2024年10月3日
労務・人事ニュース
若年労働者の育成現状調査 OJT69.8%、OFF-JT35.2%が採用される理由
令和5年若年者雇用実態調査の概況 事業所調査 若年労働者の育成状況(厚労省)
日本の若年労働者の雇用と育成に関する調査結果から、現在の若年層の育成状況と、その方法に焦点を当てて説明します。令和5年の調査によると、若年正社員を育成している事業所の割合は77.9%に達し、正社員以外の若年労働者に対して育成を行っている事業所の割合も66.3%と、全体的に高い割合で若年層の育成が行われています。この結果は、多くの企業が若年層の育成に力を入れていることを示しており、企業の未来を担う若年労働者のスキル向上やキャリア形成に積極的に取り組んでいる姿勢が伺えます。
育成方法については、特に「OJT(業務遂行の過程内での教育訓練)」が主流で、若年正社員では69.8%、正社員以外では56.5%の企業がこの方法を採用しています。OJTは、実際の業務を通じて必要なスキルや知識を身につける機会を提供し、即戦力としての成長を促す手段として多くの企業で活用されています。一方、「OFF-JT(業務遂行の過程外での教育訓練)」を実施する企業も多く、若年正社員の35.2%、正社員以外の20.2%がこれを採用しています。OFF-JTは、業務から離れて行われる研修や講義などを指し、より体系的な知識やスキルを学ぶ場を提供するための方法です。
また、「自己啓発への支援」も注目されており、若年正社員の33.1%、正社員以外の15.8%がこの支援を受けています。自己啓発は、個人の成長を促し、キャリア形成において重要な要素となるため、企業が積極的に支援を行うことで、労働者の意欲を高め、長期的な雇用関係の構築につながります。その他に、「ジョブローテーション」も若年正社員の24.0%、正社員以外の9.0%が実施しており、複数の職務経験を通じて多様なスキルを身につけさせる工夫が行われています。
これらのデータを比較すると、企業は若年正社員と非正規労働者の両方に対して育成を行っているものの、非正規労働者に対する育成の割合はやや低い傾向があります。これは、正社員と比べて非正規労働者に対する育成投資が少ないことを示しているとも言えますが、逆に言えば、非正規労働者に対する育成機会を増やすことで、より広範なスキルアップやキャリアパスの提供が可能となり、企業の競争力向上にもつながる可能性があります。
さらに、採用区分別に見ると、新規学卒者の育成率は73.2%で、OJTの実施率が65.9%、OFF-JTが37.5%となっています。これに対して、中途採用者の育成率は72.6%で、OJTの実施率が63.5%、OFF-JTが27.8%とやや低い数値を示しています。新卒者と中途採用者の育成方針には若干の違いが見られるものの、いずれの採用区分においてもOJTが主流であることがわかります。
このような状況の中、企業が若年層の育成に注力する理由として、未来の労働力を確保し、社内でのスキル伝承を行うことが挙げられます。特に、少子高齢化が進む日本では、若年層の育成が今後ますます重要になると考えられます。若年層が企業内でキャリアを積み重ねていくためには、適切な育成プログラムや支援体制が必要不可欠です。
企業が行う若年労働者の育成は、長期的な企業成長にも寄与します。例えば、OJTやジョブローテーションを通じて、若年層が多様な業務経験を積むことで、企業内での柔軟な人材配置が可能となり、組織全体のパフォーマンス向上に繋がります。また、OFF-JTや自己啓発支援を活用することで、専門的な知識を習得したり、新たなスキルを身につけることで、企業にとっても価値ある人材が育成されるのです。
近年の調査結果を踏まえると、若年層の育成において、OJTとOFF-JTのバランスを取った育成方針が求められています。OJTは実務を通じたスキル習得に適している一方で、OFF-JTは理論的な背景や新しい技術の習得に適しています。企業がこれらを効果的に組み合わせることで、若年層の多様な能力を引き出し、長期的な成長を支援することができます。
さらに、自己啓発への支援は、企業と若年労働者の双方にとって大きなメリットがあります。若年労働者が主体的に学び、スキルを磨くことで、将来的なキャリアの選択肢が広がり、企業にとっても即戦力としての価値が高まります。企業側も、自己啓発を支援することで、意欲的な人材を確保し、組織内の競争力を強化することができるのです。
今後、若年労働者の育成において重要なポイントは、企業がどのような育成方針を採用し、どのように支援体制を整えるかです。特に、新たな技術や業界の変化に対応できる柔軟な人材育成が求められており、企業は引き続き若年層の育成に対して積極的に取り組む必要があります。
⇒ 詳しくは厚生労働省のWEBサイトへ