2025年7月9日
労務・人事ニュース
【令和7年4月】全産業での入職率5.27%と離職率4.04%、人材流動性に見える市場の静かな変化
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看護師/北九州市八幡西区/筑豊香月駅/福岡県
最終更新: 2025年7月9日 06:34
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看護師/福岡県/大橋駅/福岡市南区
最終更新: 2025年7月9日 06:34
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看護師/福岡市東区/舞松原駅/福岡県
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看護師/北九州市八幡西区/福岡県/西山駅
最終更新: 2025年7月9日 06:34
毎月勤労統計調査 令和7年4月分結果確報 第3表 常用雇用及び労働異動率(厚労省)
令和7年4月に公表された毎月勤労統計調査の確報は、国内における雇用の現状と動向を詳細に示すものであり、企業の採用活動や人材戦略を支えるうえで非常に重要な情報源となります。とくに今回の調査では、常用雇用者数の増減、パートタイム労働者の構成比率、そして入職率・離職率の動きといった具体的な数値が産業別に整理されており、業界ごとの労働市場の実情が鮮明に映し出されています。こうした統計は、企業の採用担当者が人材確保に向けた施策を検討するうえで欠かせない参考資料となります。
まず、全体の調査産業計では、労働者総数が5148万1千人となり、前年同月比で1.7%の増加となっています。この数字は、雇用の基盤が引き続き拡大していることを示すものであり、景気回復や企業活動の活性化によって労働需要が高まっていることがうかがえます。また、パートタイム労働者の割合は31.04%で、前年より0.56ポイント増加しており、柔軟な働き方や非正規雇用の浸透が引き続き進行している実態が浮かび上がっています。入職率は5.27%で前年よりわずかに0.06ポイント低下、離職率は4.04%で0.13ポイントの減少となり、雇用の流動性はやや落ち着きを見せている傾向が見られます。
産業別に詳しく見ていくと、たとえば鉱業・採石業等では、労働者数が1万3千人と比較的小規模であるものの、パートタイム労働者の比率は6.36%と非常に低く、前年から5.74ポイントも上昇しています。この急激な比率の上昇は、限定的な労働力の中で柔軟な働き方を取り入れようとする動きが進んでいることを示していると考えられます。入職率は4.09%で前年より2.12ポイント増加しており、新たな人材の確保が活発に行われている一方、離職率は1.22%で前年より0.2ポイントの上昇にとどまっており、採用と定着の両方が一定の成果を上げている状況と読み取れます。
建設業では、労働者数が258万3千人で前年比2.7%の増加と、大規模な雇用の伸びが見られました。パート比率は5.24%で前年より0.67ポイント減少しており、非正規雇用の割合はあまり高くありません。入職率は3.74%で前年より0.56ポイント減少、離職率も2.18%で0.49ポイントの低下が見られ、全体として安定した雇用が保たれている印象です。この業界では専門技能や現場経験が重視されるため、雇用の安定性が高い傾向にありますが、採用難が続く中で人材の確保が今後の課題となることが予想されます。
製造業では、労働者数が769万8千人と非常に多く、わずか0.1%の減少が見られました。パートタイム比率は13.06%で前年より0.08ポイント上昇し、非正規雇用の一定の増加傾向が見られます。入職率は2.81%で前年より0.02ポイントの上昇、離職率は1.68%で前年より0.02ポイント減少と、ほぼ横ばいで推移しており、安定した人材の出入りが続いているといえます。製造業においては、高齢化が進む現場における人材の入れ替えが求められる一方で、新規就業者の確保が難航する場面もあることから、今後は多様な人材の登用がより重要になってくると予測されます。
電気・ガス業は、労働者数が26万7千人で前年同月比0.4%の微増にとどまりましたが、パートタイム労働者の比率は3.55%と全体の中でも非常に低い水準にあり、安定的な正規雇用が特徴の業界といえます。ただし、パート比率は前年より1.22ポイントの減少となっており、より正社員重視の傾向が強まっています。入職率は5.77%と比較的高めですが、前年より0.1ポイント減少しており、採用活動が一部で鈍化している可能性も示唆されます。離職率は4.77%で0.49ポイントの減少となり、職場の定着率がやや改善している点は注目に値します。
全体として、産業ごとの雇用状況には大きな違いがあり、これを理解することは採用戦略において非常に重要です。企業の採用担当者にとっては、業界全体のパートタイム比率や入職・離職の動向を把握することで、自社の採用状況が市場と比べてどのような位置にあるのかを客観的に分析することができます。とくに若年層の確保や女性・高齢者の活躍を促すうえでは、パートや時短といった柔軟な雇用形態の整備がますます求められており、それに対応した組織設計や雇用制度の構築が不可欠となっています。
また、入職率と離職率のバランスも注視すべきポイントです。入職率が高くても離職率も同様に高ければ、定着率の低さを意味することになり、採用コストの増大を招く恐れがあります。一方で、離職率が極端に低い場合には、組織の新陳代謝が鈍化している可能性もあるため、企業としては適切な流動性を維持する必要があります。令和7年4月の統計結果では、全体としてはやや離職率の低下が見られるものの、各業界の傾向は異なっており、採用・育成・定着の各ステップをバランスよく設計することが今後の人材戦略の鍵となるでしょう。
このように、毎月勤労統計調査の雇用に関するデータは、採用計画の策定や人材配置の見直しに活用できる実務的な情報に満ちています。定量的なデータをもとに、採用条件や労働環境の整備方針を再考することは、企業の持続的な成長と安定経営を実現するうえで極めて有効です。多様な働き方が進む現代において、柔軟性と安定性の両立を目指した雇用の在り方が、企業にとって新たな競争力の源となることは間違いありません。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ