2025年5月6日
労務・人事ニュース
中小企業の賃上げ率5.1%到達!今こそ人材定着と採用戦略の再構築を
- 「時短勤務可」/准看護師・正看護師/介護施設
最終更新: 2025年5月6日 22:36
- 「夜勤なし」/准看護師/介護施設/オンコールなし
最終更新: 2025年5月6日 22:36
- 「残業ゼロ」/正看護師/介護施設/住宅補助あり
最終更新: 2025年5月6日 22:36
- 「夜勤なし」/准看護師/介護施設/残業ありません
最終更新: 2025年5月6日 22:36
2025年版中小企業白書・小規模企業白書が閣議決定されました(経産省)
2025年4月25日に閣議決定された中小企業白書・小規模企業白書は、急速に変化する経済環境の中で中小企業や小規模事業者が直面する課題と、それを乗り越えるための道筋を提示するものです。今年の白書では、円安、物価高、金利上昇、人手不足といった経済環境の変動が与える影響を丁寧に分析し、持続的な発展のためには何が必要かを具体的なデータと事例を交えて明らかにしています。
今回の白書の特徴として最も注目されるのは「経営力」に焦点を当てている点です。これは、経営者自身が現状を正しく認識し、将来を見据えた戦略を構築し、組織としての実行力を高めることが、変化の激しい時代において企業を持続的に成長させる鍵になるという考えに基づいています。特に経営計画の策定や従業員との経営情報の共有、人材戦略の明確化といった実務レベルでの取り組みが評価されており、その成果が業績や従業員満足度の向上につながっている実例が紹介されています。
経済環境に目を向けると、2024年の春季労使交渉において、約30年ぶりの賃上げ率を記録するなど、労働環境にも大きな変化が見られました。中小企業における賃上げ率は前年比で5.1%上昇し、従業員の定着と採用力強化が図られている一方で、労働分配率がすでに8割近くに達していることから、さらなる賃上げの余地は限られているという現実があります。特に大企業との賃金格差が拡大している中で、中小企業が人材流出を防ぐためには、給与だけでなく働きがいや職場環境の改善といった非金銭的要素への取り組みも重要になってきています。
さらに、白書では中小企業が抱える人手不足問題にも深く切り込んでいます。2024年の調査によると、中小企業の約85.7%が「現業職」において人手不足を実感しており、これは管理職や事務職と比べても突出して高い数値です。これにより、業務の効率化や生産性の向上が急務となっており、その手段としてデジタル化や設備投資が重要視されています。実際に、多くの企業がDXに取り組み始めており、例えば設備投資額に占めるソフトウェア投資の割合は大企業と比べて低いながらも増加傾向にあります。こうした背景から、今後はDX人材の確保と育成が経営戦略の中心に据えられることが予想されます。
また、経営規模の拡大を目指す企業に対しては、売上高の段階に応じた成長課題への対応が求められます。売上高100億円を超える企業では、経営者一人の判断だけでは追いつかなくなるため、補完型人材や幹部層の育成が不可欠です。中でもM&Aやイノベーション、海外展開といった手法を通じたスケールアップ戦略が有効であり、これまでになく戦略的な視野が求められる段階に差し掛かっています。
一方、小規模事業者にとっては、地域密着型の経営が引き続き強みとされており、地域のニーズに応じた事業展開や、社会課題の解決をビジネスとして取り込む姿勢が評価されています。差別化を図る「尖った商品」や独自のサービスは、業績だけでなく人材確保にも好影響を与えることが明らかになっており、限られた経営資源の中で高い付加価値を生み出す工夫が求められています。
さらに、外部環境の変化も中小企業に大きな影響を及ぼしています。例えば、借入金利が上昇する中で、中小企業は大企業に比べて借入依存度が高いため、金利上昇のダメージが直接的に響きます。また、輸出よりも輸入の比率が高い構造から、円安による原材料コストの上昇も利益を圧迫しています。このような環境下では、価格転嫁の力、すなわち自社の原価上昇を適切に販売価格へ反映させる能力が極めて重要となってきます。2023年には価格転嫁率がようやく5割近くまで上昇しましたが、未だ道半ばであり、引き続き強化が必要とされています。
このように、2025年版中小企業白書・小規模企業白書は、経営環境の急激な変化と複雑化する経済課題を踏まえた上で、企業が成長を続けるための羅針盤としての役割を果たしています。単なる分析にとどまらず、課題解決のための具体的な提案や事例紹介を通じて、実務に直結する情報が提供されている点も、大きな魅力となっています。企業の採用担当者や経営幹部にとっては、経営の現状を客観的に把握し、戦略の再構築を行う上での貴重な資料となるでしょう。
⇒ 詳しくは経済産業省のWEBサイトへ