2025年3月5日
労務・人事ニュース
介護サービス利用者476万人超、高齢化に伴い今後も増加傾向が続く見込み(令和6年7月審査分)
介護給付費等実態統計月報(令和6年7月審査分)(厚労省)
令和6年7月の介護給付費等実態統計月報によると、日本全国における介護サービスの受給者数は前年同月と比較して増加傾向にあり、介護予防サービスおよび介護サービスの利用者がともに増加していることが明らかとなった。この統計結果は、高齢化の進展とともに介護サービスの需要が引き続き高まっていることを示しており、介護業界全体にとって重要な指標となる。
介護予防サービスの受給者数は94万2,100人で、前年同月比で6.1%の増加となった。これは、高齢者の健康維持や自立支援を目的とした介護予防施策が着実に機能していることを示していると考えられる。要支援1の受給者数は37万5,000人で前年比6.3%の増加、要支援2の受給者数は56万3,100人で前年比5.9%の増加となっており、軽度の支援を必要とする高齢者が増えていることが分かる。地域密着型の介護予防サービスも安定的に利用されており、高齢者が地域で自立した生活を続けるための支援が充実していることが伺える。
一方、介護サービスの受給者数は476万6,000人で、前年同月比1.8%増となった。要介護1の受給者数は126万8,800人(前年比1.9%増)、要介護2は114万7,200人(前年比3.4%増)、要介護3は91万6,600人(前年比1.6%増)、要介護4は87万5,600人(前年比1.4%増)、要介護5は55万7,700人(前年比0.4%減)となっている。特に要介護2の増加率が高く、中等度の介護を必要とする高齢者の増加が際立っている。この傾向は、高齢化が進む中で介護を必要とする高齢者が今後も増加する可能性を示唆しており、介護施設や在宅介護サービスの充実が一層求められる状況となっている。
介護サービスの種類別に見ると、居宅サービスの受給者は350万5,500人で前年比2.2%増、施設サービスの受給者は93万3,000人で前年比0.7%増、地域密着型サービスの受給者は97万4,200人で前年比0.6%増となった。居宅サービスの利用者増加が最も顕著であり、これは高齢者ができる限り自宅での生活を維持したいという意向が反映されていると考えられる。また、施設サービスの利用者数は安定しているが、今後の高齢化の進行に伴いさらなる受け入れ体制の整備が求められる。
介護費用についても増加傾向にあり、介護予防サービスの費用額は259億1,100万円で前年比5.0%増、介護サービスの費用額は9,541億9,600万円で前年比2.5%増となった。受給者1人当たりの費用額は、介護予防サービスでは2万7,500円(前年比0.9%減)、介護サービスでは20万200円(前年比0.7%増)となった。特に介護サービスの費用額の増加は、サービスの利用者増加とともに介護の必要度が高まっていることを反映していると考えられる。
今後の介護業界の課題として、増加する介護サービス需要に対して、施設や人材の確保が急務となる。介護人材不足は依然として深刻であり、介護職員の処遇改善や働きやすい環境づくりが求められている。政府も介護報酬の見直しや人材確保策を推進しているが、現場の負担軽減や業務効率化のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)を活用した業務改善の取り組みがさらに必要になると考えられる。
また、介護予防の推進が重要な課題となる。要支援・要介護状態の高齢者が増える一方で、健康寿命を延ばすための取り組みが全国的に広がっており、介護予防サービスのさらなる充実が期待される。特に、地域コミュニティとの連携を強化し、高齢者が社会参加を続けられるような支援が求められる。
さらに、在宅介護の支援体制を強化することも今後の重要な課題となる。多くの高齢者が自宅での生活を希望する中で、訪問介護やデイサービスの充実、家族介護者への支援強化が不可欠である。家族介護の負担軽減のためには、レスパイトケア(短期間の介護休息サービス)や、在宅医療との連携を強化することが重要だ。加えて、ICT技術の活用による遠隔見守りサービスや、AIを活用した介護支援システムの導入など、テクノロジーを活かした介護の革新が求められる。
今後の介護業界の発展には、介護サービスの充実だけでなく、地域社会全体で支える仕組みの構築が不可欠である。自治体や企業、NPO法人など多様な主体が協力し、高齢者が住み慣れた地域で安心して生活できる環境を整えることが求められる。高齢化が進む日本において、介護サービスの持続可能な運営と質の向上は社会全体の課題であり、今後も多方面からの支援策が必要となる。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ