2025年5月20日
労務・人事ニュース
57.3%の中学生が母親と進路を語る、「会話する家庭」の子どもは将来意識が高い
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最終更新: 2025年5月20日 03:01
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第14回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況 家庭での会話とこどもが考える将来(厚労省)
厚生労働省が実施する「21世紀出生児縦断調査」は、平成22年に生まれた子どもたちの成長を長期的に追跡し、家庭環境や生活実態、心理面に至るまで幅広く分析する貴重な統計資料です。令和6年に実施された第14回目の調査では、子どもたちが中学2年生となった時点での「家庭内の会話」と「将来の意識形成」の関係に焦点が当てられました。この調査結果は、子どもたちの進路や人生設計に対する考え方がどのように育まれているのかを知る手がかりとなり、将来の人材育成や採用方針を検討する企業にとっても重要な示唆を与えるものです。
調査ではまず、将来に関する意識について、「具体的に考えている」か「具体的にはまだ考えていない」かという観点から、子ども自身の考え方を分類しています。そのうえで、母親や父親との会話の頻度がそれぞれどの程度かを、「よくする」「ときどきする」「あまりしない」「全くしない」といった回答に基づき集計し、世代間の比較も行われています。結果として明らかになったのは、将来の進路や人生設計を「具体的に考えている」と回答した子どもたちは、いずれのテーマにおいても、親との会話頻度が高い傾向にあるということです。
具体的には、平成22年出生児において、将来の進路について「具体的に考えている」と答えた子どものうち、母親と「会話をする」と回答した割合は57.3%でした。一方で、「具体的にはまだ考えていない」と回答した子どもではこの割合が42.5%にとどまっており、約15ポイントの差が見られます。これは父親との会話においても同様で、将来について考えている子どもでは63.2%が「会話をする」と答えているのに対し、考えていない子どもでは49.2%にとどまっています。つまり、親とよく会話をする子どもほど、将来のことをより具体的に思い描いているという傾向が明確に表れているのです。
さらに、将来に関する他のトピック、たとえば「結婚」や「最初の子どもを持つ時期」についても、同様の傾向が認められました。母親との会話では、「結婚」について話す割合が将来を考えている層では62.2%、「子どもを持つ時期」については62.6%となっており、いずれも「考えていない」層より10ポイント以上高い水準を示しています。これにより、日常的な親子の対話が、将来設計の意識醸成に強く影響していることが裏付けられました。
世代間比較においても同様の傾向が見られ、平成13年出生児の調査結果と比較しても、親との会話の頻度と将来意識との間には明確な相関関係があることが確認されています。たとえば平成13年出生児において、将来を「具体的に考えている」と回答した子どものうち、父親と進路について会話をする割合は63.2%であり、これに対して「考えていない」層では49.2%にとどまっていました。これは約14ポイントの差となり、平成22年出生児とほぼ同様の差異を示しています。
この結果から得られる示唆は多く、特に企業にとっては、将来的に採用する可能性のある若年層がどのような背景や価値観を持って育っているのかを理解する手がかりとなります。つまり、親との対話が豊富である家庭で育った子どもたちは、自分の将来について主体的に考える傾向が強く、進学や就職といったライフイベントに対して前向きに行動できる可能性が高いと考えられます。一方で、親との会話が少ない子どもたちは、自身の将来像を描くことが難しく、社会人としての適応においても一定の支援が必要となるケースが想定されます。
企業の採用担当者にとって、このような傾向を踏まえたうえで、新卒採用や若年層向けの研修制度の設計を行うことは極めて有効です。たとえば、入社直後に実施するキャリア設計ワークショップやメンター制度の導入は、本人の将来像を明確化し、職場定着率の向上に貢献する可能性があります。また、個人面談やフィードバックの機会を多く設けることで、社員との信頼関係を構築し、将来への不安を軽減させることにもつながるでしょう。
さらに、企業が地域社会や教育機関と連携し、将来のキャリアに関するワークショップや職場体験を提供することで、子どもたちが早い段階で社会の一員としての意識を持つよう支援することも、CSR(企業の社会的責任)の一環として非常に意義のある取り組みです。特に、進路について考える機会が少ない家庭環境にある子どもたちに対して、企業がその「最初の社会との接点」となれば、社会全体としての教育格差の是正にも寄与することができます。
このように、厚生労働省の縦断調査が明らかにした家庭内コミュニケーションと将来意識の関連性は、単なる家庭教育の問題にとどまらず、社会全体で共有すべき課題でもあります。とりわけ企業においては、今後の採用や育成、職場環境の構築において、こうした調査結果を積極的に活用する姿勢が求められる時代になっているのです。将来を自らの言葉で語ることができる若者を育てるために、企業ができることは数多くあります。人材の確保が競争力のカギとなる現代において、採用活動とは単なる選考の場ではなく、未来を共に育むスタート地点であるという意識が、ますます重要になるでしょう。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ