労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 介護サービス受給者数478万人、費用総額1兆円超え(介護給付費等実態統計月報 令和6年11月審査分)

2025年4月11日

労務・人事ニュース

介護サービス受給者数478万人、費用総額1兆円超え(介護給付費等実態統計月報 令和6年11月審査分)

Sponsored by 求人ボックス

介護給付費等実態統計月報(令和6年11月審査分)(厚労省)

令和6年11月分として公表された介護給付費等実態統計の結果によると、介護を取り巻く社会的ニーズの高まりと制度利用の広がりが一層鮮明になっている。特に高齢化が進行する中で、要支援・要介護の認定を受けて介護予防サービスや介護サービスを受給している人数が前年に比べて増加していることは、今後の福祉人材確保や地域包括ケア体制の強化に直結する情報である。企業の採用担当者にとっては、これらの動向が介護分野における人材需要の拡大を予見させるものであり、ヘルスケア業界全体への人材供給戦略を再考する契機ともなるだろう。

まず、令和6年11月の審査分における全国の介護予防サービス受給者数は95万8,600人に達し、前年同月比で5.8%の増加となった。これは高齢者が要介護状態になることを未然に防ぐ「要支援1」「要支援2」などの段階でサービスを利用する人々が確実に増えていることを意味する。「要支援1」に分類された受給者は38万2,600人で前年より6.0%の増加、「要支援2」は57万1,900人で5.6%増という結果である。これらの数字は、介護予防におけるサービス提供体制が整いつつあり、利用者にとってアクセス可能な状態が着実に広がっていることを示している。

一方、より重度の状態にある人が利用する介護サービスの受給者数は、478万5,800人にのぼり、前年同月から1.4%の増加となった。中でも「要介護1」が127万9,400人、「要介護2」が115万2,600人、「要介護3」が91万8,800人と、比較的軽度から中度の要介護者の人数が全体を押し上げている。とりわけ「要介護2」の伸び率は2.6%であり、他の階層よりも顕著な増加が見られた。これに対して、最重度の「要介護5」は前年よりも減少しており、55万7,900人で前年から1.3%のマイナスという結果である。このことから、重度化を防ぎ、より自立した生活を支援する介護サービスのあり方が徐々に成果を見せているとも捉えることができる。

受給者の利用形態別に見ると、「居宅サービス」の利用者は352万8,600人、「地域密着型サービス」が98万4,100人、「施設サービス」が94万2,200人となっており、居宅サービスの比率が最も高い。これは高齢者が可能な限り自宅での生活を継続できるよう支援するという地域包括ケアの理念が、実際の制度運用の中でも反映されていることを物語っている。企業が介護支援制度を社内で設計する際、在宅介護との両立支援を想定した柔軟な働き方や休暇制度の導入は今後ますます重要になってくるだろう。

次に費用面の分析を行うと、介護予防サービスにかかる費用額は273億8,100万円で、前年同月に比べて8.0%の増加となった。これはサービス利用者が増加したことに加え、1人当たりのサービス費用も上昇していることが一因である。実際、受給者1人当たりの費用額は2万8,600円で、前年から2.1%増加している。介護サービスに関してはさらに規模が大きく、費用総額は1兆15億6,000万円にのぼり、前年同月比で4.8%の増加を記録している。受給者1人当たりに換算すると、1人当たり月額20万9,300円が支出されており、前年よりも3.4%増加している。介護保険財政や自治体の給付負担を考慮すると、介護分野における費用の増加は今後の制度設計にも大きな影響を与えると同時に、人材確保とサービスの効率化を進めるためのテクノロジー活用、業務改革などの対応が求められてくる。

また、サービス別の受給者動向を見ると、居宅サービスでは「訪問介護」「通所介護」「訪問看護」などの需要が依然として高く、地域密着型サービスでは「認知症対応型共同生活介護」や「小規模多機能型居宅介護」が安定した受給者数を維持している。一方、施設サービスに関しては「介護老人福祉施設」や「介護老人保健施設」の利用が減少傾向にあり、重度要介護者の施設依存から在宅支援への移行が段階的に進められていることが分かる。これは国の施策が「できる限り住み慣れた地域での生活の継続」を重視している流れとも一致しており、今後もこの方針が継続される見込みである。

こうした状況は、介護業界全体としての人材需要が増加することを意味する。特に訪問介護や通所介護など、地域を支える在宅系サービスは人手不足が顕著であり、企業としてもこの分野への人材供給を視野に入れる必要がある。介護福祉士やホームヘルパーなど専門職だけでなく、サービス管理者、運営スタッフ、相談支援員などの関連職種においても採用強化が求められる場面が増えていくであろう。

介護の需要が高まる一方で、その質と量を確保するには、雇用の多様化と働き方の柔軟性がカギとなる。短時間勤務、兼業・副業の許容、外国人労働者の活用など、従来の枠組みを超えた採用・労働制度の設計が急務である。企業の採用担当者にとっては、介護を必要とする社員やその家族に対する支援体制の整備と同時に、今後のヘルスケア市場で求められる人材像を的確に捉え、積極的に連携を図る視点が重要である。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ