2025年4月16日
労務・人事ニュース
生産者の米在庫が前年比9万トン増、分散流通の進行で在庫管理人材の需要高まる(令和7年1月末現在)
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最終更新: 2025年5月1日 11:33
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最終更新: 2025年5月1日 11:34
米穀の生産者・小規模事業者の在庫数量等に関する調査結果の公表について(農水省)
令和7年3月31日に農林水産省から発表された「米穀の生産者・小規模事業者の在庫数量等に関する調査結果(令和7年1月末現在)」によって、日本の米の流通構造における実態と新たな課題が明確に浮き彫りになった。今回の調査は、主に生産者や小規模な集荷業者・卸売業者を対象として実施されたもので、従来から行われてきた大規模事業者の在庫把握に加え、より細かいレベルでの実態把握を目的として行われた点に大きな意義がある。調査対象は、生産者641者への聞き取り、500トン以上4,000トン未満の卸売業者382者、300トン以上の集荷業者・卸売業者643者であり、悉皆調査という形で網羅的に行われた点が特徴である。
調査結果によれば、令和7年1月末時点における全国の米の収穫量は6,792千トンで、前年同月比で182千トン、つまり約2.7%の増加が確認された。一方で、集荷業者への出荷量は2,992千トンと、前年から307千トン、約9.3%の減少となっており、これが円滑な流通に支障をきたしている主な要因として挙げられている。この傾向はJA系統などの既存の集荷ルートから、EC販売や地域内流通などの多様な販売チャネルへと出荷先が分散していることを如実に表している。
注目すべきは、生産者による直接販売等の出荷量が2,366千トンと、前年から444千トンもの増加を記録した点である。これは前年比で23%の増加に相当し、農家が自ら流通経路を確保し、直接消費者や小売業者に販売する動きが加速していることを示している。EC市場の拡大やふるさと納税の普及も背景にあり、こうした変化は農業経営における自立性向上の兆しとして歓迎される一方で、従来型の集荷体制に依存していた流通モデルの見直しを迫るものでもある。
令和7年1月末時点の在庫量は1,017千トンで、前年より93千トン、約10%の増加となっている。在庫量の増加は流通の滞留や価格調整への影響も懸念される要素であり、需給バランスの再評価が求められている。生産者の作付面積に関しても、前年の10,720ヘクタールから11,472ヘクタールへと拡大しており、生産意欲の維持・向上が反映されていることが分かる。
また、500トン以上4,000トン未満の卸売業者の在庫量は156,345トンで、前年から1,526トン、約1%の微増にとどまった。一方で、300トン以上の集荷業者・卸売業者における在庫量は45,387トンと、前年から7,482トンの減少、比率にして約14.2%の減となっている。このように、規模に応じた在庫動向にも明確な差異が生じており、物流体制や需要予測の精度向上が今後の課題として浮上してくる。
集荷構造の変化により、大規模な集荷業者への依存度が低下しつつある現状では、生産者がより柔軟に流通戦略を構築する能力が求められている。特に小規模事業者においては、販路の多様化に対応できる情報発信力やマーケティング能力、さらに在庫管理体制の強化が経営の持続性を左右する鍵となる。
今回の調査結果からは、米穀の供給における新たな局面が見えてくる。例えば、生産量が18万トン増加したにもかかわらず、集荷業者への出荷は前年より31万トン減少しており、そのうち23万トンは5,000トン以上の事業者からの出荷減によるものである。つまり、大規模事業者を通さずに流通した米が大幅に増加していることになる。また、卸売業者等の在庫として3万トン、消費者段階の在庫として4万トンが新たに加わったと推計されている。これらは直接販売やインターネット通販のような新たなルートによって流通した結果と考えられ、今後もこの傾向は継続・拡大していく可能性が高い。
農政の観点からは、これまでの米の需給調整施策が、こうした多様な流通ルートに十分対応できていない現状を見直す必要がある。一方で、消費者ニーズの変化や食生活の多様化、国産米への信頼感といった要素をうまく活用することで、農業経営の自由度を高める可能性も秘めている。今後の政策設計では、集荷構造の柔軟化と需給管理の精緻化を両立させる視点が欠かせない。
企業の採用担当者にとっても、こうした統計から得られる示唆は重要である。たとえば、農業分野におけるデジタル化やマーケティングのニーズの高まりに対応できる人材、または物流戦略に長けた人材、さらに地域資源のブランディングを推進できる企画職など、これまでとは異なるスキルセットが求められつつある。また、流通の多様化に伴って、農産品取引における法務・品質管理・在庫管理の高度化が求められる場面も増えており、そうした分野における専門人材の育成と確保が、今後の競争力に直結していくと予測される。
⇒ 詳しくは農林水産省のWEBサイトへ