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2025年4月17日

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ダンピング対策「見える化」で地域間格差が顕在化、他自治体連携経験者の採用が鍵に

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地方公共団体発注工事に関するダンピング対策の「見える化」 ~地方公共団体におけるダンピング対策の取組を推進~(国交省)

2025年3月31日、国土交通省不動産・建設経済局建設業課は、地方公共団体が発注する公共工事におけるダンピング受注の防止を強化するため、全国の市区町村におけるダンピング対策の取組状況を可視化し、公表する取り組みを発表した。これは、公共工事における健全な競争環境の確保、そして安全性や品質の担保を図る観点から非常に重要な政策対応であり、今後の建設業界の発注・受注環境に大きな影響を与える可能性がある。

公共工事の入札制度においては、価格競争が過度に働いた場合、工事の品質や安全性を損なうリスクがあるとされてきた。特に、極端な安値での受注、いわゆるダンピング受注が横行すると、適正な施工管理や労働環境の維持が困難となり、ひいては公共インフラの信頼性そのものが揺らぐ事態にもつながりかねない。このような背景を受け、国では入札契約適正化法に基づき、地方自治体に対して適正な入札制度の運用を求めており、具体的には最低制限価格制度や低入札価格調査制度の導入と適切な活用が要請されている。

今回の発表では、これまで各地方公共団体がどのようにダンピング対策に取り組んできたのかを体系的に整理し、具体的な導入状況や制度運用の実績を「見える化」して公表するという点に大きな意義がある。たとえば、令和6年7月1日時点における最低制限価格制度の導入の有無、また令和5年度に実際に制度を適用した実施率、さらには最低制限価格や低入札価格調査基準の算定式の水準といった情報が、都道府県ごと、さらには市区町村ごとに一覧化され、比較可能な形で提示される。これにより、自治体間での取組の差異が明確化され、後発地域にとっては他団体の先進事例を参考に、自らの制度運用の見直しや改善が図られることが期待されている。

特筆すべきは、すでに多くの都道府県では令和4年中央公契連モデル以上の水準で調査基準価格を設定しており、全国的にダンピング対策の強化が進んでいる点である。とはいえ、一部の市区町村においては、未導入であったり、制度があっても運用実績が低調であったりする状況も依然として見受けられる。国土交通省では、こうした取組が遅れている市区町村に対しては、今後個別の働きかけを強化し、制度の導入や運用の改善を促していく方針を明らかにしている。

このような政策の進展は、建設業界の人材戦略にも少なからぬ影響を及ぼすと考えられる。たとえば、適正な価格設定のもとで施工が求められるようになることで、施工計画の精緻化やコスト管理能力がより一層重要となる。これに対応できる積算担当者や現場監督、また発注者との調整を担う技術営業職の役割が高まることが想定される。さらに、公共工事の入札制度や関連法令に精通した法務・契約管理系人材、あるいは制度変更に伴う企業内部の運用フローの再構築を主導できる業務改善担当者など、企業の競争力を高めるうえで必要不可欠な職種への関心が高まることが予想される。

また、発注者側の支援業務やコンプライアンスの観点からも、建設コンサルタントや自治体との折衝経験を有する専門人材へのニーズが拡大する。ダンピング対策が制度化・標準化されることにより、より複雑かつ精度の高い調査や設計が求められる場面も増えるため、実務レベルでのスキルだけでなく、行政制度や政策動向に敏感に対応できる知見が求められる。

このような背景から、建設業界における人材戦略は単なる技術者確保の枠を超え、制度対応力や公共性の高い業務におけるプロジェクト推進能力を兼ね備えた人材の育成・採用へと重点が移りつつある。企業が公共工事において優位性を保つためには、こうした変化を的確に捉え、人材育成や採用計画に反映させていくことが不可欠である。

⇒ 詳しくは国土交通省のWEBサイトへ

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