2024年9月21日
労務・人事ニュース
205万人に増加した外国人労働者、日本の労働市場を支える鍵となる存在とは?
令和6年度経済財政白書 第2章 人手不足による成長制約を乗り越えるための課題 第3節 我が国における外国人労働者の現状と課題(内閣府)
2023年10月末時点で、日本における外国人労働者数は約205万人となり、過去最高を記録しています。この数は全雇用者の約3.4%にあたり、労働市場における外国人労働者のプレゼンスが高まっていることが示されています。少子高齢化の進行とともに、今後も外国人労働者の重要性は増すと考えられていますが、一方で、外国人労働者の増加が賃金水準の低下につながるのではないかという懸念もあります。
外国人労働者の雇用動向を見てみると、その数は基本的に増加傾向を示しています。特に2010年代半ば以降、その伸びは顕著であり、近年の製造業および非製造業での人手不足感が背景にあります。外国人労働者は主にベトナム、中国、フィリピン、ネパール、ブラジルなどの国籍を持つ労働者が多く、特に東南アジア出身者が全体の約半数を占めています。製造業では、食品製造や機械工業などで外国人労働者の割合が高く、飲食業や宿泊業でも外国人の就業割合が高いのが特徴です。また、外国人労働者の受け入れ制度は徐々に整備されており、1989年以降、在留資格の新設や技能実習制度の導入など、経済状況に応じた改正が行われてきました。
外国人労働者の賃金水準について、日本人労働者との比較が行われています。外国人労働者は年齢が若く、勤続年数も短い傾向にあり、そのため賃金水準が低くなることが指摘されています。また、外国人労働者の中でも在留資格によって賃金に差があり、特に技能実習生や特定技能の労働者は日本人よりも低賃金であることが多いです。これには、転籍制限やスキルの移転制約が影響している可能性が指摘されています。技能実習制度では、原則として転籍が認められていないため、労働者が他の企業に移ることができず、賃金交渉が難しい状況が続いています。
さらに、高技能外国人労働者については、日本での在留歴が短いため、日本の企業文化や日本語能力に適応する時間が必要であることから、初期の賃金が日本人より低いケースが見られます。一方で、永住者などの在留資格を持つ外国人労働者は、日本人と賃金差がない、もしくは高い賃金を得ている場合もあります。特に、専門的・技術的職業に従事する永住者は、非常に高い学歴を持っていることが多く、彼らは日本の労働市場で高い評価を受けていることが分かっています。
外国人労働者の受け入れを進めるうえで、日本語能力の向上や、生活環境の整備が定着率を高めるために重要な要素となっています。特に高スキルを持つ労働者が長期的に日本で活躍するためには、職場だけでなく生活面での支援も必要です。また、外国人労働者が地域社会の一員として受け入れられ、日本人との共生が進むためには、教育や医療の提供、生活の基盤づくりなども重要な課題です。
これらの点を踏まえ、政府や企業は外国人労働者の受け入れ体制を整備し、合理的な賃金設定や職業能力の適切な評価を行うことで、労働市場における人材不足を補完し、経済成長を支えていくことが期待されます。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ