2024年11月29日
労務・人事ニュース
2024年11月の業況DI 個人消費低迷の中で年末商戦が期待される理由
2024年11月 業況DIは、個人消費の伸び悩み続き、横ばい圏内。先行きは、年末年始商戦への期待から上向き基調(LOBO調査)
2024年11月のLOBO調査によると、日本経済全体の業況DIはマイナス16.3で、前月比0.9ポイントの小幅改善が見られたものの、依然として厳しい横ばいの状況が続いています。この結果は、個人消費の低迷が続き、全体的な経済の活性化が十分に進んでいない現状を反映しています。しかし、年末年始の商戦や冬季の特需に対する期待がわずかながら経済全体の先行きに明るい兆しをもたらしていると考えられます。以下では、各産業の現状と課題、さらには今後の見通しについて詳しく解説します。
製造業では、自動車関連や鉄鋼業が堅調で、業況が改善したことが報告されています。自動車業界では生産および出荷が回復基調にあり、鉄鋼や非鉄金属などの需要が増加していることが下支えとなっています。しかし、一方ではエネルギーコストや輸送費の高騰、さらには円安による輸入コストの増大が経営の大きな負担となっていることも指摘されています。為替相場の不安定さは価格転嫁を妨げており、これが経営計画の策定や収益確保を困難にしている要因の一つです。特に、見積もりへの価格反映が難しいという声も多く聞かれ、こうした状況に対応するための創意工夫が求められています。
卸売業では、農畜産や水産物の育成不振が続くものの、天候の安定が見られたことで前月の大幅な悪化からは若干の回復が見られました。具体的には、青果物の流通が安定し、収穫量が増加する兆しが見られることが一因とされています。しかし、円安基調が続くことで輸入品のコストが高騰し、経営におけるリスクが依然として大きい状況にあります。特に、農畜産や水産物卸売業者は、気候条件の変化と国際的な市場価格の影響を強く受けており、こうした要因が事業計画に及ぼす影響は軽視できません。
小売業では、消費者の買い控えが依然として根強く、特に実質賃金の伸び悩みが大きな抑制要因となっています。消費者は日用品や食品の購入を必要最小限に抑え、生活防衛意識を高めていることが明らかです。さらに、冬物衣料の需要が気候変動の影響で低迷しており、季節商品に依存する小売業者にとっては厳しい状況が続いています。百貨店や専門小売店では、売上が伸び悩む一方で、高価格帯商品が堅調に推移するなど、消費行動が二極化している点も興味深い傾向です。
サービス業では、消費者の節約志向が続いており、飲食業や生活関連サービス業における需要が減少傾向にあります。また、電気料金や労務費の高騰が経営を圧迫し、業況は悪化しています。特に飲食業界では、人手不足が深刻であり、就労調整が必要となる場面も増えているとのことです。一方で、観光需要が堅調な地域では、一部のサービス業が回復基調にあることが報告されており、地域間での業況のばらつきが大きくなっています。
建設業では、公共工事が堅調に推移し、一定の下支えとなっていますが、民間工事では住宅関連を中心に需要が低迷しています。資材価格の高騰や人材不足が影響し、新規案件の受注が難航している企業も多く、建設業全体としては依然として厳しい状況が続いています。時間外労働の規制も影響しており、作業日数の増加によって効率的なプロジェクト運営が困難となる事例が増えています。これらの課題を解決するためには、業界全体での効率化や新たな人材確保の取り組みが不可欠です。
設備投資の動向に目を向けると、2024年度に設備投資を行う予定の企業は42.7%に上り、これは過去の調査と比較しても高水準を維持していることが分かります。このうち、投資の理由として最も多いのは老朽化した設備の更新であり、全体の60.9%を占めています。また、将来的な需要増への対応や人手不足への対策としての投資も一定の割合を占めており、企業の前向きな姿勢が見て取れます。ただし、設備投資を見送る企業も31.4%に達しており、収益の圧迫が背景にあることが指摘されています。
デジタル化については、61.4%の企業が基本的なデジタルツールを導入している一方で、約2割の企業がデジタル化に未着手の状態にあります。この未着手の理由として、ツール導入にかかるコストや技術的な困難さが挙げられており、特に中小企業においてはデジタル化を進める上での大きな障壁となっています。さらに、サイバーセキュリティ対策も基本的な範囲に留まる企業が多く、今後の課題として認識されています。
今後の見通しとしては、冬季の賞与増加や年末年始の特需が売上拡大の要因となることが期待されています。また、政府の経済対策によるエネルギー価格の補助や支援が、企業のコスト負担を軽減し、一定の効果をもたらす可能性があります。しかし、長期的には、人手不足の深刻化や原材料価格の高騰といった課題が依然として残り、企業はこれらの問題に対して迅速かつ効果的に対応する必要があります。
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