2024年9月26日
労務・人事ニュース
81,000棟以上が調査対象!国家機関のアスベスト使用実態に関する最新報告
国家機関の建築物等における吹付けアスベスト等の使用実態に関する集計(フォローアップ)結果(国交省)
令和6年9月10日、国土交通省官庁営繕部計画課から発表された報告書によると、国家機関が所管する建築物におけるアスベスト使用の実態について、フォローアップ調査が行われ、その結果が公表されました。調査対象は、各省庁が管理する国有財産で、主に行政財産に該当する建築物や附帯施設です。この調査は、特に「吹付けアスベスト」や「アスベストを含有する吹付けロックウール」に焦点を当てて実施されました。
アスベストとは、アモサイト、クリソタイル、クロシドライト、アクチノライト、アンソフィライト、トレモライトという6種類の繊維状鉱物を指し、これらが0.1%以上含まれている材料がアスベストとして規定されています。アスベストは過去に多くの建築物で断熱材や防音材として使用されていましたが、その健康への悪影響から、現在では使用が禁止されています。しかし、過去に建設された建築物の中には、依然としてアスベストが含まれているものが存在しており、その対応が重要な課題となっています。
今回の調査は令和6年3月31日時点で実施され、81,912棟の建物が調査対象となりました。そのうち、アスベストが使用されている建物は273棟で、これは令和5年3月時点で報告された274棟から1棟減少しています。さらに、飛散防止対策が実施済みの建物は264棟で、前年の265棟から同じく1棟減少しています。飛散防止対策が未実施の建物は9棟で、これには使用箇所への立ち入り禁止措置が取られています。加えて、アスベストが使用されている可能性があるが、含有量が未調査の建物が1棟存在します。
今回の報告書では、アスベスト対策が継続的に進められていることが示されており、過去の調査結果からも、徐々にではあるものの飛散防止対策が進んでいることが確認されました。特に、フォローアップが開始された平成17年度には、飛散防止対策が未実施だった施設は702棟存在しましたが、令和5年度末時点では9棟にまで減少しています。これは、国土交通省や各省庁が協力し、アスベスト除去や飛散防止策の実施を推進してきた成果といえるでしょう。
アスベストの危険性が広く認識されるようになった背景には、健康被害が深刻化した事例が多く存在することが挙げられます。アスベストの繊維を吸い込むことで肺に深刻な影響を及ぼし、長期的な健康被害を引き起こす可能性があるため、各機関はその使用を徹底的に排除する努力を続けています。今後も各省庁に対して、必要な対策が迅速かつ適切に実施されるよう、保全指導や情報提供が行われる予定です。
今回の調査では、具体的な建物名も報告されており、東京高等裁判所や大阪高等裁判所といった重要な司法機関の建物でも対策が進められていることが確認されました。また、令和7年度以降に対策が予定されている建物も多くあり、今後もアスベスト除去に向けた取り組みが継続される見込みです。これにより、国家機関の建築物におけるアスベストの使用は、さらに減少していくことが期待されています。
総じて、今回の報告書はアスベスト対策が着実に進んでいることを示しており、過去に使用されたアスベストに対しても適切な対応が取られていることがわかります。アスベスト除去作業は時間がかかるものの、国家機関としての責任を果たし、健康被害のリスクを低減するための努力が続けられています。今後も継続的なフォローアップが行われ、最終的にはすべての建物で安全対策が完了することを目指しています。
各省庁が管理する建築物において、今後もアスベストの有無の確認や飛散防止対策が求められる中、企業や業者がどのように関与できるかが重要なポイントとなります。特に、除去作業や飛散防止策の実施には専門的な知識と技術が必要とされるため、この分野における技術者や施工業者の需要が高まることが予想されます。国土交通省や各省庁が進めるこれらの対策に協力することで、アスベスト問題の早期解決に貢献できるでしょう。
採用担当者にとっては、今後のアスベスト除去プロジェクトに関わる人材の確保が重要な課題となるでしょう。特に、アスベストに関する専門知識や施工技術を持った人材は限られているため、こうしたスキルを持つ人材の採用や育成に力を入れることが必要です。さらに、各省庁との協力関係を構築することで、今後のプロジェクトに積極的に参加する機会が増えるかもしれません。
今後の展望として、アスベスト問題の完全な解決に向けては、まだ一定の時間と労力が必要です。しかし、これまでの取り組みが示すように、着実に前進しており、国家機関の建物がすべて安全な環境となる日が近づいています。このような状況下で、関連業界の企業はその知識や技術を活かして、アスベスト除去に向けたプロジェクトに貢献することが期待されます。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ