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2025年4月26日

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実質賃金が前年同月比マイナス2.8%、名目上昇でも生活改善実感に至らず(令和7年1月分結果確報)

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毎月勤労統計調査 令和7年1月分結果確報(厚労省)

令和7年1月における毎月勤労統計調査の結果から、日本の労働市場における最新の賃金や労働時間の動向、さらにはパートタイム労働者の割合などについて、詳細な分析が可能となっています。企業の採用担当者にとっては、このような実態把握は、人件費設計や採用戦略の見直しに直結する極めて重要な指標です。特に今回は、一般労働者とパートタイム労働者の賃金差や労働時間の差異、さらに労働者数や雇用形態の変化が明確に示されており、雇用環境の多様化とともに、採用方針の柔軟な調整が求められる現実が浮き彫りとなっています。

まず注目すべきは、月間の現金給与総額が平均で292,468円と前年同月比で1.8%増加している点です。これは名目ベースでの増加であり、実際には物価の上昇により、実質賃金はマイナス2.8%と3か月連続で前年を下回っています。一般労働者の平均現金給与総額は376,626円で前年比2.0%の増加、パートタイム労働者は108,978円で4.3%の増加となっており、特にパート層においては労働単価の引き上げが続いていることが確認されます。しかしながら、実質賃金で見ると、一般労働者が2.4%減、パートタイム労働者も0.3%の減少と、生活実感の改善には至っていない状況です。

この背景には、消費者物価指数の上昇が影響しており、特にエネルギーや食品など生活に直結する分野での値上がりが家計を圧迫しています。そのため、企業が名目賃金を引き上げたとしても、実質的な所得向上には繋がらないという現象が続いています。企業の採用担当者にとっては、こうした状況の中でいかに優秀な人材を確保し、モチベーションを維持するかが大きな課題となります。

さらに、月間の実労働時間について見ると、就業形態全体での総実労働時間は128.5時間で前年比0.2%減少、所定内労働時間は119.0時間で同じく0.1%の減少となっており、全体としては労働時間の短縮傾向が見られます。特に注目すべきは、所定外労働時間、いわゆる残業時間が前年比1.0%の減少で9.5時間となっており、働き方改革の効果が表れ始めていると考えられます。一方で、パートタイム労働者の所定外労働時間は9.1%増加しており、労働力補填の役割が拡大していることを示唆しています。これにより、短時間勤務層での勤務負担が増加しつつあることも否定できません。

また、労働者数に関しては、常用雇用の総数が前年同月比で1.7%増加し、51,141千人となりました。特にパートタイム労働者は16,075千人で前年から3.5%増加し、全体に占める割合も31.43%と0.55ポイント上昇しています。これは統計を取り始めて以来、最も高い比率に近づいており、雇用形態の多様化がさらに進行していることを物語っています。企業としては、フルタイム雇用に頼らず、柔軟な雇用体系を取り入れる必要性が高まっていると言えるでしょう。

産業別に見た賃金の動きでは、電気・ガス業が559,254円と最も高く、前年比でも4.8%の上昇を記録しています。次いで、情報通信業が436,889円(4.6%増)、金融・保険業が429,212円(1.8%増)となっており、高付加価値サービス産業での人材確保競争が熾烈になっていることがうかがえます。一方、飲食サービス業では135,277円にとどまりつつも、前年比では4.4%の伸びとなっており、最低賃金の引き上げや求人難による人件費増加が反映された結果と考えられます。

特に注目すべきは、パートタイム労働者の時間当たり給与が1,395円となり、前年比で4.3%の増加となった点です。これは最低賃金の地域別引き上げが背景にあり、企業がパートタイマーの待遇改善を急速に進めていることを示しています。しかし、パートタイム労働者の中でも賃金上昇幅に産業間格差があり、電気・ガス業では14.5%、製造業では5.4%の伸びが見られたのに対し、教育・学習支援業ではマイナス1.1%となっており、業界ごとの採用難易度や人件費負担への対応力の差が浮き彫りとなっています。

このように、令和7年1月の勤労統計データは、名目賃金は上昇基調であるものの、実質賃金が依然としてマイナス圏にとどまっているという二面性を持ち、また雇用形態の変化や働き方改革の影響も顕著に現れた内容となっています。企業の採用担当者にとっては、こうしたデータを踏まえ、給与水準の見直しだけでなく、労働時間の最適化や柔軟な雇用形態への移行、パートタイマーや非正規雇用者への研修・育成策などを検討していくことが重要です。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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