。具体的には、高齢期を見据えたスキルアップやリ・スキリング(再教育)の推進が挙げられており、企業内での経験やスキルを活かした配置や評価、処遇の改善が進められます。また、起業支援やハローワークのマッチング強化など、多様な就業機会の提供も行われる予定です。これにより、高齢者が長期にわたり社会に貢献できる仕組みを整備し、年齢によって社会から排除されることなく、引き続き活躍できる場を提供することが重要視されています。
さらに、地域社会での社会参加の促進も重点的に取り組まれる課題です。多様な主体が連携して地域の課題解決に取り組むプラットフォームの構築や、地域の仕事や活動を個々の都合に合わせて柔軟にマッチングする仕組みが提案されています。これにより、地域社会の担い手を確保し、地域全体の活性化を図ることが狙いです。また、老人福祉センターやオンラインでの学習機会の充実も図られ、学習や社会参加を通じて高齢者が引き続き社会に貢献できる環境が整えられます。
高齢社会におけるもう一つの重要な課題は、加齢に伴う身体的および認知的な変化に対応することです。65歳以上の認知症および軽度認知障害(MCI)の患者数は増加傾向にあり、2040年にはそれぞれ約584万人および612万人に達すると予測されています。これに対処するため、大綱では在宅医療や介護の充実を含めた地域包括ケアシステムの強化が提案されています。介護現場でのICTやロボット技術の活用による生産性向上、処遇改善を通じた介護人材の確保も重要な課題です。加えて、介護と仕事を両立できる雇用環境の整備が求められており、これにより働く世代が安心して介護に携われる環境を提供することが目指されています。
さらに、地域における移動手段の確保や生活環境の改善も進められます。特に高齢者の生活の質を向上させるためには、地域公共交通の「リ・デザイン」や自動運転技術の導入が鍵となります。また、空き家対策の推進や高齢者が安心して暮らせる居住支援体制の整備も急務です。2040年には65歳以上の一人暮らしの高齢者が約1,041万人に達すると予測されており、これに伴う住環境の改善が求められています。
このような高齢社会対策は、単なる支援ではなく、すべての世代が共存し、互いに支え合う持続可能な社会の実現を目指すものです。特に、高齢者が積極的に社会に参加し、役割を持てるような環境を整えることが重要です。これにより、地域社会や企業における高齢者の貢献が促進され、社会全体が一体となって持続可能な未来を築いていくことが期待されています。
この大綱の実施により、今後さらに高齢化が進む日本において、すべての世代が安心して暮らし、互いに支え合う社会を実現するための取り組みが加速することでしょう。
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