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2025年7月10日

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令和7年3月、介護予防サービス受給者が95万人超に増加し前年比4.2%アップ

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介護給付費等実態統計月報(令和7年3月審査分)(厚労省)

令和7年3月における介護給付費等実態統計月報の概要が発表され、日本全国の介護保険サービスの利用実態が明らかになりました。高齢化が加速する日本社会において、介護サービスの受給状況や費用の動向は、制度設計や人材確保、財政運営に直結する重要な指標であり、企業の人事戦略や地域の福祉政策にとっても見逃せない情報です。今回の統計からは、介護予防サービス・介護サービスともに利用者数が増加傾向にあることが示され、特に介護予防分野での伸びが顕著でした。

まず、介護予防サービスの受給者数は全国で95万9,000人となり、前年同月から4.2%増加しました。これは高齢者が要支援段階での早期対応を求めてサービスを活用する傾向が強まっていることを示しています。要支援1の受給者は38万3,800人で前年から5.0%増加、要支援2は57万800人で同3.6%の増加となっています。この伸びは、住み慣れた地域で自立した生活を続けたいという高齢者の意向や、介護予防に対する行政や医療機関の働きかけが奏功していることの表れと考えられます。

一方、より重度の介護を要する介護サービスの受給者数は471万2,000人で、前年同月比0.4%の増加にとどまりました。要介護1は126万5,500人で1.3%増、要介護2は114万400人で1.2%増となりましたが、要介護5では前年度から2.3%の減少が見られ、54万1,600人に留まりました。重度の要介護者の減少は、医療や介護の現場におけるリハビリテーションや介護予防施策の効果が出始めている可能性もあります。また、施設入所から在宅支援への移行を意識した政策の成果とも捉えることができます。

介護サービスの形態別では、居宅サービスの利用者数が347万300人で前年同月比0.8%増、施設サービスが92万4,600人で0.8%増、地域密着型サービスが97万人で0.2%増と、いずれも微増傾向を示しました。なかでも要介護1および2においては居宅サービスの増加が目立ち、高齢者が住み慣れた自宅で介護を受けながら生活を続ける選択をしていることが読み取れます。逆に要介護5では地域密着型サービスの利用者数が23万2,000人と、前年の24万2,400人から4.3%の減少を示しており、重度要介護者の地域支援体制には一定の課題が残っていることも浮き彫りとなりました。

次に、介護給付費の総額については、介護予防サービスで2,643億4,000万円、前年同月比5.1%の増加となりました。介護サービスの総費用は9兆544億4,000万円で、こちらは0.9%の増加です。受給者1人あたりの費用額で見ると、介護予防サービスが1人あたり2万7,600円で前年より0.9%増、介護サービスでは19万2,200円で同0.4%の増加となっており、全体として給付額の上昇が続いています。これは物価上昇や介護職員の人件費増などを反映した介護報酬の改定が影響していると考えられ、企業の介護分野参入や事業計画においては、これらの費用動向を的確に捉える必要があります。

特に注目されるのは、介護予防サービスの受給者数および費用額の伸びが、介護サービスよりも高い水準で推移している点です。これは高齢者が介護状態に陥る前に適切なサービスを受けることで、自立した生活を維持しやすくなるという政策的狙いと一致しています。その意味で、介護予防は今後の高齢社会を支える柱となる可能性が高く、自治体や医療機関との連携による地域包括ケア体制の充実が求められます。

また、要介護度別に見ると、要介護3および4の受給者数はほぼ横ばいながら微増傾向にあり、要介護3では90万3,100人、要介護4は86万1,300人となりました。これらの層に対応するサービスでは、身体的なケアだけでなく認知症対応や家族支援といった複合的な支援が必要とされるため、専門性の高い介護職員の確保やICTを活用した支援の導入が重要です。

このように令和7年3月時点での統計データは、日本の高齢者福祉政策が確実に前進していることを裏付けつつも、制度の持続性や人材の安定確保といった課題にも直面していることを示しています。企業にとっては、介護離職の防止や家族介護との両立支援を考慮した人事制度の設計が求められると同時に、介護関連市場への事業参入を検討する際には、制度の動向を把握することが極めて重要です。今後も国や自治体の政策変更や介護報酬改定に注目し、時代のニーズに応える柔軟な対応が、介護をめぐるあらゆる領域において求められていくでしょう。

⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ

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