労務・人事ニュース

観光と買い物が融合、56のサービスを巡る桜パスポートで地域回遊を促進

山形県天童市では、春の訪れとともに街全体が華やぐ「天童桜まつり」に合わせて、市内の魅力を再発見しながら楽しめる特別な取り組みが始まっています。天童商工会議所観光部会が中心となって実施している「桜パスポート」は、まちなかの商店や施設を巡ることでお得なサービスが受けられる地域回遊型のキャンペーンであり、市民や観光客の双方にとって魅力ある仕組みとなっています。2025年度版の桜パスポートは、4月上旬に発行され、今年は天童市内の温泉施設、ホテル、飲食店など56店舗が参加しています。このパスポートを提示することで、各店舗独自の割引やプレゼント、限定メニューなどのサービスを受けられるため、地域活性化と観光振興を両立する重要な地域事業として注目を集めています。

桜パスポートの配布は、毎年春の一大イベント「天童桜まつり」の開催に合わせて行われており、本年も人間将棋や桜のライトアップなどと連動する形で、まちなかを一体とした賑わいづくりが展開されています。人間将棋は全国的にも有名な観光イベントであり、多くの観光客を惹きつけるコンテンツですが、そこに地元の商店街や観光施設が加わることで、まち全体をステージにした「体験型観光」が実現されています。桜パスポートを片手に街を巡ることで、観光客にとっては天童の魅力を五感で感じられる機会となり、地元住民にとっては普段訪れないエリアや店舗に足を運ぶきっかけとなっています。

パスポートの利用方法は極めてシンプルで、紙の冊子版またはスマートフォン等でWeb画面を提示するだけで利用が可能です。対象店舗ごとに設定されたサービス内容は多岐にわたっており、温泉施設での入浴割引やホテルでの特別プランの提供、飲食店でのワンドリンクサービス、スイーツショップでの季節限定商品のプレゼントなど、参加者にとってはまさに「お得尽くし」のキャンペーンです。利用期限は令和7年5月6日までとされており、ゴールデンウィーク期間中の旅行やお出かけの際に大いに活用することができます。

このような地域振興策は、地元企業や商店にとっても大きなメリットをもたらします。観光客の回遊性が高まることにより売上向上が期待できるほか、店舗の存在や商品を新たな層に知ってもらえる機会としても有効です。特に、パスポートを通じた「お試し利用」は、今後のリピーター獲得や顧客層の拡大につながる可能性があり、参加企業にとっては持続的な事業成長を支える基盤ともなり得ます。また、商工会議所が主体となって統一ブランドとして情報を発信することで、個々の店では難しい広報効果も期待され、地域全体での相乗効果が生まれています。

こうした施策は、単なる観光企画にとどまらず、地域ブランディングの一環としても高い評価を受けています。参加する企業や店舗にとっては、地域と連携しながら自社の価値を再発見し、それを消費者に届ける手段ともなります。地域貢献という社会的責任を果たすと同時に、実利を得られるこうした取り組みは、近年のESG経営やCSV（共通価値の創造）といった概念にも通じるものがあり、持続可能な経営戦略の一環としても積極的に評価されています。

また、企業の採用担当者にとっても、このような地域イベントへの参画や協力は、社外への発信力強化の面で重要な意味を持ちます。特に、地元志向の若年層にとっては、地域に根差した企業活動に共感を持つ傾向が強まっており、「地域のために貢献している企業」「まちと一緒に歩んでいる会社」としての姿勢が、企業選びの大きな判断材料になることも少なくありません。自社が参加することで、地域とのつながりや企業文化を可視化でき、採用広報にもつながる有力な素材として活用することができます。

このように、桜パスポートは観光客にとっての利便性向上とともに、地域経済活性化、地元企業のブランディング、雇用促進といった多方面に好影響をもたらす優れた施策です。今後もこのような取り組みが継続され、さらなる展開が期待される中で、地元企業や行政、観光団体の連携による持続的な地域発展のモデルケースとして注目されていくことは間違いありません。

⇒ 詳しくは天童商工会議所のWEBサイトへ