2024年6月11日
労務・人事ニュース
男性介護者の90%が配偶者介護で生活満足度が低下する現実

男性家族介護者をとりまく諸相:支え合い調査に基づく知見の再検討(社人研)
高齢化が進む日本社会において、家族介護の重要性はますます高まっています。特に男性が家族の介護を担うケースが増加しており、その影響が注目されています。国立社会保障・人口問題研究所の報告書によれば、男性家族介護者(以下、男性介護者)は経済的困難、失業、メンタルヘルスの悪化といった多くの課題に直面しているとされています。
これまでの研究では、男性介護者は女性介護者に比べて社会的孤立が強く、ストレスを抱えやすいと指摘されています。また、男性は支援を受け入れにくく、職業や社会的地位に固執しやすい傾向があるとされています。このような背景から、介護を行う男性が抱える問題は多岐にわたることが示唆されています。
2022年の「生活と支え合いに関する調査」に基づく分析では、男性介護者の特有の問題が浮き彫りになっています。まず、収入や生活満足度、精神的健康(K6)に関しては、男性介護者特有のネガティブな影響は確認されませんでした。しかし、仕事の有無については男性介護者に特有のネガティブな影響が確認されました。つまり、男性介護者は仕事を持つことが難しく、これがさらなる経済的困難を引き起こす要因となっています。
さらに、介護相手が配偶者である場合には、生活満足度やK6が悪化する傾向が確認されました。このことは、配偶者の介護が男性介護者にとって特に負担が大きいことを示しています。一方、介護相手が親や祖父母である場合には、相対的にメンタル面が良好であるケースも見られました。これにより、介護相手との関係性が男性介護者の心理的な影響に大きく関与していることが示唆されています。
先行研究では、男性介護者は社会的に孤立しやすく、介護と仕事の両立が困難であることが強調されています。特に、息子介護者は介護離職により経済的基盤を失いやすく、社会的な孤立感やストレスが高まる傾向があります。また、男性が介護を担うことに対して「男性らしくない」という社会的な偏見が存在し、これが彼らの精神的健康をさらに悪化させる要因となっています。
以上のような知見は、男性介護者に対する支援策の重要性を強調しています。特に、男性介護者が仕事と介護を両立できるような支援が求められます。例えば、柔軟な労働時間や在宅勤務の推進、介護休暇制度の充実などが挙げられます。これにより、男性介護者が経済的に安定し、精神的な健康を保ちながら介護を続けることができる環境整備が急務です。
また、男性介護者自身が孤立しないよう、コミュニティやサポートグループの活用も有効です。介護者同士の交流を促進し、情報共有や心理的サポートを行うことで、介護の負担を軽減し、精神的な健康を維持することができます。
これらの対策を通じて、男性介護者が直面する多くの課題に対処し、彼らが安心して介護を続けられる社会を実現することが求められています。政策立案者や社会全体がこの問題に対して積極的に取り組むことで、高齢化社会における家族介護の持続可能性を高めることができるでしょう。
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⇒ 詳しくは国立社会保障・人口問題研究所のWEBサイトへ