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2025年4月12日

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錨泊中のLNG燃料補給が正式に可能に、ガイドライン改定で風速5m以下・波高1m以下など条件明記

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錨泊中の船舶へLNG燃料補給ができるようLNGバンカリングガイドラインが改定されました ~安全かつ円滑なLNG燃料補給の実施に向けて~(国交省)

令和7年3月27日、国土交通省海事局海洋・環境政策課は、錨泊中のLNG(液化天然ガス)燃料船への燃料補給、いわゆるLNGバンカリングを安全かつ円滑に実施するための新たなルールを盛り込んだ「LNGバンカリングガイドライン」の改定を発表しました。この改定は、我が国の港湾において今後ますます増加が予想されるLNG燃料船の受け入れ体制の強化を目的とし、国際的なカーボンニュートラルへの対応、並びに国内海運業界の脱炭素化促進の観点から、極めて重要な一歩と位置づけられています。

LNGは、従来の重油などと比べて硫黄酸化物(SOx)や窒素酸化物(NOx)、二酸化炭素(CO2)といった温室効果ガスや大気汚染物質の排出が少なく、次世代のクリーンエネルギーとして世界的にも注目されています。特に、海運業界では2020年の国際海事機関(IMO)による硫黄分規制強化を契機に、LNG燃料を用いた船舶の導入が加速しています。実際、LNG燃料船の建造は世界各国で増加の一途をたどっており、日本においてもLNGを燃料とする大型コンテナ船やフェリーの発注・運航が進んでいます。

こうした背景を踏まえ、国土交通省は2013年にLNGバンカリングガイドラインを策定し、国内でのLNG燃料供給体制の整備を進めてきましたが、この度の改定では、錨泊中、つまり港内でアンカーを打って停泊している状態での燃料供給を正式に認めるための条件が新たに追加されました。この措置は、入出港の混雑や岸壁の制約といった実務上の課題を解消し、より柔軟な燃料供給体制を構築するためのものであり、実運航に携わる事業者からも強く要望されていた項目でした。

今回のガイドライン改定では、安全性を最優先に据えた運用条件が明確に定められています。まず、気象海象条件については、風速が5メートル毎秒以下、波高が1メートル以下、視程が500メートル以上であることが求められています。これは、LNGが極低温で貯蔵・移送される性質上、わずかな船体の動揺や揺れが接続ホースや設備に大きな影響を及ぼすためであり、慎重なオペレーション管理が不可欠であることを示しています。また、錨泊中の係留状態に関しては、複数の係留索の長さや張力を均等に保ち、船体が安定するよう調整することが必要とされています。加えて、周囲に停泊中の他船舶がある場合の注意喚起や、安全確保のための係留索の常時監視なども推奨されています。

このような詳細なガイドラインの整備は、実務における不安を払拭し、LNGバンカリングの普及を加速させるうえで極めて意義深いものです。特に、岸壁を占有せずに燃料供給を行えるようになることで、港湾の利用効率が大きく向上し、港の混雑緩和や着岸時間の短縮による輸送の効率化が期待されます。企業にとっては、船舶の回転率向上やスケジュール調整の柔軟性が得られるなど、コスト削減や生産性向上にも直結するメリットがあります。

さらに、港湾におけるLNG供給体制の多様化は、燃料調達の安定性確保にも貢献します。現在、LNGバンカリングは主に岸壁に係留した状態で行われていますが、錨泊中の供給が可能となることで、バンカー船の稼働効率も高まり、バンカリングサービスを展開する事業者の経営安定にも資するものとなります。

こうした制度的整備を背景に、今後はLNG燃料船を運航する船社のみならず、造船業界やエネルギー供給事業者、港湾運営企業など、海運業界全体にわたる関係者の連携がますます重要になります。特に、バンカリングのオペレーションに携わる人材には、LNGの物理的特性や安全管理に関する専門知識が求められ、訓練と資格取得を通じた育成が喫緊の課題とされています。企業の採用担当者にとっても、今後この分野で求められる人材像を明確に捉え、社内教育体制の構築や中長期的な人材育成計画に反映させることが必要となります。

環境規制の強化とエネルギー転換の潮流の中で、LNGは今後10年、20年にわたり船舶燃料として主力のひとつであり続ける可能性があります。今回のガイドライン改定は、そうした未来を見据えた施策の一環であり、日本の港湾と海運業界が持続可能な形で国際競争力を維持・強化していくための基盤づくりといえるでしょう。今後、LNGに続いてメタノールやアンモニアといった次世代燃料のバンカリング体制整備も議論されていく中で、本ガイドラインの運用とその成果は、その先行事例として大きな意味を持つことになります。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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