2025年3月23日
労務・人事ニュース
景況DIマイナス33!ロシア市場の冷え込みが日系企業に与える影響
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ロシア・ウクライナ情勢下におけるロシア進出日系企業アンケート調査結果 (2025年2月)(JETRO)
2025年2月、ジェトロが実施したロシア進出日系企業に対するアンケート調査では、ロシア・ウクライナ情勢が継続する中、各企業が直面している課題や今後の展望について詳しいデータが得られた。本調査はモスクワ・ジャパンクラブ加盟の130社・団体を対象とし、67社・団体が回答した。調査の結果からは、企業の事業継続の難しさや、ロシア市場の不確実性に対する懸念が鮮明に浮かび上がった。
調査結果によると、ロシアでの事業を「通常どおり」継続している企業の割合は35.8%であったが、「一部事業(操業)の停止」と回答した企業も同じく35.8%となった。また、「全面的な事業(操業)停止(いわゆる休眠を含む)」が20.9%となり、これらを合計すると、何らかの形で事業を停止している企業は全体の56.7%に上ることが分かった。2024年2月の調査と比較すると、事業停止の割合は3.6ポイント減少しているが、依然として半数以上の企業が事業継続に困難を感じている状況である。
事業停止の要因については、「レピュテーションリスクの回避を目的とした事業活動の自粛」が最も多く57.9%に達した。次いで「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」が55.3%、「本社・在欧統括会社などの対ロビジネス方針の変更」が42.1%と続いた。特に、決済や資金移動の困難を理由に挙げた企業の割合が増加しており、ロシア国内外の決済環境の厳しさが浮き彫りになった。
ロシア事業を停止した企業が取った対応としては、「ロシア拠点で完結した資金運営」が26.3%と最も多く、次いで「輸出管理遵守に向けた取引商品の見直し」および「ロシア国内もしくはロシアの友好国で完結するサプライチェーンの構築」がともに15.8%となった。一方、2024年2月の調査では上位であった「取引相手国・地域の見直し」や「ロシア拠点のグローバルサプライチェーンからの除外」を選択した企業の割合は減少しており、企業の対応が変化していることが分かる。
今回の調査では、「撤退済み・撤退の手続き中」と回答した企業の割合は3.0%(2社)であった。撤退した企業が選択した方法としては「事業売却せず事業の清算のみ」が挙げられ、撤退の外部要因としては「物流・調達面での困難」や「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が挙げられた。また、内部要因として「レピュテーションリスクの回避」が重要視されていた。
一方で、今後の事業展開に関しては、「維持」と回答した企業が62.7%と最も多かった。これは、現状の事業規模を維持しながら情勢を注視する企業が多いことを示している。また、「拡大」と回答した企業が6.0%と、2024年5月の調査以降ゼロだった「拡大」の選択肢が復活した点は注目に値する。しかし、この「拡大」の回答は、停戦や和平が前提となっていることが明らかになっており、現状の厳しい国際情勢の中での積極的な事業拡大を意味するものではない。
ロシアでの事業継続において企業が直面している主な困難として、「日本政府による対ロ制裁(日本からの輸出禁止)」および「決済の困難(ロシア国内外との決済)」がいずれも79.2%と高い割合を占めた。これに続いて、「日本を除く西側諸国による対ロ制裁(製品・サービスの輸出入制限)」が66.7%、「資金移動の困難(ロシア国内外の資金移動)」が62.5%となっており、制裁や金融面での制約が事業継続の大きな障壁となっていることが分かる。
企業の景況感に関しては、直近の自社の景況DI(ディフュージョン・インデックス)はマイナス33、2カ月後の景況見通しDIはマイナス31となり、2024年11月調査と比較するとわずかに改善した。しかし、依然としてマイナス圏にとどまっており、ロシアの中小企業を中心に資金が回らず購買力が低下していることなど、市場の冷え込みに関する懸念が多く寄せられた。
今後、ロシア事業を再開するために必要な要因として最も優先度が高いとされたのは「日本の対ロ制裁解除」と「停戦」で、それぞれ34.3%の企業が挙げた。次いで「日本以外の欧米などの対ロ制裁解除」が16.4%、「レピュテーションリスクが生じない雰囲気の醸成」が14.9%となった。この結果から、企業が事業再開に慎重であり、国際情勢の大きな転換がなければ積極的な動きにはつながらないことが分かる。
今回の調査を総合すると、ロシア進出日系企業の多くが事業を維持する姿勢をとりつつも、今後の事業展開について慎重な判断をしていることがうかがえる。特に、ロシア市場の不確実性、制裁の影響、決済の問題などが依然として大きな課題となっており、企業はその対応に苦慮している。一方で、わずかながら事業拡大を視野に入れる企業も現れ始めており、今後の国際情勢の変化が企業の意思決定に大きく影響を与えると考えられる。
⇒ 詳しくは独立行政法人日本貿易振興機構のWEBサイトへ