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2025年5月19日

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「継ぐスタ」成約80件のうち3割が県をまたいだ移住伴う承継、若手創業者の新潮流

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令和6年度「事業承継マッチング支援」実績について ~成約実績は160件超。うち、「継ぐスタ」による成約実績は40件超~(日本公庫)

2025年5月12日、日本政策金融公庫が発表した最新の「事業承継マッチング支援」に関する実績データによって、後継者不在が深刻化する中小企業の課題に対し、同公庫が積極的に対応している姿勢が浮き彫りとなりました。とくに令和6年度の成約件数が過去最多となる163件に達し、前年の103件から大きく増加した点は注目すべきポイントです。これは前年度比158.3%という著しい伸びを示しており、日本政策金融公庫による事業承継の支援体制が着実に実績を積み重ねてきていることの表れです。

事業承継の形態の一つとして注目を集めているのが、「継ぐスタ」と呼ばれる創業支援スキームです。これは、後継者不在の企業を第三者が受け継ぎ、創業と同時に事業運営を開始する新しいスタイルの創業形態を意味しています。令和6年度の実績によると、この「継ぐスタ」による成約は41件に上り、前年度から28.1%増加しました。累計では80件の成約が記録されており、地方創生や移住促進の観点からもその効果が期待されています。

成約先の属性を見ると、譲渡側企業のうち約3割が赤字企業であり、また年商5千万円以下の小規模事業者が約7割を占めています。これは、小規模であっても長年地域に根付いた企業が存続の危機に直面しており、その受け皿となる仕組みが確実に機能していることを示しています。また、譲渡価格に関しては、5百万円以下が全体の50%を占めており、比較的低い金額で事業を引き継げる可能性がある点も、創業を目指す個人や企業にとって魅力的な要素となっています。

一方で、「継ぐスタ」による成約事例では、より小規模な事業者が中心となっており、譲渡価格が5百万円以下の割合は61%に達しています。さらに、継ぐスタでの創業者の年齢を見ると、40代以下が約7割を占めており、比較的若い世代が地域に根付いた事業を引き継ぎ、第二のキャリアをスタートさせている実態が明らかになっています。とくに注目されるのは、継ぐスタによる成約のうち約3割が移住を伴う県をまたいだ成約であるという点です。これは、都市部から地方へ移住して事業を引き継ぐというライフスタイルの転換が進んでいる証でもあり、地域経済の持続性や雇用創出という観点からも極めて重要な動向と言えるでしょう。

また、日本政策金融公庫は全国152支店のネットワークを活かし、商工会議所や事業引継ぎ支援センターなどと連携しながら支援体制を拡充しており、その一環として「オープンネーム」による事業承継マッチングイベントを積極的に展開しています。このイベントは、後継者を求める企業が実名で事業内容を公表し、興味のある個人や企業との双方向コミュニケーションを可能にするオンライン開催形式で実施されています。令和6年度には全国13箇所で開催され、延べ1,698名の参加者を集め、48社の事業譲渡希望企業が登壇しました。これにより、より具体的なマッチング機会が提供され、成約件数の増加につながっています。

令和7年度には、このイベントを全国14箇所で開催予定であり、令和3年度からの累計では、すでに32箇所で開催された実績があります。そこに登壇した124社のうち、22社が成約に至っており、イベント自体の成果も着実に現れています。とくに注目すべき点は、このマッチングイベントが希少な「実名公募方式」を採用していることであり、透明性と信頼性を確保しながら、事業の魅力や継続性を直接訴求できることにあります。

このように、事業承継マッチング支援は、単なる経営のバトンタッチにとどまらず、地方の雇用維持や地域資源の継承、若手人材の地方移住促進といった多面的な社会的価値を生み出しています。企業の採用担当者にとっても、この動きは決して無関係ではなく、特に地方に拠点を持つ企業や中小規模事業者にとっては、潜在的な人材確保手段のひとつとして活用可能です。また、社内の事業承継候補者が見つからない場合には、こうしたマッチング支援の仕組みを活用して、第三者による事業承継を視野に入れることで、事業継続の可能性を高める選択肢が広がります。

さらに、M&Aに関心を持つ企業にとっても、このような支援制度は有力な手段となり得ます。特に、年商5千万円以下の事業者が中心であることから、比較的低コストで地域に根差したビジネスを取得できる可能性が高く、事業の多角化や新規事業への進出にも活用できます。企業の中長期的な成長戦略の一環として、事業承継支援は、従来の採用活動とは異なるアプローチによって人材確保や地域戦略を再構築する機会を提供しているのです。

⇒ 詳しくは日本政策金融公庫のWEBサイトへ

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