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2024年10月13日

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JR北海道、運賃7.6%引き上げへ。初乗り運賃210円に改定で利用者負担増加

「北海道旅客鉄道株式会社からの鉄道の旅客運賃の上限変更認可申請事案」に関する答申について(国交省)

北海道旅客鉄道株式会社(JR北海道)は、近年、厳しい経営状況に直面しており、道内の人口減少や経済状況の変化による収入の減少が大きな要因とされています。この影響を受け、鉄道運賃の上限変更を国土交通省に申請し、令和6年7月4日付で審議が行われ、認可が適当であると判断されました。この申請に基づき、運賃の平均改定率は7.6%と設定され、普通運賃は6.6%、定期運賃は18.9%、通勤定期に関しては22.5%、通学定期は10.5%の引き上げが行われる予定です。

特に注目すべきは、初乗り運賃が200円から210円に引き上げられる点で、利用者にとって日常的な負担増が現実のものとなります。このような運賃改定は、運営に必要なコスト増加や経済的環境の悪化を背景としており、企業としての自助努力やコスト削減を行った上で、なおも収支の均衡を図るために実施されるものです。

この背景には、JR北海道が抱える経営課題が深く関係しています。同社は1987年の設立以来、道内の鉄道輸送を支えてきましたが、人口減少や過疎化、さらに観光業の停滞などによる利用者減少が大きな課題となっています。さらに、これに加えて新型コロナウイルス感染症の拡大や、燃料費の高騰が経営に打撃を与えました。これに対処するために同社は、国からの支援を受けながら経営改善に努めてきましたが、十分な収益改善が見られず、今回の運賃改定に踏み切る形となりました。

また、JR北海道が運賃改定に踏み切るにあたって、注視すべきもう一つの要素として、安全面の課題があります。過去の石勝線での脱線火災事故をはじめ、安全投資の遅れが原因で複数の事故が発生しており、これが利用者からの信頼を損なう要因となっていました。安全対策に必要な費用を確保するためには、さらなる投資が不可欠であり、それに伴う経費の増加もまた運賃改定の理由の一つとなっています。

JR北海道は、令和6年3月に国土交通省から「事業の適切かつ健全な運営に関する監督命令」を受けており、その命令を受けた新たな経営計画「中期経営計画2026」を策定しました。この計画の中で、同社は経営の自立を目指し、地域と連携した利用促進施策を推進する方針を掲げています。具体的には、地域住民や観光業界との協力を強化し、鉄道の利用を促進する取り組みを行う考えです。さらに、運賃改定による収益増加をもって、安全面への投資を進め、サービス向上を図る計画です。

しかしながら、鉄道運賃の改定が利用者に与える影響も無視できません。特に、通勤や通学のために定期券を利用するユーザーにとって、定期運賃の大幅な引き上げは大きな負担となります。通勤定期運賃の引き上げ率が22.5%、通学定期が10.5%に達するため、日常的に鉄道を利用する層にとっては、経済的な影響が避けられません。このような運賃改定が利用者にどう受け入れられるかは、JR北海道の今後の経営において重要な課題となります。

さらに、JR北海道が直面している問題の一つに、若年層の退職者数の増加や人材確保の難しさがあります。鉄道業界全体で労働力不足が叫ばれている中、JR北海道も例外ではなく、特に地方では労働力の確保が困難になっています。これはサービスの質や安全面にも影響を与えるため、運賃改定だけではなく、労働環境の改善や人材育成も重要な課題として挙げられます。

国土交通省の答申書には、運賃改定が実施された後も、利用者への丁寧な説明と理解を求める対応が求められています。また、利用者からの信頼を取り戻すためには、運賃の引き上げに見合うだけのサービス向上を実現することが必要です。これに対して、JR北海道は具体的なサービス向上策として、安全確保のための投資や設備の修繕、さらには運行の安定化を進めるとしています。

また、今回の運賃改定に伴い、北海道と本州を結ぶ物流の確保も重要な課題として浮上しています。青函トンネルを利用した貨物輸送は、地域経済にとって重要な役割を果たしており、運賃改定が物流に与える影響についても慎重に検討されるべきです。特に、新幹線と貨物列車の共用区間における運行調整が求められており、国や地域との連携が不可欠です。

まとめると、JR北海道の運賃改定は経営改善とサービス向上、安全対策のための不可避な選択であり、その背景には深刻な経営環境の悪化があることが分かります。しかしながら、利用者にとっては負担増となるため、今後の同社の取り組みが、いかに利用者の理解を得るかが鍵となります。運賃改定後のサービス向上や安全対策がどの程度進展するかによって、JR北海道の将来が大きく左右されるでしょう。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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