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2025年4月27日

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潮位2090年想定で設計する時代へ、防波堤・岸壁・護岸の改良事例を国交省が公表

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「気候変動に対応した港湾の施設の設計事例集」の公表 ~平均海面水位の上昇や波高の増加等への対応を円滑化~(国交省)

国土交通省港湾局は、気候変動に対応した港湾施設の設計をより実務的かつ円滑に進めるため、令和6年4月に改正された「港湾の施設の技術上の基準」を踏まえ、具体的な設計事例を取りまとめた「気候変動に対応した港湾の施設の設計事例集」を令和7年4月7日に公表しました。この取り組みは、近年の気候変動による自然災害の激甚化・頻発化に対応し、港湾インフラの安全性と機能を確保することを目的としており、将来の海面上昇や高波、高潮といった外力変化に備えた施設整備の一助とされます。特に本事例集は、防波堤、岸壁、護岸といった港湾の基幹施設に対し、気候変動を考慮した設計手法や設計条件の設定方法をわかりやすく解説しており、設計の現場における実用的な支援資料として位置づけられています。

港湾施設は、物流、エネルギー供給、国際貿易など我が国の産業基盤を支える重要な社会インフラであると同時に、災害時の避難や救援活動の拠点としても極めて重要な役割を果たします。しかし、気候変動によってもたらされる外力、たとえば平均海面水位の上昇や波高の増加、高潮の頻発といった事象は、従来の設計基準では対応しきれないリスクを孕んでおり、新たな設計基準に基づく適応策の導入が急務となっていました。今回公表された設計事例集では、潮位や波高、暴風など将来の気象・海象条件の変化を踏まえた上で、構造物の断面や配置、性能照査に至るまでの具体的なプロセスが体系的に紹介されています。

たとえば、防波堤に関しては、既設構造に対して高波対策を施した改良事例や、上部工の嵩上げによって順応的な適応策を講じた設計例が挙げられており、これは今後全国の港湾において広く参考にされるものと見られています。護岸についても、既存施設に対して嵩上げ改良を施し、上部工を差筋によって一体化させることで安定性と耐久性を向上させた事例が紹介されており、老朽化対策としても非常に実用的な知見が詰まっています。これらの事例は、実際の港湾環境において気候変動の影響を受けると想定される将来の期間や外力条件を明確に設定したうえで、それに基づいた設計条件を導出している点に大きな特徴があります。

具体的には、1995年を基準年とし、設計対象期間の末年を21世紀末の2090年と設定することで、約100年後までの将来作用(設計潮位)を見越した構造計画を可能にしています。これは「設計共用期間」という概念を導入し、構造物が持続的に安全性を確保できるようにするための新たな設計手法といえます。さらに、気候変動適応策としては、構造の改良だけではなく、使用条件や維持管理計画の見直しといったソフト面での対応も併せて検討されており、総合的なインフラ整備の指針として有効です。

今回の設計事例集では、作用の評価や性能照査の考え方にも詳しく触れられており、たとえば波力、風力、地震力といった複数の外力の組み合わせをどのように評価し、設計の安全率を確保するかについての実践的なアプローチが示されています。さらに、今後も気候変動の影響に関する知見が蓄積されていく中で、本事例集も継続的に更新される予定であり、設計基準や実務における柔軟な対応が期待されています。

企業の採用担当者にとって、こうした取り組みは直接的な人材戦略に結びつく重要なトピックでもあります。港湾施設に関わる技術者はもちろん、気候変動リスクを見据えた防災計画やインフラ整備に精通した人材への需要は年々高まっており、今回のような技術動向を踏まえた上で、専門知識を有する人材の確保や育成を進める必要があります。特に、防波堤や護岸といった沿岸インフラの維持管理や再設計は、地場産業とも密接に関わる分野であり、地域雇用の創出や技術継承の観点からも注目される分野となっています。

さらに、港湾はエネルギー輸送や食品物流の基盤でもあることから、インフラの強靭化はサプライチェーン全体の安定にも直結します。今後、企業活動の安定性やBCP(事業継続計画)への意識がより高まる中で、気候変動対応に関する知見を持つ技術者やプランナー、アナリストの採用は、企業の競争力を左右する重要なファクターとなるでしょう。加えて、ESG経営やSDGs対応の一環として、環境変化への対応力を評価指標とする投資家や取引先も増えており、こうした分野に対する理解と関与を示すことが企業の価値向上にもつながると考えられます。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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