2025年3月23日
労務・人事ニュース
地方・小規模企業の4社に1社が「対応不可能」、最低賃金1,500円の政府目標が経営に与える影響
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最終更新: 2025年5月1日 22:32
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最終更新: 2025年5月1日 11:34
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最低賃金7.3%引上げで地方企業の2割が休廃業を検討、中小企業経営者の悲痛な叫びとは
日本商工会議所と東京商工会議所は、中小企業を対象に最低賃金の影響を調査し、その結果を公表した。本調査は、2024年度の最低賃金引上げによる影響と、政府が掲げる「2020年代中に全国加重平均1,500円」という新たな最低賃金目標に対する企業の受け止めを把握することを目的として実施された。調査には全国の3,958社が回答し、東京23区や政令指定都市の都市部(601社)と、それ以外の地方企業(3,357社)に分けて分析された。
調査の結果、最低賃金の引上げは、特に地方の中小企業に大きな負担を与えていることが明らかになった。2024年の最低賃金改定により、「最低賃金を下回る従業員がいたため、賃金を引き上げた」と回答した企業は全体の44.3%に達した。特に地方ではその割合が46.4%に上り、都市部の32.4%を大きく上回る結果となった。また、最低賃金の負担感について、「大いに負担」または「多少は負担」と回答した企業の割合は、都市部が67.9%であったのに対し、地方では77.5%と約8割に達した。これは、地方において最低賃金の引上げが経営に与える影響が都市部よりも深刻であることを示している。
さらに、政府の新たな最低賃金目標についての調査では、地方や小規模企業の4社に1社(25.1%)が「対応は不可能」と回答し、全体では「対応は不可能」または「対応は困難」と答えた企業が74.2%に上った。また、政府目標どおりに2025年度から7.3%の最低賃金引上げが行われた場合、地方・小規模企業の2割(20.1%)が「事業継続が困難で休廃業を検討する」と回答しており、この水準の引上げが中小企業にとって致命的な打撃となる可能性を示唆している。
最低賃金の引上げに対応するための企業の対応策としては、賃上げに必要な人件費の増加分を製品・サービスの価格に転嫁する動きが見られるが、その割合は26.9%にとどまり、特に地方の企業では25.0%とさらに低い数値となった。一方で、「具体的な対応が取れず、収益を圧迫している」との回答は全体で31.4%に達し、地方の企業では34.5%とさらに高かった。この結果から、最低賃金の引上げが企業の収益構造に深刻な影響を与えていることが浮き彫りになっている。
また、業種別に見ると、宿泊・飲食業(59.8%)、医療・福祉・介護業(60.3%)、運輸業(56.2%)、製造業(55.6%)、小売業(55.5%)の各業種において、最低賃金を下回る従業員がいたために賃金を引き上げた企業の割合が全体平均(44.3%)を大きく上回る結果となった。特に、労働集約型の業種において最低賃金の引上げが経営の大きな負担となっている。
政府目標に対応できる最低賃金引上げの水準については、「年平均1%未満」から「年平均3%程度」と回答した企業の合計が約7割(67.9%)となった。一方で、政府目標どおりの「7.3%」の引上げに対応できると回答した企業はわずか1.0%に過ぎず、多くの中小企業が現行の政府目標に対して強い懸念を抱いていることが分かった。
最低賃金引上げへの対応策として、政府に求める支援策についての調査では、「税・社会保険料負担等の軽減」を求める声が最も多く、77.5%に達した。また、「助成金の拡充・使い勝手の向上」(45.4%)、「取引価格の適正化・円滑な価格転嫁」(44.4%)、「景気対策を通じた企業業績の向上」(43.4%)といった要望が続いた。このことから、中小企業は最低賃金の引上げによる経営負担を軽減するため、税制面や助成金の拡充、取引環境の整備などの政策的支援を強く求めていることが明らかとなった。
本調査結果は、中小企業にとって最低賃金の引上げが事業継続の大きなリスクとなることを示しており、特に地方や小規模企業においてはその影響が深刻であることが分かった。最低賃金の引上げは、賃金水準の向上を目的とした施策であるが、企業の経営基盤の強化や、価格転嫁を可能にする市場環境の整備が伴わなければ、結果として企業の廃業や雇用の縮小につながる可能性がある。今後、政府は最低賃金引上げのスケジュールやその影響について、より慎重な議論を進めることが求められる。
⇒ 詳しくは東京商工会議所のWEBサイトへ