2024年11月26日
労務・人事ニュース
530職業を収録した『job tag』、2023年度新規10職業追加で企業の採用戦略を支援
「job tag」(職業情報提供サイト(日本版O-NET))のインプットデータ開発に関する研究(2023年度)(JILPT)
「job tag(日本版O-NET)」は、厚生労働省が運営する職業情報提供サイトであり、2020年3月に公開されました。このサイトは、米国のO-NET OnLineをモデルにしており、530種類以上の職業情報を収録しています。職業情報は、学生や求職者、企業の採用担当者、さらにはキャリアコンサルタントなど、さまざまなユーザーにとって有用なものです。特に、職業情報の「見える化」により、求職者や在職者が自分に合った職業を見つけるために活用でき、企業にとっても人材配置や教育訓練のための有用なリソースとなっています。
「job tag」の情報は、主に職業解説、数値情報、そしてタスク情報の三つから成り立っています。職業解説では、各職業の仕事内容や入職経路、労働条件の特徴などが詳述されており、これにより求職者は具体的な職業イメージを掴むことができます。数値情報は、各職業に求められるスキルレベルや知識の重要度を数値化して比較できる形式で提供されており、求職者や企業が職業を横断的に比較する際に役立ちます。また、タスク情報では、各職業における日々の業務内容を実施率と共に示しており、これにより職業ごとの細かな業務内容の違いや特徴を知ることができます。
「job tag」の職業情報は、企業にとっても非常に有益です。特に、人事部門や採用担当者にとって、職業ごとのスキルや知識、労働条件についての詳細な情報をもとに、人材採用や配置を行うことができます。例えば、企業が新たな社員を採用する際、求めるスキルや知識を具体的に把握することができ、その情報を基に最適な人材を選び出すことが可能になります。また、教育訓練プランの作成においても、職業ごとのスキルレベルや必要な知識を元に、社員がどのように成長するかを見据えた計画を立てることができるのです。さらに、タスク情報を活用することで、職業ごとの具体的な業務内容を理解し、職務の適切な振り分けを行うことができます。これにより、業務効率の向上や職場環境の改善が期待できます。
2023年度には、「job tag」に新たに10職業が追加されました。これらの新規職業は、現代の社会や労働市場の変化に合わせた職業であり、企業や求職者にとって非常に重要な情報源となります。たとえば、デジタル技術やDX(デジタルトランスフォーメーション)推進を背景に、「UX/UIデザイナー」という職業が追加されたことは、今後の求人市場において重要なポイントとなります。また、クリーンエネルギー分野では、「バイオマス発電プラントの設計」という職業が新たに収録され、持続可能なエネルギーの需要拡大に対応しています。これにより、環境問題に関心のある企業にとっては、必要な人材を見つけるための新たな指針が提供されることになります。
一方で、介護や福祉分野では「訪問介護のサービス提供責任者」や「障害者グループホーム世話人」などが新たに追加され、人手不足が深刻なこれらの分野において、求職者と企業が適切にマッチングするための手助けとなっています。特に、これらの職業は現在の社会的ニーズが高く、国の施策でも優先されている分野です。このような職業情報を基に、企業は労働市場の動向に即した採用活動を展開することができ、求職者は自分のキャリアをより適切に築いていくことが可能になります。
「job tag」のデータ収集においては、Web調査を活用して職業に関する数値データを収集しています。この調査は、さまざまな職業の就業者に対して、職業に関連する知識やスキル、仕事の性質、労働条件についての情報を収集し、そのデータをもとに職業情報を更新していくものです。調査の目標は、各職業ごとに必要なデータを網羅的に集めることで、より精度の高い職業情報を提供することです。これにより、企業は最新の労働市場情報を元に戦略的に人材を活用することができ、求職者も自分に合った職業選択をより正確に行うことができるのです。
また、2024年度にはさらに新たに10職業が追加される予定です。これらの職業は、さらに多様化した社会のニーズに応えるため、選定基準に基づき慎重に選ばれています。新たに追加される職業には、社会学研究者や鉄道車両設計技術者、探偵など、現在注目されている分野や新興分野に関する職業が含まれており、これらの職業情報も「job tag」に収録されることによって、企業や求職者にとってより多様な選択肢が提供されることとなります。
このように、「job tag」は、求職者と企業の両者にとって、労働市場の理解を深めるための重要なツールです。職業情報の詳細なデータを活用することで、企業は採用活動や人材育成をより効率的に行うことができ、求職者は自分に最適な職業を選択することができます。「job tag」の活用によって、労働市場の最適化が進み、企業と求職者双方にとって価値のある結果を生み出すことが期待されます。