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2025年7月13日

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令和7年5月の東京都有効求人倍率1.76倍

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一般職業紹介状況(令和7年5月分)(東京労働局)

令和7年5月の東京都における雇用動向について、東京労働局が公表した詳細な統計データをもとに、企業の採用担当者がどのように採用活動を見直すべきかについて、実務的かつ戦略的な観点から解説します。まず注目すべきは、東京都の有効求人倍率(季節調整値)が1.76倍であったという点です。これは求職者1人に対して約1.76件の求人があることを意味し、全国平均を大きく上回る水準であると同時に、東京の人手不足がいかに深刻かを物語っています。企業側としては、採用市場における競争が激化していることを前提に、従来の採用手法を再点検しなければなりません。

有効求人倍率が前月より0.03ポイント低下したとはいえ、これは小幅な変動に過ぎず、全体的な雇用需要の強さには変わりありません。むしろ、有効求人数が前年同月比で1.1%増加し、8か月連続で増加している点は、企業が引き続き人材を必要としている姿勢を如実に示しています。一方で、有効求職者数も前年同月比で1.8%増加しており、20か月連続で前年を上回っています。これらの数値から読み取れるのは、企業と求職者のニーズが同時に高まっているという状況であり、言い換えれば、より高度でマッチング精度の高い採用戦略が求められているということです。

特に注目すべきは新規求人倍率の動きです。季節調整値で3.41倍と高水準ではあるものの、前月より0.25ポイントの低下が見られました。これは新規求人数が117,007人で前年同月比9.7%減と大きく落ち込んだことが主な要因であり、3か月ぶりの減少となりました。業種別にみると、生活関連サービス業や運輸業・郵便業では求人が増加傾向にある一方、卸売業・小売業、宿泊業・飲食サービス業、製造業などでは大幅な求人減少が確認されています。特に卸売業・小売業の新規求人は前年同月比で35.5%減という深刻な落ち込みを示しており、消費動向や物価上昇による経営環境の変化が影響している可能性が高いです。

企業の採用担当者はこうしたデータをもとに、自社が属する業界の雇用動向を的確に把握し、それに即した人材戦略を展開する必要があります。特に今後の採用活動では、「数を集める」従来型の募集ではなく、「質の高い応募者といかに出会うか」に主軸を移すことが不可欠です。たとえば、自社の魅力を再定義し、求職者に明確かつ誠実に伝えるブランディング戦略の構築、あるいは柔軟な働き方を提示することで、幅広い人材層の応募を促進することが考えられます。

また、正社員に関するデータからも重要な示唆が得られます。東京都の正社員有効求人倍率(原数値)は1.15倍で、前年同月より0.05ポイント上昇しています。正社員の有効求人数も162,482人と前年同月比5.4%増で、49か月連続で増加しています。つまり企業は長期的な視野で人材を確保しようとする傾向が強まっているということです。特に注目すべきは、正社員求人の新規登録が前年同月比2.5%減とやや鈍化した一方で、全体の求人に占める割合は45.7%と高水準を維持している点です。このことからも、企業が非正規ではなく正規雇用にシフトしている動きが伺えます。

こうした流れを踏まえ、企業は正社員の採用においても競争力を高める努力が必要です。給与や待遇だけでなく、成長機会やキャリアパスの提示、企業文化との相性の良さを訴求することで、求職者から選ばれる企業へと進化することが求められています。特に東京都のような人材競争が激しい地域においては、単に人材を「雇う」だけでなく、「育てて活かす」という視点が中長期的に大きな差を生むでしょう。

加えて、就職件数の推移からも人材の流動性が読み取れます。全体の就職件数は6,767件で前年同月比3.5%減、うち正社員就職件数は2,051件で7.9%減少しています。この数字は、一見すると雇用環境の悪化を示しているようにも見えますが、むしろ求職者が企業選びに慎重になっていることや、企業とのミスマッチが依然として課題であることを示していると解釈するべきです。したがって、採用担当者は求人票の作成にあたり、業務内容や職場環境、キャリア展望などを具体的かつ誠実に記載し、求職者とのギャップを埋める努力を惜しんではなりません。

求人充足数が前年同月比で4.5%減少した点も見逃せません。これは企業が求人を出しても思うように人が集まらない現状を表しており、採用活動の工数やコストが従来よりも増していることを示唆しています。こうした中で重要になるのが採用後の定着支援です。せっかく採用した人材が早期に離職してしまうと、企業にとっては二重の損失です。研修制度やOJTの強化、メンタルヘルスケア体制の充実、上司や同僚との関係性の構築など、社内での「人材定着力」を高める取り組みが不可欠です。

結論として、令和7年5月時点の東京都の有効求人倍率1.76倍という数字は、企業にとって採用活動の強化が喫緊の課題であることを明確に示しています。採用活動を成功させるためには、データに基づいた柔軟な対応と、自社の強みを正しく伝える力、そして人材を育てる仕組みの構築が求められます。目先の人手不足解消だけでなく、将来的な人材基盤の強化を視野に入れた持続可能な採用戦略こそが、今後の経営力を左右する大きな鍵となるでしょう。

⇒ 詳しくは東京労働局のWEBサイトへ

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