2025年4月24日
労務・人事ニュース
83.3%の女性が「家事・育児は夫婦で平等に」と回答した背景と企業が取るべきアクション
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最終更新: 2025年4月30日 22:32
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最終更新: 2025年5月1日 11:34
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『人口問題研究』第81巻第1号「特集Ⅰ:『第7回全国家庭動向調査(2022年)』の個票データを利用した実証的研究、 特集Ⅱ:地方創生に関連した研究(その3)」(社人研)
令和の時代に入り、少子化と高齢化の進行がかつてないスピードで日本社会に影響を与えています。特に2024年の出生数はついに72万人を下回り、統計史上過去最少を更新する見通しです。このような人口構造の変化は、企業の採用活動や人材マネジメントにも大きな影響を及ぼしており、採用担当者が向き合うべき社会的背景として無視できません。
国立社会保障・人口問題研究所が実施した第7回全国家庭動向調査(2022年)は、こうした背景のもとで家庭の実態や家族に関する社会規範を広範に捉える重要な調査です。本調査は結婚経験のある女性を中心に、ジェンダー観、育児・介護に対する価値観、LGBTQに対する意識など多様な社会規範について、全国から有効票数9,000件以上のデータを収集しています。その中には、現代の若年層や高所得層が抱く社会規範の変化を浮き彫りにする結果も多く含まれており、採用政策における配慮や職場環境の設計に直結する示唆が詰まっています。
たとえば、「夫も家事や育児を平等に分担すべきだ」という項目に賛同した女性は83.3%にのぼり、もはや男女平等の家庭内役割を求める意識は社会のスタンダードとなりつつあります。一方で、「家庭で重要なことがあったときは、父親が最終的に決定すべきだ」という考えには若年層でも一定の支持(43.9%)があり、意思決定においては依然として男性優位の価値観が残存していることがわかります。
また、教育水準の高い層ほどジェンダーに関する規範において進歩的な態度を持つ傾向が顕著であり、大学院卒では「夫婦は子どもを持ってはじめて社会的に認められる」と考える人はわずか10.1%に留まっています。これは、キャリア形成において家族構成や出産を前提としない価値観が広がっていることを意味し、多様なライフスタイルを尊重する職場文化の醸成が求められていることを示しています。
高齢者に関する意識も変化しています。「年老いた親の介護は家族が担うべきだ」との回答は全体で52.0%に達するものの、特に正規雇用者や高学歴層ではその割合が低下傾向にあります。これは、仕事と介護の両立が困難であるという現実を反映しており、企業側が介護支援制度を整備することの必要性を浮き彫りにしています。
一方、LGBTQに関する規範では全体として70%台の賛同率が多く、「同性婚を法律で認めるべきだ」と考える人も多数を占めています。ただし、「女性どうしのカップルが生殖補助医療で子どもを持つべきだ」との項目では53.3%とやや保守的な見方も残っています。こうした価値観の違いは、LGBTQ当事者を含めたすべての従業員が働きやすい環境を築くうえで、制度面・文化面の両面からアプローチする必要があることを示しています。
特に興味深いのは地域差に関する分析です。ジェンダーに対する意識が最も進歩的だったのは東京都、鳥取県、山梨県などで、逆に九州地方や香川県では保守的な価値観が根強く残っています。一方でLGBTQに関しては、沖縄県や群馬県、鳥取県などが最も進歩的な意識を持ち、意外にも鹿児島県や宮崎県はジェンダー観では保守的でありながら、LGBTQに関しては寛容という興味深い地域性がみられます。こうした地域特性は、地方拠点を持つ企業にとっては採用地ごとの戦略に活かすことができます。
さらに、子どもの有無や人数による価値観の違いも注目すべきポイントです。子どもがいない人ほどジェンダーやLGBTQに関して進歩的な態度を持つ傾向が強く、人数が増えるほど保守的な傾向になるという結果も出ています。これは家庭環境や育児経験が価値観形成に影響を与えることを示しており、従業員の家族構成に応じた柔軟な働き方支援が求められる背景を示唆しています。
収入別の分析では、必ずしも高収入層が一貫して進歩的というわけではなく、中程度の収入層(600万円〜700万円)の方が最もリベラルな態度を示す傾向が確認されました。特に、「夫も家事や育児を平等に分担すべきだ」という意識は、800万円以上の高所得層よりも、300〜700万円の層で高くなっているのが特徴的です。これは、中堅層においてワークライフバランスへの意識が高まり、職場においても育児と仕事の両立支援を求める声が強くなっていることを示唆しています。
こうした調査結果は、単なる家庭における価値観の変遷を示すだけでなく、企業が今後の採用戦略や職場環境づくりにおいて考慮すべき社会的文脈そのものです。例えば、ダイバーシティ推進の取組みにおいては、単に制度を導入するだけでなく、実際の職場でそれが受け入れられる風土づくりまで踏み込んだ対策が必要です。また、介護支援制度の導入や、子育て世代への柔軟な働き方の提供など、社員一人ひとりのライフステージに応じた施策が求められます。
このように、第7回全国家庭動向調査は、個人の価値観の多様性とその背景にある社会構造の変化を丹念に可視化するものです。企業の人事部門がこうしたデータを読み解き、採用や労務管理に活かしていくことは、これからの時代の持続可能な組織運営において欠かせない視点となるでしょう。
⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ