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2025年7月12日

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令和7年5月の茨城県有効求人倍率1.23倍

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県内の雇用情勢の概況(令和7年5月分)(茨城労働局)

令和7年5月における茨城県の有効求人倍率は季節調整値で1.23倍を記録し、前月の1.21倍から0.02ポイント上昇しました。これは全国平均と比較して24番目という順位に位置しており、全体としては求人数が求職者数を上回る状況が続いています。しかしその一方で、労働市場の改善の動きには鈍化の兆しがみられ、企業の採用戦略には一層の見直しが求められる局面を迎えているといえます。

このような環境下で、企業の採用担当者が最も注意を払うべきは、「有効求人倍率」という数値が示す雇用の需給バランスの意味を正しく理解し、それを採用活動にどう反映させていくかという点です。有効求人倍率が高いということは、求職者1人に対して複数の求人が存在することを意味し、企業間で人材の争奪戦が起きている状態であると言えます。茨城県においてもこの傾向は顕著であり、特に5月には有効求人数が45,200人、有効求職者数が36,889人と、いずれも前月比で増加したことから、労働市場全体が活発に動いていることがわかります。

しかしながら、新規求人倍率に目を向けると、1.96倍と高水準を維持している一方で、新規求人数自体は前年同月比で8.6%の減少となっており、5か月連続で減少が続いています。これは、企業側が新規採用に対して慎重な姿勢を強めていることを反映していると考えられます。たとえば「医療・福祉」分野では、前年同月比で10.8%の減少、「運輸業・郵便業」では30.3%、「卸売業・小売業」でも22.0%の減少が報告されており、特に人手不足が懸念されていた業種においても採用活動がやや抑制的になっている現状があります。

このような傾向に対し、採用担当者としては二つの観点から対応を図る必要があります。一つは「求職者にとっての魅力を明確にすること」、もう一つは「社内体制の見直しによる採用活動の質的向上」です。求職者が多くの選択肢を持つ現在、求人票に記載されている内容だけで応募を引き寄せることは困難です。職場の雰囲気やキャリア形成支援、福利厚生制度、ワークライフバランスなど、求職者が価値を見出すポイントを的確に提示することが極めて重要です。実際に、近年の求職者は単に給与水準の高さだけでなく、企業の社会的な役割や環境配慮、働きがいといった非金銭的な価値を重視する傾向が強まっています。

また、社内の採用体制を見直すことも急務です。これまでのように大量採用や経験者重視の方針から脱却し、未経験者やキャリアチェンジャーに対する研修制度の整備など、中長期的な視点で人材育成を前提とした採用方針への転換が求められています。たとえば、宿泊業や飲食サービス業では前年同月比で47.7%もの新規求人数の増加が見られた一方で、人材の定着率の低さが依然として課題となっています。こうした業種においては、研修制度やOJTの充実はもちろん、職場でのメンタルサポート体制の強化が企業競争力に直結します。

正社員における有効求人倍率は0.96倍と、前年同月比で0.03ポイント低下しています。これは、パートタイムや契約社員など非正規雇用に対する需要が依然として高い一方で、正社員登用へのハードルが企業側にも求職者側にも存在していることを示しています。こうしたギャップを埋めるためには、企業側が求める人物像の再定義と、それに伴う採用プロセスの柔軟化が必要です。例えば、これまでは「即戦力」を前提としていたポジションについても、将来的な育成を見越してポテンシャル採用を視野に入れるといった方針転換が求められます。

さらに注目すべきは、新規求職申込件数が前年同月比で5.0%減少している点です。これは求職活動を控える動きが出ている可能性を示唆しており、求人情報が届きにくい状況を意味します。このような時期には、従来の求人媒体に加えて、SNSや動画配信など多様なチャネルを活用し、企業の魅力を直接伝える広報活動の強化が効果的です。特に若年層をターゲットにする場合、企業紹介動画や社員インタビューなどのコンテンツが求職者の関心を引く要素として有効に働きます。

なお、全体的な雇用情勢は改善傾向が弱まりつつあり、今後も物価上昇や経済情勢の変化が雇用市場に与える影響は見過ごせません。採用担当者は単に目の前の採用業務にとどまらず、労働市場の動向や政策の変化に敏感に反応し、自社の人材戦略を適宜アップデートする姿勢が不可欠です。政府や労働局が公表する月次の雇用統計を継続的に確認し、地域別や業種別のデータから自社にとって有利な市場を見極めることで、採用成功率を高めることができるでしょう。

茨城県における現状の雇用環境は、企業にとって試練の時期であると同時に、柔軟な発想で採用戦略を進化させる好機でもあります。単なる人材の補充ではなく、企業の未来を支える人材との出会いを創出するための投資と捉え、今こそ「量から質」への転換を真剣に考えるべき時です。

⇒ 詳しくは茨城労働局のWEBサイトへ

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