2024年9月21日
労務・人事ニュース
2024年、日本企業の人手不足が過去最悪!バブル期を超える危機で賃金上昇が急務
令和6年度経済財政白書 第2章 人手不足による成長制約を乗り越えるための課題 第1節 高まる人手不足感と企業部門の対応(内閣府)
2024年、日本企業は過去数十年で最も深刻な人手不足に直面しています。特に非製造業や中小企業において、人手が不足していると感じる企業の割合が歴史的な水準に達しており、バブル期並みの水準に迫る勢いです。日銀短観によれば、企業の人手不足感は2024年6月時点で全産業ベースでマイナス35%に達し、特に非製造業においてはマイナス45%と、1990年代のピーク時とほぼ同等のレベルです。この人手不足感は新型コロナウイルスの影響で一時的に緩和されましたが、経済活動の再開に伴い再び拡大しています。
背景には、1995年をピークに生産年齢人口が減少に転じたことや、2008年の総人口の頭打ちによる長期的な労働供給の制約があります。さらに、日本の労働市場は依然として流動性が低く、特に中年層の人手不足感が高まっています。企業の採用担当者にとっては、今後の採用戦略がますます重要な課題となるでしょう。
2024年に内閣府が実施した「人手不足への対応に関する企業意識調査」によると、人手不足に直面する企業の約56%が「離職者・退職者の増加」を主な要因として挙げています。これに加えて「業務に必要な資格や能力を持つ人材の不足」や「業務量の拡大」も大きな問題として指摘されており、企業間での人材獲得競争がさらに激化しています。特に若年層においては転職市場が活発化しており、転職希望者数は2023年時点で1,000万人を超えています。
人手不足が深刻化する中、企業は様々な対応策を講じています。アンケート調査によれば、企業の70%が「従業員の待遇改善」を進めており、特に中小企業では従業員の引き留めが最優先の課題となっています。大企業では「新卒・中途採用の増員」に力を入れていますが、応募者の中でも優れた人材は他社へ流れる傾向が強く、採用競争が激化しています。
また、企業の対応策として省力化投資の増加も顕著です。2024年には、特に小売業や宿泊・飲食サービス業において、キャッシュレス決済端末やセルフレジの導入など、省力化投資が急速に進んでおり、人手不足を補うための効率化が進められています。
さらに、2023年は賃上げの年となり、企業が最も重視した要素は「労働力の確保・定着」でした。賃金改定において、企業の64%が「労働力の確保・定着」を最優先の課題として挙げており、これはバブル期に迫る勢いです。また、物価の上昇も賃上げの背景にあり、企業は既存労働者の流出を防ぐための賃上げも積極的に行っています。2023年の春闘では、30年ぶりの大幅な賃上げが実現し、2024年にはさらに高い水準が期待されています。
労働力不足が深刻化する中、企業は賃上げだけでなく、女性や高齢者などの非労働力人口を労働市場に取り込む努力も求められています。女性の労働参加が増加しつつありますが、年齢が高くなるほど労働市場への参入意欲は低下するため、企業は年齢層ごとの対応が必要です。特に、女性の留保賃金が年々上昇しており、これを超える賃金を提示しなければ新たな労働力を確保することは困難です。
今後、企業は賃金の引き上げだけでなく、従業員のスキルアップや労働条件の改善、省力化投資を進めることで、労働生産性の向上を図る必要があります。特に人手不足が深刻な業界では、労働力の確保が経営の最優先課題となりつつあり、賃上げと省力化投資を並行して進めることが求められています。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ