2024年6月24日
労務・人事ニュース
2024年10月から適用拡大!企業の55.1%が厚生年金・健康保険の新たな適用を推進

「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」(企業郵送調査)及び「働き方に関するアンケート調査」(労働者 Web 調査)結果(JILPT)
令和5年5月16日、厚生労働省が「社会保険の適用拡大への対応状況等に関する調査」を発表しました。この調査は、企業に対する郵送調査と労働者に対するWeb調査を通じて、2022年10月から適用範囲が拡大された厚生年金および健康保険に関する対応状況を分析したものです。
まず、企業郵送調査の結果から見てみましょう。2022年10月から適用拡大の対象となった企業では、厚生年金・健康保険の適用に関して「できるだけ適用する」と回答した企業が55.1%に上り、「どちらかといえば適用する」と回答した企業も7.6%でした。これに対して、「中立(短時間労働者の意向にまかせる)」とした企業は34.3%にとどまりました。
適用拡大の理由として最も多かったのは「法律改正で決まったことだから(法令を遵守するため)」で66.0%、次いで「短時間労働者自身が希望したから」が45.8%、「短時間労働者の必要人数を確保したいから(人手不足だから、求人の優位性を高めたいから)」が25.5%でした。これらの結果から、法律の改正が企業の対応方針に大きな影響を与えていることがわかります。
2024年10月からさらに適用範囲が拡大される予定の企業に対しても調査が行われました。この調査では、新たな適用範囲に対する対応意向として「できるだけ適用する」と回答した企業が28.1%、「どちらかといえば適用する」が12.0%、「中立」が22.4%でした。これにより、多くの企業が今後も適用拡大に向けた準備を進めていることがわかります。
一方、労働者Web調査の結果も興味深いものとなっています。2022年10月から適用拡大対象となった短時間労働者に対する調査では、「厚生年金・健康保険が適用されるよう、かつ手取り収入が増える(維持できる)よう、所定労働時間を延長した(してもらった)」と回答した労働者が6.4%、「所定労働時間はそのまま、厚生年金・健康保険が適用された」が14.5%でした。
また、将来の適用拡大に対する意向として、「わからない・何とも言えない」と回答した労働者が56.1%と過半数を占める一方で、「厚生年金・健康保険がさらに拡大されるなら、正社員として働く(働きたい)」が6.0%、「適用されるよう所定労働時間を延長する」が7.4%と続きました。これらの結果から、労働者の間でも適用拡大に対する不確実性が大きいことが伺えます。
調査の概要として、企業郵送調査では全国の雇用者規模5人以上の企業2万社を対象に、郵送法で調査票を配布・回収しました。また、労働者Web調査では、インターネット調査会社の登録モニターから1万人の回答を性別・年齢層別に収集しました。
総じて、この調査は企業と労働者双方の対応状況や意向を詳細に明らかにしており、今後の社会保険適用拡大の方向性を検討する上で重要なデータとなります。特に企業側の法令遵守の姿勢と、労働者側の不確実性に対する懸念が浮き彫りになっており、これらの課題に対する具体的な施策が求められます。
このように、社会保険の適用拡大は法律改正に基づく重要な施策であり、企業と労働者の双方に影響を与え続けています。今後のさらなる適用拡大に向けた準備と対応が求められる中、調査結果を活かした効果的な政策が期待されます。