2024年11月16日
労務・人事ニュース
JR北海道、旅客運賃を平均7.6%値上げへ 収支改善目指す厳しい決断
北海道旅客鉄道株式会社の旅客運賃の上限変更認可について(国交省)
令和6年10月29日、国土交通省鉄道局鉄道事業課より、北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)が申請した旅客運賃の上限変更について正式な認可が発表されました。この認可に基づき、JR北海道は令和7年4月1日より新たな運賃体系に移行する予定です。運賃改定は、JR北海道の経営状況と社会情勢の変化に対応するためのものであり、地域社会や鉄道利用者への影響を最小限に抑えつつ、経営の安定化を図る狙いがあります。
鉄道事業法第16条に基づき、鉄道事業者は旅客運賃の上限を定めるにあたり、国土交通大臣の認可を受ける必要があります。この際、適正な経費や合理的な経営状況を踏まえて運賃水準を審査することが義務付けられています。今回の改定申請においても、運賃改定が適切であるかどうかの審査が運輸審議会に諮られ、10月3日に「認可が適当である」との答申がなされました。これを受け、国土交通省は改定申請を認可し、認可期限は令和12年3月31日までとされています。また、改定後3年間の収支実績も定期的に確認され、総収入と総括原価の推移が管理される仕組みがとられることとなりました。
JR北海道は、人口減少やリモート会議の普及、新型コロナウイルスの影響を受けて利用者数が大幅に減少しており、経営環境は極めて厳しい状況にあります。令和5年度の営業収支は574億円の赤字となり、道内における鉄道事業の経営は困難を極めています。特に、インフレや修繕費・設備投資費の増加、さらに地域輸送における競争力の維持が課題となっており、こうした経営環境下で、列車の安全運行に不可欠な設備投資や人材確保を行うには、運賃改定が避けられないと判断されました。
改定内容としては、全体的な運賃率が7.6%の引き上げとなり、その内訳として普通旅客運賃が6.6%、定期旅客運賃が18.9%(通勤定期22.5%、通学定期10.5%)の上昇となっています。具体的には、初乗り運賃が200円から210円に変更され、定期旅客運賃も割引率の見直しが行われます。これにより、通勤定期の割引率が現行の49.0%から42.9%に、通学定期の割引率が72.4%から71.8%へと変更されます。一方で、新幹線の特急料金は据え置きとなり、地域間の鉄道利用の利便性は一定水準で保たれることとなります。
令和4年度の実績では、収入は約11,048億円、原価は13,962億円であり、収支率は79.1%にとどまりました。改定後の令和7年度から9年度にかけては、収支率の改善が期待されるものの、約81.6%と引き続き厳しい見通しが示されています。このような状況の中、運賃改定によってJR北海道の経営がどの程度改善されるかが注目されています。運賃改定による収入増加は、今後の投資やサービス向上にも影響するため、利用者からの理解が求められると同時に、地域の生活基盤としての鉄道の価値が再評価される機会となるでしょう。
国土交通省による運賃上限認可の過程には、国の厳格な基準が適用されています。鉄道事業法では、運賃の上限変更には適正な原価と利益が含まれているかを審査する規定があり、過剰な負担を利用者に求めないよう慎重な判断が行われます。今回の認可では、北海道の厳しい経済状況に配慮しつつも、持続可能な鉄道運営のためには一定の運賃引き上げが必要と認められました。さらに、運賃の適正性を検討するにあたり、運輸審議会の助言も活用され、国土交通省は地元と連携しながら審議を進めています。
今回の認可により、地域の公共交通インフラの維持と競争力の確保に向けた取り組みが加速すると期待されています。JR北海道は、今後も安全性確保やサービス向上に向けた取り組みを継続し、利用者にとって価値ある鉄道事業の提供を目指すとしています。人口減少や経済環境の変化が地方の鉄道運営に与える影響は非常に大きいため、地域社会全体で鉄道利用を促進する取り組みが重要視されるでしょう。
以上のように、今回の運賃改定には多くの課題と期待が交錯しています。鉄道事業者としての責任を果たしつつ、地域社会とともに新たな需要を創出することで、持続可能な交通インフラの提供が進められることが求められます。今後も定期的な収支確認が行われ、経営状況がさらに改善するか、あるいは追加の対策が必要かを判断する材料として重要な役割を果たす見込みです。
⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ