労務・人事ニュース

  • TOP
  • お知らせ
  • 労務・人事ニュース
  • 自動化・AI活用が進む水田作経営、10年後の農業を見据えた人材像とは

2025年6月26日

労務・人事ニュース

自動化・AI活用が進む水田作経営、10年後の農業を見据えた人材像とは

Sponsored by 求人ボックス

農林水産研究イノベーション戦略2025を公表(農林水産技術会議)

令和7年6月6日、農林水産省は「農林水産研究イノベーション戦略2025」を正式に公表しました。この戦略は、同年4月に閣議決定された新たな「食料・農業・農村基本計画」に基づき策定されたものであり、今後の日本の農林水産業の方向性を決定づける重要な研究開発指針となっています。特に注目すべきは、同戦略が食料安全保障の強化と環境との調和を重視しており、技術開発を通じて持続可能な食料システムの実現を図る点です。

今回の戦略では、スマート農業機械の導入や、AIやIoTを活用した栽培管理システムなど、農業現場の生産性向上を目指す具体的な施策が強調されています。これにより、労働時間の短縮と収益性の向上が期待されており、農業の高齢化や担い手不足といった構造的課題の解決にも資するものです。特に、水田作などの大規模経営体では、これらの技術が導入されることで最大で30%以上の労働削減が可能になると試算されており、省力化と生産効率の両立が現実味を帯びてきています。

一方で、単に機械やシステムを導入するだけでは、農業経営全体の最適化にはつながりません。そこで戦略では、スマート育種支援システムの開発にも力を入れており、産学官が連携して品種開発に取り組む姿勢を明確にしています。たとえば、気候変動への対応として耐暑性や病害虫抵抗性を備えた新品種の開発が進められており、研究機関、大学、企業が一体となって実用化を急いでいます。このような協業による開発モデルは、農業分野におけるイノベーションの循環を加速させるものであり、日本の農産物の国際競争力強化にも直結します。

さらに、この戦略は技術開発だけでなく、農林水産業を支える制度的・構造的な基盤強化にも焦点を当てています。国立研究開発法人の機能強化はその一環であり、研究開発の現場と政策決定の場がより緊密に連携することを目指しています。また、農業系スタートアップ企業の支援体制も強化され、従来「魔の川」と称される研究から事業化への難所を乗り越えるための継続的な支援が用意されています。たとえば、プロトタイプ開発後の実証実験や市場投入段階での投資不足に対応するために、資金面・技術面の伴走支援を提供する仕組みが拡充されています。

このようにして形成される研究開発のプラットフォームは、民間企業のアイディアやニーズを出発点とした目的志向型のプロジェクトが中心となり、実際の農業経営課題に即した解決策がスピーディに実現されることが期待されています。たとえば、ドローンを活用した精密農業の現場では、AI解析と連動した害虫発生予測システムの運用が進められており、これにより農薬使用量の最適化やコスト削減が可能になってきています。

農林水産省では、これらの取り組みを「農業経営の将来像」として技術マップにまとめ、今後10年を見据えた成長ビジョンを明確にしています。たとえば、今後の水田作経営では、スマート田植機による自動作業化、環境センサーによるリアルタイム水管理、データ駆動型の収量予測といった技術が当たり前となる時代が想定されています。これは単なる自動化にとどまらず、経営判断を支援する情報基盤としての役割も果たすことになり、農業のマネジメント層に求められるスキルも変化していくことになります。

このような大きな技術革新の波の中で、企業の採用担当者が注目すべきポイントもいくつかあります。まず、今後は農業に関する技術職の採用が多様化し、従来の農学系だけでなく、情報工学、機械工学、AI開発などの理工系人材が求められる傾向が強まるでしょう。実際に、スマート農業システムの設計・運用には、農地におけるリアルタイムデータの解析や機械制御アルゴリズムの実装が不可欠であり、それらを担う人材の確保が農業機器メーカーや農業法人の競争力を左右する要素となっています。

加えて、スタートアップ支援の枠組みが強化されることにより、起業志向の若手技術者や研究者が農業分野に参入しやすくなる環境が整ってきています。これにより、従来のような安定志向にとどまらない、挑戦的なキャリアパスを志向する人材にも農林水産業界は魅力的なフィールドとなる可能性があります。とくに都市部の理系学生や研究開発職にとって、農業技術を通じて社会課題に挑むという社会的意義の大きな仕事が増えていくでしょう。

このように、「農林水産研究イノベーション戦略2025」は、単なる研究方針の提示にとどまらず、産業構造の変革を促す実効性ある枠組みとして注目されています。採用担当者にとっては、今後の人材ニーズの変化をいち早く捉え、他産業との競合も見据えた戦略的な人材確保が必要となる時代に入ったことを意味します。農業がテクノロジー産業へと進化を遂げる中で、企業が求めるべき人材像も大きく変わろうとしている今、本戦略は人材マネジメントの観点からも読み解くべき資料と言えるでしょう。

⇒ 詳しくは農林水産技術会議のWEBサイトへ

パコラ通販ライフ