2024年9月3日
労務・人事ニュース
北海道労働局が監督指導を実施、違法な時間外労働が48.5%の事業場で確認
長時間労働が疑われる事業場に対する令和5年度の監督指導結果を公表します(北海道労働局)
令和5年度における長時間労働が疑われる事業場に対する監督指導の結果が、厚生労働省北海道労働局から発表されました。この発表は、過労死や健康障害を防止するために行われた労働基準監督署の取り組みの成果を示しています。対象となったのは、月に80時間以上の時間外・休日労働が行われていると推測される事業場や、過労死による労災請求が行われた事業場です。
監督指導が実施された1,432の事業場のうち、48.5%にあたる694事業場で違法な時間外労働が確認されました。このうち、月に80時間を超える時間外・休日労働が認められたのは311事業場で、その割合は44.8%に達します。さらに、月に100時間を超えるケースが191事業場、150時間を超えるものが33事業場、200時間を超える事業場が1件確認されました。これらの事実は、依然として長時間労働が一部の事業場で深刻な問題として残っていることを示しています。
また、賃金不払残業があった事業場は101件、全体の7.1%を占めています。これは、労働時間に見合った賃金が適切に支払われていないケースが依然として存在することを意味します。さらに、過重労働による健康障害を防止する措置が未実施であった事業場が343件、24%に上りました。これに対して、健康障害防止のための指導が行われた事業場は672件で、これらの事業場においては、長時間労働者に対する医師の面接指導が指導されました。
労働基準法に基づく監督指導は、労働者の健康と安全を守るために非常に重要な役割を果たしています。特に長時間労働は、過労死や深刻な健康問題を引き起こすリスクが高く、その是正が急務とされています。労働局では、今後も長時間労働の是正に向けた取り組みを積極的に行うとともに、毎年11月に実施される「過重労働解消キャンペーン」の期間中に重点的な監督指導を行う予定です。
企業にとっては、労働基準監督署の指導を受けることが、労働環境の改善や企業の信頼性向上につながる機会となります。特に、違法な時間外労働や賃金不払残業が発覚すると、企業の社会的信用が損なわれるリスクがあるため、労働環境の適正化に向けた取り組みが求められます。企業規模別に見ると、労働基準法違反の事業場数は、中小企業に多い傾向が見られますが、大企業でも違反が確認されています。これらの結果を踏まえ、各企業は労働時間の適正管理と健康障害防止措置の徹底を図ることが不可欠です。
今回の報告書には、労働時間の適正な把握が不十分であった事業場が228件含まれており、労働時間管理の重要性が再認識されます。具体的には、タイムカードやICカードによる労働時間の管理が推奨されており、自己申告制に頼るだけでなく、客観的な労働時間の把握が求められます。これにより、労働時間の過少申告や不正確な労働時間の把握を防ぐことができます。
労働基準監督署が実施する監督指導は、企業の労働環境改善に向けた重要な機会であり、違反が指摘された企業は速やかに是正措置を講じる必要があります。特に長時間労働が蔓延する事業場では、労働者の健康リスクを軽減し、企業の持続可能な成長を支えるための適切な対策が求められます。
労働時間の適正管理は、企業のコンプライアンスと社員の健康を守るための基本です。今後、企業が長時間労働の是正に真剣に取り組むことで、働きやすい職場環境が整い、社員の満足度や生産性の向上が期待されます。特に、労働基準監督署から指摘を受けた企業においては、指導内容を真摯に受け止め、改善を進めることが求められます。
北海道労働局の発表は、企業が遵守すべき法令を再確認する良い機会となり、今後の労働環境改善に向けた指針となるでしょう。企業の採用担当者や経営陣は、今回の監督指導結果を参考に、自社の労働環境の現状を見直し、適切な対応を取ることが重要です。特に、長時間労働の問題は、企業の持続可能性に直結する課題であり、積極的な改善が求められます。
⇒ 詳しくは北海道労働局のWEBサイトへ