2025年6月19日
労務・人事ニュース
データ資本の時代へ!日本の企業活動に11.5兆円の影響を与える新経済指標とは
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精神科特化の訪問看護/即日勤務可/シフト
最終更新: 2025年6月29日 07:05
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鍼灸師/天神南駅/社員募集/6月29日更新
最終更新: 2025年6月29日 01:06
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医療機関での治験コーディネーターのお仕事/車通勤可/駅近/即日勤務可
最終更新: 2025年6月29日 07:05
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「残業ほぼなし」准看護師/夜勤専従/介護老人保健施設
最終更新: 2025年6月28日 09:05
Economic & Social Research No.48 2025年 春号 「経済社会の変化と計測」(内閣府)
2025年3月、国連統計委員会において、次期国際基準「2025SNA」が正式に採択されました。これは、GDPなどのマクロ経済指標の算出に用いられる「国民経済計算(SNA)」の基準を約15年ぶりに見直すもので、世界各国の経済統計の質と比較可能性を一段と高めることを目的としています。日本を含む国際社会がデジタル化、グローバル化、そして持続可能性という現代の重要課題に対応するために取り組んでいるこの改定は、企業の経営戦略や政策立案にも直接関わる重大な変化といえます。
まず注目すべきは、「データ資産」の資本化という新しい概念の導入です。従来の2008SNAでは、企業が生成・蓄積する「データ」は、データベースの構築に限って資本として扱われていましたが、今回の改定では、その前段階にあるデータそのものも経済的価値を持つ資産とみなす方向に転換されました。例えば、企業が収集・保存する顧客の購買履歴や業務ログなど、分析により付加価値を生む可能性がある情報は、新たに固定資産に分類され、これを生産に用いることで将来的な利益が見込まれるという考え方が採用されました。
この変更は企業会計や経営判断においても大きな影響を与えます。なぜなら、これまでは費用として処理していたデータ生成や管理のコストが、今後は投資として記録される可能性があるからです。日本政府もこの国際動向を踏まえ、早くから調査研究を進めており、2020年時点において日本国内のデータの産出額は実質で11.5兆円、ストック額は25.5兆円に達するとの試算が示されています。これは1994年の3.0兆円、6.9兆円と比較すると実に3倍以上の成長を示しており、デジタル経済の急成長がいかに経済全体の構造を変えつつあるかが読み取れます。
こうした推計は、コスト積上げ方式によって行われており、データ生成に関わる職業の人件費や中間投入費、固定資本減耗、営業余剰を総合的に算出する方法が採られています。加えて、企業でのデジタル化の進展も推計に反映されており、2022年時点での「デジタル比率」(データを紙以外の媒体に保存している比率)は93.4%に達し、20年前の75.3%、30年前の51.3%からの急上昇が際立っています。このように、今や企業の情報はほとんどがデジタル形式で管理されている状況です。
2025SNAではこの他にも、政府などの非市場部門における資本コストの推計方法において、従来の固定資本減耗だけでなく、金利や資金調達費用といった機会コストの考慮も導入されることになりました。これにより、同じ資産が民間か公的機関に使用されるかで異なる扱いを受けることを防ぎ、より実態に近い経済指標が構築されることが期待されます。
さらに、家計勘定の見直しも行われ、所得分布の導入が推進されます。これにより、GDP全体の数字だけでなく、どの層にどれだけの所得が分配されているかを明確にすることが可能になります。すでにフランスではこの試みが進んでおり、所得階層別の分析が精緻に行われています。今後、企業がマーケットセグメンテーションを行う上でも、こうした分布統計が活用される可能性が高まるでしょう。
また、「ビヨンドGDP」と呼ばれる、新たな豊かさの指標も整備されつつあります。これには、健康、安全、教育、社会関係といった非貨幣的価値が含まれており、OECDなどの枠組みにより実証的な指標体系の構築が進められています。特にアウトカム指標や分布要素、持続可能性との関連性が重視されており、企業も自社の社会的価値を測る新たな手法として注目すべき領域です。
こうした国際的な統計基準の変化は、各国政府や国際機関だけの問題ではありません。企業が行う投資判断、財務報告、IR(投資家向け広報)、さらには人材育成やESG経営といった側面でも、新しい評価軸として反映される可能性があるため、特に経営層やCFO、採用担当者にとっては、いち早くこの流れを把握しておくことが必要不可欠です。
国連統計委員会は、2029年から2030年を目処にすべての国が2025SNAを導入することを目標に掲げており、その実施戦略には「コミュニケーション」「トレーニング」「技術支援」「マニュアルの整備」などが盛り込まれています。各国政府には、これを戦略的計画の中に取り込み、政府機関・企業・教育機関が協調して対応を進めることが求められています。
内閣府もまた、2025SNAの実装に向けた実証研究を通じて国際的な議論を主導しており、企業や研究者への情報提供、ガイドラインの整備を進めています。企業としても、経営データの資産化や人的資本への投資、さらには自社がどのように「見える化」されるかという視点から、この変化を積極的に捉える必要があるでしょう。
⇒ 詳しくは内閣府のWEBサイトへ