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2025年5月19日

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「将来の職業が決まっている」中学生は35.8%、過去10年で7.2ポイント減少

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第14回21世紀出生児縦断調査(平成22年出生児)の概況 こどもが将来就きたい職業(厚労省)

厚生労働省の「第14回21世紀出生児縦断調査」は、平成22年に生まれた子どもたちが中学2年生となったタイミングで実施されたものであり、家庭環境や子どもの心理状態、進路意識に至るまで、多角的なデータが収集されています。その中でも注目すべきテーマのひとつが、「将来就きたい職業に対する意識」です。これは、将来のキャリア形成や社会への参画意識を形成するうえで極めて重要な指標であり、教育関係者や家庭のみならず、企業の採用担当者にとっても有益な視点を提供するものです。

今回の調査結果によると、平成22年出生児のうち「将来就きたい職業が決まっている」と回答した子どもの割合は35.8%にとどまりました。これは、比較対象である平成13年出生児の同調査時点における43.0%を7.2ポイント下回る結果となっており、過去10年間で子どもたちの職業選択に対する意識がやや希薄になっていることを示しています。これは単なる統計的な減少にとどまらず、現代の子どもたちが置かれている環境や社会的背景を反映していると考えられます。

現代の中学生が進路や職業に対する明確なビジョンを持ちにくくなっている背景には、いくつかの要因が挙げられます。第一に、社会の変化が非常に速く、職業の在り方そのものが大きく変わってきているという現実があります。デジタル化やAIの発展により、今ある職業が将来も存在するとは限らず、逆に今は存在していない職業が登場している可能性が高まっています。こうした変化の中で、将来に対する明確な見通しを持ちにくくなっていることは、子どもたちの不安や迷いを助長している可能性があります。

また、教育現場における進路指導のあり方にも一定の課題があると考えられます。かつては「医師になりたい」「教師になりたい」といった具体的な職業に対する憧れが強く、それが学習意欲にもつながっていましたが、現在では進路指導が「選択肢の幅を広げる」ことに重点を置いているため、かえって意思決定を難しくしている一面もあります。情報量の増加は選択肢を広げる一方で、子どもたちが自らの志向性を明確にするまでのプロセスを複雑にしています。

さらに、家庭環境や保護者の就業状況との関係性も調査対象とされており、「将来就きたい職業が決まっている」子どもと「決まっていない」子どもとの間で、両親の就業形態には大きな差が見られなかったという結果も出ています。具体的には、母親が「常勤」で働いている割合は、職業が決まっている子どもで34.2%、決まっていない子どもで32.5%とほぼ同水準であり、父親の就業状況についても「常勤」が77.4%と77.7%でほとんど差はありませんでした。これにより、保護者の就業形態と子どもの職業意識の間には、統計上の有意な関連性は見出せなかったということがわかります。つまり、親がフルタイムで働いているかどうかが、子どもの進路意識に直接的な影響を与えているとは言えないという点で、より複雑な要因が絡んでいることを示唆しています。

企業の採用担当者にとっては、こうした結果は将来の労働市場を見据えたうえで非常に参考になるはずです。まず、明確な職業意識を持たないまま社会に出てくる人材が今後増える可能性があることから、企業側が担うべき「キャリア形成の支援」の重要性がより高まるといえます。従業員が自分の将来像を描けるような教育研修制度やキャリアパスの可視化、さらには職務を超えたロールモデルとの交流の機会を設けることは、企業の人材育成戦略において欠かせない施策となるでしょう。

さらに、採用時においては、単に「志望動機」や「将来の夢」といった表層的な項目だけで判断するのではなく、本人がどのようにしてその職業観に至ったのか、どのような背景や経験がその意思に結びついているのかといったプロセスを重視することが求められます。将来に対して不確実性を抱えている若者にとって、入社後の環境こそが職業観を形成する最大の機会となることを、企業側も自覚すべき時代に入っているといえるでしょう。

また、企業が次世代に向けて果たすべき社会的責任も明確になってきます。たとえば、職場体験やインターンシップを通じて、リアルな働く現場に触れる機会を提供することは、若者のキャリア意識を育む有効な手段となります。このような取り組みは単にCSRの一環として評価されるだけでなく、将来の労働力を育てるという観点から、企業経営に直結する重要な戦略でもあります。

さらに、調査結果からは「就きたい職業が決まっていない」子どもが全体の過半数を超える62.3%にのぼるという実態も明らかになっており、これは平成13年出生児の56.3%と比べても高く、職業観の希薄化が進んでいることを如実に物語っています。このような背景の中で、企業には「働くことの意義」や「職業の価値」を社会に発信し、若年層に伝える役割が今まで以上に求められているといえるでしょう。

このように、厚生労働省の最新調査は、単に統計数値を示すものではなく、将来の日本社会を担う若者たちの価値観や志向性、さらには企業がその中で果たすべき役割に関する多くの示唆を含んでいます。人材の獲得が年々厳しさを増す中で、採用の在り方も「選ぶ」から「育てる」へと変化しつつあり、今後の採用戦略や人事施策を見直すうえで、こうした調査データは非常に有効な手がかりとなるはずです。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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