2025年4月24日
労務・人事ニュース
キャリア相談経験者の54.8%が職業満足に「満足」、未経験者との差は約20ポイント
- 看護師/2025年5月9日更新
最終更新: 2025年5月9日 10:15
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最終更新: 2025年5月9日 10:15
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最終更新: 2025年5月10日 02:01
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最終更新: 2025年5月9日 10:15
キャリアコンサルティングの有用度及びニーズに関する調査(JILPT)
2025年3月31日に公表された「キャリアコンサルティングの有用度及びニーズに関する調査」は、平成28年に創設されたキャリアコンサルタント登録制度の進展と現状を評価しつつ、キャリアコンサルティングの今後の役割や課題を浮き彫りにする内容となっている。近年、キャリア形成支援に対する社会的な期待が高まりを見せており、企業や労働者にとっても関心の高いテーマである。本調査では、20代から50代までの就労者9,900名、非就労者1,920名の計11,820名を対象にインターネットを通じた大規模なアンケート調査が実施され、多様な属性における実態と意識が詳細に分析された。
キャリアコンサルティングの経験者に対しては、その効果や有用性に関する質問が行われた結果、全体の約6割が「キャリアや職業生活に変化があった」と回答した。具体的な変化としては、「将来のことがはっきりした」「就職できた」「仕事を変えた」といった成果が多く挙げられ、相談によって新たな行動に踏み出した労働者が一定数存在していることが確認された。また、コンサルティングを「とても役立った」「やや役立った」と評価した人の割合と、今後も「受けたい」「どちらかと言えば受けたい」と回答した人の合計はいずれも約5割前後に達しており、実際に受けたことがある者にとっては、相談の有効性が一定程度感じられている実態が明らかとなった。
一方で、キャリアコンサルティングを受けたことのない未経験者における相談意向は依然として低い水準にとどまっている。具体的には、「相談したい」と明確に回答したのはわずか2.6%、「どちらかと言えば相談したい」と回答した12.4%を加えても、全体の15%にとどまるという結果である。これは、キャリアコンサルティングに対する認知度が未だに十分とは言えず、潜在的なニーズの掘り起こしが進んでいないことを示している。
調査ではまた、キャリアコンサルティングの認知度と相談意向との間に明確な関連性が認められた。認知度が高い層ほど「相談したい」という意向が高く、逆に「まったく知らない」と回答した層では相談意向が著しく低下する傾向が確認されており、今後の課題として、制度そのものの認知拡大と、キャリア相談を受けることのメリットを効果的に伝えていく広報戦略が求められる。
加えて、キャリアに関する専門家への相談経験が職業生活への満足感に与える影響も、今回の調査で明らかになった。傾向スコアマッチングを用いた比較分析の結果、キャリアコンサルタント等への相談経験がある者では、「現在の職業生活にかなり満足している」または「やや満足している」と答えた割合が54.8%と過半数を超えていたのに対し、相談経験がない者では33.9%にとどまっており、満足感に明確な差が見られた。さらに、2016年に行われた同様の調査でも、相談経験者の方が高い満足度を示しており、この傾向は一過性のものではなく、継続的に観察されている現象であることも確認された。
このように、キャリアコンサルティングが個人の職業生活にポジティブな影響をもたらしている実態が数値として裏付けられた一方で、制度の有用性が広く知られていないこと、そして受ける機会が十分に提供されていないことが、本調査によって浮き彫りとなった。政策的なインプリケーションとしては、キャリアコンサルティングに対する認知度の向上が急務であり、特に未経験者層に対しては積極的な情報提供や広報活動が必要とされている。
また、企業の人事担当者や採用責任者にとっても、本調査結果は大いに参考となるものである。キャリア支援の質が従業員の職業満足度や定着率に寄与することが実証されている以上、キャリアコンサルティングの社内導入や外部専門家との連携を検討することは、人的資本経営の観点からも極めて合理的な施策といえる。特に近年では、若手社員の早期離職やキャリアの多様化に対応する柔軟な支援が求められており、その対応策としてキャリアコンサルティングが果たす役割は今後さらに重要性を増すことが予想される。
今後、キャリアコンサルタントによる支援がさらに幅広い層へと浸透するためには、相談へのハードルを下げる工夫や、相談内容の質的向上、そして具体的な成果の「見える化」が求められる。制度の信頼性は着実に向上しているが、その恩恵を実感できる利用者が限定的である現状を打破するためには、実践的な支援体制の拡充と制度の周知が不可欠である。