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2025年7月12日

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令和7年5月の熊本県における有効求人倍率1.23倍

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一般職業紹介状況 (令和7年5月分)(熊本労働局)

令和7年5月における熊本県の有効求人倍率は1.23倍となり、前月の1.27倍から0.04ポイントの低下が見られました。この数値は全国平均の1.24倍をやや下回り、九州・沖縄地域の平均1.16倍よりは高いものの、熊本県内の企業にとって採用環境に若干の変化が生じていることを示しています。企業の採用担当者にとってこのような有効求人倍率の動向は、単なる統計にとどまらず、採用戦略の方向性を左右する重要な判断材料となります。市場の変化に適応した採用方針の見直しや実行が求められる今、現場ではどのような視点で求人活動を進めるべきなのでしょうか。

まず、求人倍率が低下した背景として、新規求人の減少が大きく影響しています。令和7年5月の熊本県内における新規求人数は前月比で8.7%減少しており、業種別では宿泊業・飲食サービス業、生活関連サービス業・娯楽業、建設業、医療・福祉などの分野で求人減少が顕著に見られました。特に建設業では前年同月比で7.1%減、宿泊業・飲食サービス業では9.9%の減少となっており、人手不足を背景にしていたこれらの業種においても、新たな求人の抑制傾向が出始めていることがわかります。これは、企業が人員配置を見直して生産性を高めることを優先し、慎重な採用姿勢を取るようになってきていることを示唆しており、採用競争の一時的な緩和を意味しています。

一方で、新規求職者の動きも静かになっています。新規求職申込件数は前年同月比で3.0%減少しており、就職を希望する人の動きが全体的にやや鈍化している状況が見て取れます。これは、就業意欲の低下だけでなく、働く環境や職場条件への慎重な見極めが進んでいることも背景にあると考えられます。特に、無業者や離職者の新規申込が減っていることは、企業が求める柔軟な労働力を確保しづらくなっている現実を浮き彫りにしています。

こうした中、企業にとって重要なのは、ただ求人を出すだけではなく、求職者が本当に求めている要素を正確に捉えた求人情報の提供です。求職者の多くは職場の雰囲気、勤務時間の柔軟性、キャリアアップの可能性、報酬の明確さといった要素に敏感になっており、こうした情報を積極的に打ち出すことが応募意欲を引き出す鍵になります。特に熊本県では、近年20代から30代の若年層に加え、40代以上のミドル層の就職活動も活発化しており、彼らにとって職場の安定性と働き方の選択肢が大きな関心事となっています。

また、正社員の有効求人倍率は1.09倍と前年同月より0.01ポイント低下し、依然として1倍を超える水準を維持しています。これは正規雇用を希望する企業が多い一方で、それに応じる求職者が少ないことを表しており、採用のミスマッチが存在していることを意味します。企業側は正社員として長期雇用を見込む人材に対して、キャリア形成の支援や研修制度の充実を提示するなど、安心して働ける環境づくりをアピールする必要があります。

地域別に見ると、熊本市、八代市、天草市など主要都市における求人倍率の差も見逃せません。特に熊本市では都市部に人材が集中する傾向がある一方で、地方圏では依然として人手不足が深刻です。このため、地域ごとの特性に応じた採用戦略が求められます。たとえば、地方拠点では移住支援制度や家賃補助制度などを活用し、県外からの人材呼び込みを強化することが考えられます。地域に根ざした採用広報や、地元出身者のUターン・Iターン促進を意識した情報発信も有効です。

一方で、IT業界や製造業、専門・技術系職種においては、スキルを持った人材の確保が難しい状態が続いています。これらの職種では、経験者を前提とした求人が多く、未経験者を採用して育成する仕組みを整えていない企業ほど、採用難に直面しています。人材が市場にいないのであれば、内部育成や若年層の採用・教育投資を通じて、将来的な戦力として自社内で育て上げる視点も重要になります。人材育成に関する施策は、応募者にとっても「成長できる環境」としての魅力となり、結果として定着率の向上にもつながります。

さらに、雇用維持のためには、採用後のフォロー体制の充実も欠かせません。せっかく採用した人材が短期間で離職してしまうと、採用コストと労力が無駄になります。企業は、入社後のオンボーディング制度やメンター制度を導入し、職場へのスムーズな適応を促す環境づくりに注力する必要があります。また、近年ではワークライフバランスを重視する風潮が強く、柔軟な働き方や福利厚生の充実が企業選びの決定打となるケースも少なくありません。

最後に、採用活動における「差別化」は、ますます重要性を増しています。求人倍率が高いということは、それだけ企業同士の人材獲得競争が激しいということです。求職者から選ばれる企業となるためには、企業としての理念やビジョンをわかりやすく伝え、共感を得る努力が求められます。経営の安定性、働きやすさ、社員同士の関係性、社会貢献度など、企業が持つ独自の価値を再定義し、それを明確に発信していくことが採用活動の成果を左右する鍵となります。

熊本県の令和7年5月における有効求人倍率1.23倍というデータは、単なる一時的な数字ではなく、企業が未来を見据えて採用活動を見直すための起点として活用されるべき重要な情報です。これを契機に、自社にとって本当に必要な人材とは何か、その人材をどう迎え入れ、どう育てていくのかを今一度問い直すことが、今後の企業成長を支える確かな土台になるのです。採用は単なる人員補充ではなく、未来への投資そのものであるという視点を持って、戦略的に取り組んでいくことが、熊本県内の企業にとって何より重要な姿勢といえるでしょう。

⇒ 詳しくは熊本労働局のWEBサイトへ

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