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2025年4月14日

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公共工事の生産性向上に向け62件の実例収録、発注者が担う新たな役割

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関係者間調整の更なる円滑化に向けた取組みを確実に推進します ~営繕事業の各段階において発注者として実施する事項の事例解説を作成~(国交省)

令和7年3月28日、国土交通省大臣官房官庁営繕部は、公共建築工事における生産性の向上と関係者間の調整の円滑化を目的とした「事例解説資料」を新たに作成し、全国の地方整備局等へと周知しました。この取組は、平成30年に施工段階での関係者調整を整理した資料を皮切りに、令和5年には設計段階の内容を加えた全体像が整理され、そして今回、特に設計に関する取組みをさらに深く掘り下げた内容としてまとめられたものです。背景には、建設業においても適用されることとなった労働基準法による時間外労働の上限規制への対応があり、工事現場の働き方改革と生産性向上が急務となっている現状があります。

この事例解説は、発注者が営繕工事において担うべき役割と実施事項を明確にし、特に設計段階においてどのような準備と配慮が必要であるかを実例を基に説明するものです。たとえば、設計条件の明示に関しては、敷地の地形やインフラの状況、地方公共団体が発表するハザードマップなど、多様な情報を設計段階で適切に反映させる必要があります。実際に過去の事例では、排水計画が事前協議されておらず道路工事に支障が出たり、地盤調査の不備により設計変更を余儀なくされたケースが報告されています。こうした問題を未然に防ぐには、設計前の情報収集と各関係者間での情報共有が極めて重要です。

また、設計図書の整合性も生産性向上に大きな影響を与えるポイントです。各専門分野間、あるいは同一分野内であっても、図面間に齟齬があれば、施工段階での混乱や再調整が必要になり、結果的に工期の遅延やコストの増加につながります。このため、図面の整合性チェックを発注者自身もプロセスに組み込む必要があるとされており、BIM(Building Information Modeling)などのデジタル技術を活用した干渉チェックの導入が推奨されています。

さらに、設計段階では、仮設工事や施工条件に関する検討も重要なポイントです。特に庁舎改修などでは、執務を継続しながら工事が進められる場合も多く、その際には作業時間帯や搬入ルートの確保、騒音や振動への配慮が必要です。設計者、発注者、施設管理者の三者が緊密に協議し、指定仮設の内容を明示することが求められます。実際に、施工現場において資機材の搬入ルートが設計図書と異なり、設計変更が必要となった事例もありました。

施工段階においても、設計意図の伝達の遅延が工事進捗に与える影響は深刻です。特に、質疑応答への対応が遅れた場合や、曖昧な指示によって現場が混乱した例が複数報告されています。これらに対応するためには、工事開始前から工事受注者、監督職員、施設管理者らが一堂に会する会議を設け、情報の共有と確認を行うことが推奨されています。また、情報共有システムを活用することで、全関係者が同一の情報に基づいて業務を進行できる環境を整えることが重要です。

一方で、設計図書の内容が実際の現場と不一致であったり、施工条件の変化により工事の設計自体に変更が生じる場合もあります。その際には、設計変更ガイドラインに基づいた適正な手続きが求められます。曖昧な口頭指示や予算措置の遅延が施工現場に混乱をもたらさないよう、変更が必要な場合は書面での手続きにより明確化し、変更が工期や請負金額に及ぼす影響についても早期に協議を行うことが求められています。

これらの事例解説は、過去3年間に建設業団体から提供された62件の事例をもとに整理されており、事業者にとっては非常に実践的かつ具体的な参考資料となっています。また、各事例ごとに改善のための取組みも提示されており、現場での課題解決や発注プロセスの改善に役立てることができます。

さらに、これらの取り組みは、公共工事の品質確保を目的とした「品確法」や、適正な入札契約を促す「入契法」といった法制度の改正内容を踏まえており、発注者の責務がより明確にされる中での対応策となっています。発注者は、仕様書や設計書の作成において、施工条件を明示すること、設計図書の内容が現場と合致していること、変更が必要な場合には適正な手続きを取ることなどが法的にも求められています。

これからの公共建築においては、単なる工期や予算の管理を超えて、関係者すべてが生産性向上を目指す共通の視点を持つことが重要となります。そのためにも、発注者自身がプロジェクト全体の推進役としての意識を持ち、設計段階から施工段階に至るまで、綿密な情報整理と関係者間の調整をリードしていくことが求められます。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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