2025年7月16日
労務・人事ニュース
医療費3.8兆円の減少が示す社会変化(令和6年度2月)
エラー内容: Bad Request - この条件での求人検索結果表示数が上限に達しました
最近の医療費の動向-MEDIAS- 令和6年度2月 最近の医療費の動向[概算医療費](厚労省)
令和6年度2月までの医療費に関する統計データが、厚生労働省保険局より発表されました。このデータは、審査支払機関が集計した診療報酬明細書を基に、医療保険および公費負担医療に関する医療費の実態を把握する目的で作成されたものです。今回の発表により、国内の医療提供体制や医療需要の変化、さらには高齢化の影響が具体的な数値として明らかになりました。
令和6年度2月における概算医療費は、全国で3.8兆円となり、前年同月と比べて1.7%減少しました。一方で、4月から2月までの累計では43.8兆円と、前年同期比で1.4%増加しており、長期的には医療費が増加傾向にあることがうかがえます。特に医科入院に関しては、6月から2月の期間で前年同期比3.0%増と顕著な伸びを示しており、高齢化に伴う入院需要の増大が背景にあると考えられます。
受診延日数、つまり医療機関を受診した日数の総計については、2月単月では前年同月比3.5%減と減少しましたが、4月から2月の累計では前年同期比0.3%増と微増となっています。これは、新型コロナウイルスの影響による受診控えが徐々に解消されつつある一方で、慢性疾患や高齢者の継続的な受診が続いているためと考えられます。1日当たりの医療費も同期間で1.1%増加しており、医療行為の高度化や単価の上昇が進んでいることがうかがえます。
診療種類別に見ると、医科入院の医療費が引き続き増加しています。特に令和6年度2月においては前年同月比で1.1%増、4月から2月では2.5%増となっており、急性期病院を中心とした医療提供体制が活発に稼働している様子が読み取れます。一方で、外来診療にあたる医科入院外については、2月単月で5.2%の減少、4月から2月の期間でも1.0%の減少となっており、軽症の患者が医療機関を訪れる頻度が低下している可能性があります。調剤費用についても、2月単月では3.8%減となり、薬剤管理や処方の適正化が進んでいることがうかがえます。
また、歯科医療に関しては比較的堅調な推移を示しており、4月から2月までの期間で3.2%の増加を記録しています。特に高齢者の歯科受診ニーズが高まっており、口腔ケアを通じた全身の健康維持が注目されていることが背景にあります。調剤を除く診療報酬全体で見た場合、診療費そのものは前年同期比で1.0%の増加にとどまっており、全体としては大きな急伸は見られないものの、着実な上昇傾向が継続しているといえるでしょう。
一人当たり医療費についても注目すべき動きがあります。令和6年度4月から2月までの全国平均では35.4万円となっており、前年同期比で1.8%の増加です。中でも後期高齢者である75歳以上の層では一人当たり89.0万円と、全体平均を大きく上回る水準に達しており、高齢化社会における医療費負担の実態を端的に示しています。被用者保険加入者本人の医療費は18.7万円、家族は17.7万円であり、比較的安定した数値を保っていますが、今後の高齢化の進展に伴い、より多くの人々が医療資源を必要とする構造は変わらないと見られます。
医療機関の種類別に見ても傾向がはっきりと現れています。公的病院や法人病院では、施設当たりの医療費が前年同期比でそれぞれ4.2%、1.8%の増加となっており、経営体制の強化や地域医療への貢献が評価されます。一方、個人病院や診療所では、診療単価の減少や受診者数の減少などから、微減または横ばいの傾向が見られました。
このような医療費の推移は、企業の人事・労務担当者にとっても無関係ではありません。特に従業員の健康管理や福利厚生制度に関わる医療保険料の設計に影響を与える可能性があり、今後の社会保障制度の改正や企業負担の増加にも備える必要があります。さらに、介護休業制度や健康経営の実践に向けた戦略を構築する際、実際の医療費動向を踏まえることが求められる場面も増えるでしょう。
また、職場における予防医療の推進や、メンタルヘルスケアの整備にもこの統計は一つの指標となります。医療費の抑制が国家的な課題となる中で、企業も健康経営の取り組みを通じて医療費の増加を防ぐ責任があると言えます。定期健診の実施や健康支援プログラムの提供は、従業員のQOL向上と医療費削減の両立を可能にする重要な施策です。
このように、令和6年度2月までの医療費に関する統計は、単に医療現場の状況を示すだけではなく、企業における人材戦略や福利厚生制度の再構築にも重要な視点を提供します。今後も政府は医療提供体制の効率化と持続可能性を模索しながら、予防医療や在宅医療への移行を進めると見られます。企業側もその変化を捉え、自社の人事・労務制度に反映させることで、より健全な経営基盤の構築が期待されます。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ