2024年8月18日
労務・人事ニュース
日本語指導が必要な児童生徒が69,123人に達し、18.6%増加:企業が直面する多文化共生とグローバル人材育成の課題
「日本語指導が必要な児童生徒の受入状況等に関する調査(令和5年度)」の結果について(文科省)
令和6年8月8日、文部科学省から発表された最新の調査結果によれば、日本語指導が必要な児童生徒の数が69,123人に達したことが明らかになりました。この数字は、前回の調査結果から18.6%増加し、特に外国籍の児童生徒数が57,718人と、21.2%の大幅な増加を示しています。これに対し、日本国籍の児童生徒数は11,405人で、こちらも6.7%の増加となっています。こうした増加は、近年の国際化の進展や、移民労働者の増加に伴うものと考えられます。
この調査は、日本全国の都道府県教育委員会および市町村教育委員会(特別区を含む)を対象に行われ、公立小・中・高等学校における日本語指導が必要な児童生徒の受入状況を詳細に分析したものです。調査の項目には、学校種別や言語別の在籍状況、日本語指導の具体的な内容や「特別の教育課程」の実施状況、中学生や高校生の進路状況などが含まれており、日本語指導の充実度や進学・就職状況についても詳述されています。
特に注目すべき点は、日本語指導が必要な外国籍の児童生徒の言語別在籍状況です。最も多い言語はポルトガル語で全体の20.8%を占め、次いで中国語が20.6%と僅差で続いています。一方、日本国籍の児童生徒では、日本語が30.5%で最も多く、フィリピノ語が19.4%を占めています。これらのデータは、日本語指導の必要性が増していることを示しており、特に特定の言語圏からの児童生徒が多くを占めていることがわかります。
また、指導の状況についても興味深いデータが示されています。特別な配慮に基づく指導を受けている外国籍の児童生徒は、全体の90.4%にあたる52,176人にのぼり、前回調査からも増加しています。日本国籍の児童生徒においても、86.6%が特別な配慮に基づく指導を受けており、この割合は前回調査よりも増加しています。これらの数字からは、教育現場での支援体制が強化されつつあることが見て取れますが、それでもなお、さらなるサポートが求められる現状がうかがえます。
進路状況に目を向けると、日本語指導が必要な中学生の高等学校への進学率は90.3%であり、全中学生の進学率(99.0%)には及ばないものの、前回調査からは改善が見られます。しかし、高校生の進学率については、大学等への進学率が46.6%にとどまり、全高校生の進学率(75.0%)とのギャップが依然として存在しています。また、高校生の中退率が8.5%と、全高校生の中退率(1.1%)に比べて非常に高いことも問題視されるべき点です。これらのデータは、日本語指導が必要な生徒が教育の過程で直面する課題の大きさを示しており、進学や就職における支援がさらに必要であることを示唆しています。
今後、文部科学省は、引き続き日本語指導が必要な児童生徒の教育充実に向けた取り組みを進めていく方針です。具体的には、定期的な調査を行い実態の把握に努めるとともに、「帰国・外国人児童生徒に対するきめ細かな支援事業」などの補助事業を活用し、地方自治体や教育委員会との連携を強化していくとしています。また、各地方公共団体における取り組み事例を広く周知し、全国的な支援体制の整備を目指しています。
教育現場における国際化の進展に伴い、日本語指導が必要な児童生徒の数は今後も増加が予想されます。この現状に対処するためには、教育機関だけでなく、地域社会全体での支援が求められます。特に、進学や就職において不利な状況にある生徒たちへの包括的な支援が必要であり、これが彼らの将来の可能性を広げる鍵となるでしょう。今後の調査と対策がどのように展開されていくのか、引き続き注目が必要です。
⇒ 詳しくは文部科学省のWEBサイトへ