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2025年4月14日

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自衛隊整備士の再就職支援制度が始動、最大280名の航空専門人材が民間へ転換可能に

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自衛隊整備士の円滑な民間資格取得が可能になります! ~「自衛官の生涯設計の確立」と「民間分野の人材不足」の双方に寄与~(国交省)

令和7年3月28日、国土交通省航空局と防衛省は、自衛隊で航空機整備に従事してきた隊員が、退職後に民間航空業界で円滑に活躍できる仕組みとして、新たな民間資格取得支援スキームを共同で開始することを発表しました。この新たな取組は、深刻な整備士不足に悩む民間航空業界と、退職後のキャリア構築を求める自衛官双方の課題を解決することを目的としており、令和7年中の開始を目標に準備が進められています。制度の根底には、自衛官の生涯設計をより柔軟で実効性あるものにするという国家的な方針と、民間航空分野における構造的な人材難の打開という産業的なニーズがあり、まさに両者の利害が一致する形での施策といえます。

そもそも民間航空業界では近年、航空専門学校への入学者数が激減しており、平成31年度には560名いた入学者が令和6年度には280名と半数にまで減少しています。こうした状況下において、現場では深刻な整備士不足が表面化し、特に小型機を運航する地方航空会社やビジネスジェットを扱う事業者では、人材の確保と育成が喫緊の課題となっています。

一方、自衛隊には高度な技術を有する航空機整備士が数多く在籍しており、年間一定数が定年退職または自己都合で自衛隊を離れていますが、これまでその知識や経験が民間で十分に活用されるケースは多くありませんでした。背景には、自衛隊内での整備資格が国家資格としては認められておらず、再就職後も整備作業に直接携われない、あるいは社内資格の取得に留まり責任範囲が限定されるといった待遇面での課題が存在していたことが挙げられます。

このたびの制度は、こうした課題を踏まえ、防衛省と国土交通省が連携して構築した新たなキャリアパス支援策です。具体的には、自衛隊における退職予定者に対して、在職中から民間航空整備士資格の取得に向けた学科教育を提供するというものです。この教育は職業訓練の一環として、民間の航空専門学校などに委託されて実施されます。学科教育を修了した後、受講者は学科試験に臨み、これに合格することで国家資格取得の第一関門をクリアします。

次に、国土交通省は自衛隊での整備経験を考慮し、既存の指定養成施設における実地試験について、短期間で受験可能なコースを新たに承認する方針です。このコースでは、退職自衛官が持つ技術・知識・現場経験を評価し、それに応じた実技内容で構成されるため、従来の民間訓練生が必要とする長期の養成課程を経ずに、実地試験への移行が可能となります。これにより、資格取得に要する時間が大幅に短縮され、早期に現場での実務が可能になります。

この制度がもたらすメリットは大きく、まず自衛官にとっては、退職後の進路が広がり、国家資格の取得によって待遇改善や職域の拡大、そして長期的なキャリア設計が可能になります。従来であれば、航空業界においても整備責任者などの中核ポジションに就くためには民間での長期的なキャリアが必要とされていましたが、今回のスキームではそれらに早期にアクセスできる道が開かれます。また、民間航空会社にとっても、即戦力となる人材を短期間で確保できる点が魅力です。とりわけ、中小規模の航空会社や地域密着型の事業者にとっては、教育投資や人材育成の負担を軽減しつつ、高水準の整備品質を確保できる新たな人材供給源として大きな期待が寄せられています。

現在のスキーム構成では、まず防衛省が退職候補者を選定し、学科教育を受講させたうえで学科試験の合格を目指します。その後、航空会社への採用が行われ、必要に応じて実技訓練を経て国家資格の最終取得に至る流れとなっています。このプロセスでは、資格取得支援とともに、企業による採用活動も同時並行的に進めることができるため、求職者・企業双方のマッチング精度が高まり、再就職までのブランクも最小限に抑えられます。

さらに、今後は記録証明のあり方についても検討されており、個人の職歴や技能習得歴をより客観的に評価できる枠組みが構築される見込みです。これにより、民間企業側でも採用判断の材料として信頼性の高い情報を得ることが可能となり、人材採用の透明性と合理性が一層高まることが期待されます。

こうした制度の整備は、単なる再就職支援にとどまらず、わが国の航空インフラを支える整備人材の持続的な供給体制の構築に直結します。国際的にも航空整備士の需要は高まっており、特にアジア地域では旅客数の増加に伴い機材の増備が続いています。このようなグローバルな視点から見ても、日本国内での整備士育成体制の強化は急務であり、本制度はその流れに沿ったものといえるでしょう。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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